Webサービスというサナギは脱皮をし、SOAという羽を得て空を飛ぶ

2004/9/1

WS-I 理事会メンバー、マーケティング/コミュニケーション委員会議長 アンディ・アスター氏

 Web Services Conference 2004(主催IDG)が8月31日と9月1日の2日間にわたって行われている。一時期と比べXML/Web Services(サービス)という言葉はキーワードとしての威力を失ってしまっているが、それは同技術の衰退を意味するものではなく、安定した技術として定着し始めたことの表れでもある。開幕記念講演を行ったアンディ・アスター(Andy Astor)氏が属するWeb Services Interoperability Organization(WS-I)では、Webサービス技術にかかわる製品の相互運用性を検証し続けているが、Webサービスが普及するための障害は技術以外の要素に依存していると主張する声もある。基調講演を行った富士通 ソフトウェア事業本部開発企画統括部 統括部長 弘末清悟氏は「Webサービスは将来の主要技術として着実にその地位を固めつつある」としながらも、「Webサービスを生かしたビジネスは全般的に期待したほどの広がりをみせていない」と指摘する。

 Webサービスの普及を阻害する一般的な課題として弘末氏が挙げるのは、「信用/与信の問題」や「(普及するためにの)一定のクリティカルマスの必要性」「技術者不足」「成功事例の欠如」といった点で、もちろん、技術的にはセキュリティ仕様の標準化やそもそもの技術仕様の標準化の不備なども普及阻害要因として挙げることはできるが、多くは技術以外の問題に依存している。

 例えば、Webサービス技術の、B2BおよびEDI領域への応用という観点からみると、利害関係企業間でシステム接続の合意が必要であるとか、既存EDIの並存運用が避けられないといった問題点がある。投資効果の不明瞭さや投資のタイミングの難しさも重要な課題だ。また、EAI(Enterprise Aplication Integration)領域への適用という観点で考えると、そもそも、EAI自体が非常に困難な作業であり、既存システム全体の詳細な把握を必要とする点でEA(Enterprise Architecture)にも通じる課題を内包しているなど、実際にはシステムの部分的な統合が中心となる現実とは乖離した領域であるともいえる。

 しかし、これらの非技術的な課題から実はService Oriented Architecture(SOA)の萌芽が生まれたと弘末氏はいう。SOAとは「あえていえば、サービスの再利用性を軸とするシステム(サービス)構築方式」だと弘末氏は定義する。そして、SOAこそWebサービス技術やEAI、オブジェクト指向以来の開発技術/フレームワークといったさまざまな技術の流れの合流点に位置すると主張する。

 その文脈に沿って、EAIからSOAをみると、従来、ルーティング/フォーマット変換/接続アダプタといった統合を行うための技術を活用しながら、分散したシステムの部品をハブを介して接続するという方式を、共通のバス上にシステムの構築単位(サービス)を乗せ、その下位層にさらに共通のバスを用意するといった段階的なアプローチが可能な仕組みを採用できるようになる。つまり、EAIが持つ複雑性を回避する1つの方策としてSOAが機能する。また、ソフトウェア開発技術からSOAをみた場合、再利用技術進化の延長上にWebサービスが存在することが明らかになる。「その結果、SOAはEAを支える技術体系の骨格となる可能性もある」と弘末氏はいう。

(編集局 谷古宇浩司)

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