レガシーを維持すべきか移行すべきか、それが問題だ

2004/8/21

ガートナージャパン リサーチバイスプレジデント 栗原潔氏

 巨視的な観点からみれば現在のインターネット・コンピューティング環境こそ、メインフレームの時代に予測された分散コンピューティングの姿といえるかもしれない。しかし、個々のサービスを実現するシステムは必ずしも分散型の環境を採用しているわけではない。逆に現在では、過剰な分散化の弊害を指摘する声も大きい。「iシンポジウム2004」(NEC C&Cシステムユーザー会主催)で講演したガートナージャパン リサーチバイスプレジデント 栗原潔氏はこのように、コンピューティング環境の全体的な状況を概観したうえで、いくつかのトレンドを指摘した。その1つが「既存資産の有効活用需要」である。

 ガートナージャパン ITデマンド室が2003年後半に行った調査によると、日本国内の企業における2004年度のITシステムに関する新規投資分野で最も多かったのは「既存システムのアップグレード」(複数回答で50.1%)だった。

 栗原氏は「ユーザーにとっては既存資産の有効活用が重要なポイントとなっており、メディアで喧伝(けんでん)されるように、メインフレームを中心としたレガシーシステムのオープン環境への移行が、ITシステムにおけるTCO削減の最適解であるとは限らない」と話す。もちろん、サーバ統合(あるいはストレージ統合)の要求は高く、そのような要望を最新のIT技術を核としたオープン環境への移行という文句で推進するITベンダやシステム・インテグレータは非常に多い。

 だが、例えば、「メインフレームをLinux環境に置き換える」ことが大前提となっているようなシステムの再構築案件は「本末転倒」(栗原氏)である。既存資産の有効活用というニーズを尊重するなら、必ずしもメインフレーム撤廃を大前提と考える必要もない。「UNIX、Windows、Linuxおよび一部のレガシー・プラットフォームは相互補完的な存在であり、今後も市場において共存していく」と栗原氏はいう。そして、レガシー・プラットフォームを維持すべきか、移行すべきかは、状況に応じてユーザーが選択すべき命題であり、ベンダは両方の選択肢に対する解決策を提供すべきである、と提言した。

(編集局 谷古宇浩司)

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NEC C&Cシステムユーザー会
ガートナージャパン

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