J2EEパフォーマンス監視は次のステージへ、Wily

2004/10/29

  いまやJ2EEは、大規模システムや企業のビジネスの根幹を支えるクリティカルな領域における代表的なプラットフォームに成熟した。しかしJ2EEシステムの運用管理にはいまだ多くの課題を残したままだ。その要因は新しいテクノロジであることのみならず、メインフレーム時代の集中型の管理が適用できない、多くの技術と製品によって構成されるJ2EEシステムの特性にあるといってよいだろう。

米Wily最高技術責任者ルイス・サーニ氏

 米Wilyは、これまでJ2EE運用管理の重要性を説くと同時に、複雑なJ2EEシステムのさまざまな視点からの可視化と分析のソリューションを提供してきた。米Wily最高技術責任者ルイス・サーニ(Lewis Cirne)氏は「Wilyが提供するツールの特徴は単なるパフォーマンス測定ではなく、開発者、運用担当者、情報システム部門のマネージャ、経営企画層などのステークフォルダに対して、それぞれのミッションに必要な情報を、それぞれに理解できかつ意味のある情報に加工して提供する点に特徴がある」と語る。さらに加えると、プロアクティブな運用管理を提供することで、企業自身が運用プロセスをビジネス上の重要なリスク管理の一環として認識でき、性能障害の監視と的確な分析、解決までの円滑なプロセスを実現できる点をアドバンテージとしていた。

 しかし「Wilyには不足な点があった。マーキュリー・インタラクティブのパフォーマンス監視ツール「Topaz」(トパーズ)のように、エンドユーザーの視点でレスポンス時間やシステムリソース状況の監視を行う機能が用意されていなかった」と システム営業統轄本部 ソリューション推進本部 Wilyブランドマネージャ 木村和之氏は語る。まもなく発表されるWily Introscope 5.3ではこれら不足していた機能が追加されることで「あらゆる角度/視点/ニーズ(360度)からのアプリケーション管理が可能となり、次世代アプリケーションの複雑な課題に対処可能になる」ルイス・サーニ氏という。

 ルイス・サーニ氏は、Wily Introsocpe 5.3の技術的なトピックを3つ取り上げた。Introscope Browser Response Time Adapterは、ブラウザ側に特別なツールをインストールすることなく、疑似トランザクションではない実際のトランザクションの実行性能をEnd to Endに計測することを実現する。また、SmartStor と呼ばれる軽量かつ高速な性能履歴の記録機能を使うと、10万個の性能データを15秒おきに全て一年間連続で記録しても70ギガバイトの容量しか必要とせず、しかも任意の過去時点での性能データも即座に取り出すことができる。ファイルは独自のバイナリファイルであり、ほかのアプリケーションからも利用できるようAPIが用意されるという。また、Introscope CommandLine Workstationは、Introscopeを使って実施したいさまざまな管理作業をスクリプト化することが可能になっている。

 米Wilyは、Wily Introscope 5.3の機能追加を受け運用管理に関するフレームワーク(考え方)を整備し、「Management 360」ソリューションとして提供していくという。Management 360ソリューションは、Wily Introscopeをツールとして用い、J2EEシステムが抱える性能監視/運用管理全般に関する課題を包括的に解決するトータルソリューションの総称だ。日本国内では、アイ・ティ・フロンティアが総代理店となり、Introscopeを使った管理プロセスと効果的な使用方法をトレーニングやコンサルティング・サービスを通じて、また、運用管理全般にかかわる最善のシナリオやベストプラクティスをプロフェッショナル・サービスとして提供される予定だ。

 サーニ氏は「360度のアプローチによって、ビジネス側の関係者とIT部門内の関係者の双方に、行動の基点となるような情報をリアルタイムに提供するだけではなく、アプリケーションのパフォーマンスについても、内部からと外部からという2つのビューが提供される。これによって従来の技術にだけ偏った管理ではなく、ステークフォルダがコラボレーティブに管理を実現することが可能になる」と語る。

 国内でも、ITとビジネスの成功にCIOの役割はますますクローズアップされているが、「CIOの役割が大きくなるほどアカウンタビリティ(説明責任)が問われる。その意味でも、ITのパフォーマンスを視覚化、数値化する運用管理の重要性は高まるだろう」と木村氏は語る。ITはめまぐるしく変化している。すでに多くのミドルウェアベンダでSOAのための環境が整いつつある。サーニ氏は「SOAはシステムをさらに複雑化する。これまで以上にパフォーマンスの管理が必要になるだろう。当然ながらWilyはSOAもすでに視野に入れている」と将来のSOAのサポートを断言した。

(ナレッジリンク 宮下知起)

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