IBMの新ストレージは「他社を周回遅れにする」

2004/10/14

 日本IBMはPOWER5プロセッサを搭載し、仮想化技術を強化したハイエンドストレージの新製品「IBM TotalStorage DS8000 ディスク・システム・ファミリー」とミッドレンジ・ストレージ「IBM TotalStorage DS6000 ディスク・システム・ファミリー」を12月3日に出荷開始すると10月13日に発表した。日本IBMの常務執行役員 システム製品事業担当 橋本孝之氏は「他社のストレージを周回遅れにする製品」と述べて、技術の優位性を強調するとともに「アグレッシブな価格だ」として、コストパフォーマンスのよさも訴えた。

日本IBMの常務執行役員 システム製品事業担当 橋本孝之氏

 IBMは新製品の発表に合わせて同社のストレージシリーズを「IBM TotalStorage DSファミリー」に統一した。オープン系システム用のFAStTシリーズは「DS4000シリーズ」に名称を変更した。IBMは9月8日にエントリ向けのiSCSI対応ストレージ「DS300」「DS400」を発表している。

 DS8000は「IBM TotalStorage エンタープライズ・ストレージ・サーバー モデル800」(ESS800)の後継。IBMのUNIXサーバが採用しているPOWER5プロセッサを搭載したことで、データのリード/ライトなどのパフォーマンスがESS800と比較して最大6倍向上した。最大容量は192TB。また、POWER5が持つプロセッサの論理区画機能(LPAR)をディスクコントローラに搭載した。LPARはプロセッサのリソースやキャッシュ、I/Oアダプタを仮想的に分割し、各アプリケーションに割り当てられる機能で、業務の負荷の変化に柔軟に対応できる。従来のストレージでは1つのアプリケーションの負荷が高まると別のアプリケーションにも悪影響を与えることがあったが、LPARを導入することでプロセッサのリソースを仮想的に分割でき、お互いが影響を受けないようにできるという。

 DS8000が対応したLPARは静的にリソースを割り当てる。計画的なワークロードの変化に対応する機能で、割り当てを変更するたびにシステムを停止する必要がある。IBMでは将来的には同社のUNIXサーバが搭載しているリソースの自動割り当ての機能「ダイナミックLPAR」をDSシリーズに搭載する計画。日本IBMのストレージ・システム事業部長 松崎耕介氏は日中のオンライン業務と夜間のバッチ業務でプロセッサのリソース配分を自動で変化させる利用法を説明した。

 ミッドレンジ向けのDS6000はラック3Uのコンパクトサイズが特徴。ESS800と同性能で、サイズを3分の1、容量当たりの消費電力も3分の1に抑えた。最大224個のディスクを装備でき、最大容量は67.2TB。最小構成(584GB)の価格は1612万2750円。

 技術の先進性とともにIBMが強調したのは他社製品と比べたコストパフォーマンスのよさだ。DS8000は1.1TBの容量構成(2way)で約1億700万円から。日立製作所が9月8日に発表したハイエンドストレージ「SANRISE Universal Storage Platform」(USP)はIBMによると360GBの構成で約1億1600万円で、IBMでは「ほぼ同一価格でUSPの約3倍の容量を提供できる」としている。部品をサーバ製品と共通化することでコストダウンを実現したという。「顧客のイメージ調査ではIBMのストレージは高いとの答えがまだあった」(松崎氏)といい、オープン価格をやめて価格を明示することで、イメージの転換を狙う。DS8000、DS6000ともハードの保障期間を従来の3年から4年に延ばして、顧客の割安感を喚起する。

 松崎氏は「戦略的な価格を設定した。ストレージは伸び率が高い。IBMとして積極的にシェアを取りにいく」と述べた。橋本氏も「サーバとストレージの市場規模はほぼ同じだが、成長率はストレージが上回るとみている。特にミッションクリティカルな市場の成長率は高い」としてコストパフォーマンスのよさを武器にシェアの向上を狙う戦略を説明した。

 IBMは他社製サーバを持つ顧客に対しても積極的にストレージを販売する。「ここ数年、他社製サーバを持つ顧客でIBMのストレージを採用する例が増えている」(松崎氏)という背景があり、サン・マイクロシステムズやヒューレット・パッカードのUNIXサーバ、デルなどのIAサーバを持つ顧客に対してもアプローチする考え。橋本氏は「もうからないビジネスはやらない。今後ストレージのビジネスは伸びる。他社のサーバとも接続していかなくてはいけない。十分に収益力はある」と述べた。

(編集局 垣内郁栄)

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日本IBMの発表資料

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