ILM実現に向けて怒涛の製品ラッシュ、EMC

2004/10/15

 EMCジャパンは情報ライフサイクル管理(ILM)戦略を強化する製品群を10月14日に発表した。ヘテロジニアス環境への対応やポリシーベースのデータ移動などILMを実現するうえで欠かせないとされる機能を強化した。EMCジャパンのエンタープライズ事業部 マーケティング部 部長 宮治彦氏は「ILMをかなり現実のものとして提供できる製品が充実してきた」とコメント。「EMCはILMに具体的に取り組んで具体的な製品を発表してきている」と述べ、他社に対する優位性を強調した。

EMCジャパン エンタープライズ事業部 マーケティング部 部長 宮治彦氏

 EMCはILMを実現するために3つのステップを提唱している。ステップ1ではハイエンドストレージからミッドレンジ、ローエンドまでの階層型のストレージを構築し、ストレージの管理を自動化する。ステップ2では電子メールやデータベースなど特定のアプリケーションのデータだけをポリシーに応じて自動でストレージ間を移動させる。ステップ3ではILMをすべてのアプリケーションに拡大し、全データが自動で最適化されるようにする。

 EMCが今回発表した製品もこの各ステップに沿っている。他社ストレージを含めてデータのレプリケーション(複製)を可能にする「EMC Open Replicator for Symmetrix」はステップ1に対応する製品。EMCのハイエンドストレージ「Symmetrix DMX」内で稼働する。Symmetrix DMXの本番データ、バックアップデータをリアルタイム、もしくは非同期でEMCの別のストレージや他社ストレージに送って、バックアップできる。SANを通じて最大16のシステムにデータを複製可能。本番データをリアルタイムに送信でき、バックアップする場合も稼働を止める必要はない。アクセス頻度が落ちるなどビジネス上の価値が下がったデータをハイエンドのSymmetrix DMXから、ミッドレンジやローエンドのストレージに移行させる使い方を想定している。

 別のストレージからデータをSymmetrix DMXに戻してデータのリカバリに利用することもできる。Symmetrix DMXのアプリケーションを稼働させながらリカバリが可能で、短時間に作業が終了するという。EMCのほかにIBM、ヒューレット・パッカード、日立製作所の各ストレージ間でレプリケーションやリカバリが可能。2005年第1四半期(1-3月)の出荷を予定している。

 EMCは同じくステップ1に対応するディザスタ・リカバリ向けのソフト「EMC SRDF/Star」も発表した。SRDF/Starは3つのデータセンターで相互にデータのバックアップを取るためのソフト。1つのデータセンターで障害が発生し、データが損失した場合、残りの2つのデータセンターが相互にデータのバージョンを確認し、最新版に差分同期する。最新版になったデータを使ってリカバリを実行する。EMCの従来のソフトや他社のソフトでも3拠点間のデータバックアップは可能だったが、1つのデータセンターに障害が発生した場合に、残りの2つのデータセンター間で同期する機能がなかった。そのため最新版ではなく、古いデータでリカバリされるケースがあったという。出荷は2005年第1四半期を予定。

 EMCはまた、同社のNAS製品「Celerra」のデータをポリシーに基づいて別のストレージに自動で移動させる「Celerra FileMoverソリューション」を発表した。Celerra FileMoverソリューションはステップ3に対応する。「LEGATO DXUL Data Manager for Celerra V1.0」「Enigma SmartMove V2.3」「Arkivio Auto-Stor」を組み合わせてポリシーエンジンを構成する。データの情報を格納したメタデータを作成してデータを移動させる仕組みで、利用者はデータが移動されたことには気づかないようになっている。30日以上アクセスされないデータをNASからATAディスクのローエンドストレージに移動、さらにプロジェクト終了後にデータをアーカイブ用ストレージに移動するなどの使い方がある。利用者やアプリケーションはメタデータを経由してデータにアクセスするため、保存先のストレージが変更されてもシステムの構成を変更する必要がないという。

 EMCは同日、iSCSIをサポートするNASのミッドレンジ製品「Celerra NS500」を発表した。ディスクアレイの一体型製品と、別にディスクアレイを用意するゲートウェイ製品の2種を用意。EMCはこれまでハイエンドで高価格のNAS製品が中心だったが、「定価ベースで1TB当たり1100万円」というCelerra NS500を発表し、250万円から1000万円のミッドレンジNAS市場で国内トップシェアの日本ネットワーク・アプライアンスにぶつける。統合型製品の価格は1174万円から。

 宮氏によるとEMCは今後もILM対応の製品を拡充する方針。国内での提供は未定ながら「Microsoft Exchange Server 2003」「Lotus Notes」の電子メールデータをポリシーベースで移動させる「EMC EmailXtender」や、Oracleなどのデータベースデータを移動させる「EMC DatabaseXtender」を準備している。電子メールサーバやデータベースでアクセス頻度が下がっているデータを2次ストレージに移動することで、各システムのパフォーマンスが向上するなどのメリットがあるという。ほかに、メタデータを活用してすべてのアプリケーション・データをポリシーベースで管理する「Documentum コンテンツ・ストレージ・サービス」の提供も予定している。

(編集局 垣内郁栄)

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