Lotus Dayで注目集めた日本IBMへの「お願い」

2004/10/20

 日本IBMが主催した「Lotus Day 2004」で、第一生命情報システム(DLS)の基盤システム本部 オープン技術グループ 中山豊氏が、DLSが行ったNotes/Dominoのバージョンアップの事例を紹介した。Notes/Dominoのバージョンアップを考えるユーザー企業にとって有益な情報が多い講演だったが、参加者が最もうなづいていたのは、移行作業を通じて中山氏が感じた「IBMへのお願い」のパートだった。

第一生命情報システムの基盤システム本部 オープン技術グループ 中山豊氏

 DLSは2002年から2003年にかけて親会社の第一生命の全社員が使っているNotes/Domino R4.6.7を6.0.1にバージョンアップした。対象となったサーバは全国の支社、支部で約2000台。内勤の従業員が使うクライアントは約1万6000台、外勤の従業員が使う情報端末は約4万台で、そのすべてをバージョンアップした。第一生命では電子メールや掲示板、会議室などの情報系システムから、会計、保険、総務、経理、人事などバックエンドのシステムまで全面的にNotes/Dominoを利用。「Notes/Dominoはすべての業務の入り口になっている」(中山氏)という。

 中山氏によるとNotes/Domino上で稼働する電子メールなどの情報系システムは約80種類。経理などのワークフローは100種類、部門別に立ち上げた会議室や掲示板は約3800種類に及ぶ。

 第一生命がバージョンアップを決めた直接の理由は、R4.6.7のサポートが2003年1月に終了したことだ。社内システムを全面的にNotes/Dominoで動かしているため、サポートの終了は致命的。バージョンアップを検討した当時はすでにNotes/Domino R5がリリースされていたが、「R5を採用してもサポート終了までの期間が短いと推測された」(中山氏)ため、6.0.1へのバージョンアップを決めた。当然、他社のグループウェア製品も検討したが、Notes/Dominoの上位互換性や既存資産の有効活用などを考えて「他製品への移行はメリットがない」と判断した。

 第一生命がバージョンアップを決めたもう1つの理由はサーバ統合。R4.6.7は約2000台のサーバで運用していた。支社、支部を結ぶネットワークが貧弱だったためサーバを分散させていたが、「支社の事務室などにサーバが置かれていて部屋の暑さでダウンすることもあった」(中山氏)という。バージョンアップに合わせてサーバを統合し、DLSの東京・府中の本社で集中管理することを計画した。6.0.1はパフォーマンスが向上。R4.6.7ではサーバ1台当たり500〜1000ユーザーをサポートしたが、6.0.1では3000〜6000ユーザーをサポートできるようになった。現在、2000台のサーバを30台に統合するプロジェクトが進んでいるという。

 バージョンアップ作業は2002年4月にスタート。Notes/Dominoのシステムを「基盤」「基幹アプリ」「EUC(各部門で運用する掲示板など)アプリ」の3つに分けて、それぞれで移行テストを行い作業を進めた。最終的に完了したのは2003年10月。DLS、第一生命、日本IBMの約50人がかかわり、600人月の大規模プロジェクトとなった。

 中山氏が講演の中で力を込めて説明したのが、Notes/DominoやIBMに対する「お願い」だった。中山氏は「サポート切れのために数年に1度、膨大なコストをかけてNotes/Dominoをバージョンアップしているのでは、Notes/Dominoを使い続けるための費用が見合わない」と指摘。「最低でも5年程度にNotes/Dominoのサポート期間を長くしてもらえないか」と注文した。製品についても「6.0.1のプレリリース版から製品版までかなりの数のバグを報告したが、日本IBMからは『修正時期未定』や『次バージョンで修正予定』などの回答があり、第一生命で採用したバージョンに取り入れられなかった修正があった。そのためロジックや運用で回避したケースがあった」などと語った。

 中山氏はさらにIBMに期待することとして、「Notes/Dominoのサーバ、クライアントを問わずに必要な機能だけを簡単に選択できる仕組みを持たせて欲しい」と述べた。また、タスクのセルフチェック機能の搭載、6.0のような高機能なクライアントと、R4のような簡易な機能のクライアントを、利用するユーザーに合わせて使い分けることができる機能の追加などを求めた。

 日本IBMのソフトウェア事業 ロータス事業部 事業部長 澤田千尋氏は中山氏の指摘、要求に対して「できるだけ対応したい。品質についてはだいぶよくなってきた。7.0ではかなりよくなっている。日本の顧客のニーズを米国の開発陣に直接ぶつけていく。今後に期待してほしい」などと述べた。

(編集局 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本IBM

[関連記事]
IBMが断言、「Notes/Dominoはまだまだ発展する」 (@ITNews)
Eclipse基盤のIBM Workplace Client Technology、その可能性 (@ITNews)
ロータスの新戦略「DominoとJavaを統合します」 (@ITNews)
IBMがEclipse 3.0基盤のモジュラー型開発環境を発表 (@ITNews)
グループウェア市場でNotes/Dominoが狙われる理由 (@ITNews)
サイボウズとNotes/Domino、どっちを選ぶ? (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)