ソフト開発を変革する大きな波とは? ガートナーがシンポ開催

2004/11/11

 テクノロジに関する調査会社、ガートナーのカンファレンス「Gartner Symposium ITxpo 2004」が11月10〜12日の日程で開催されている。10日にはガートナーの日米のアナリストが基調講演を行った。テーマは「俊敏性」だ。

米ガートナーのバイス プレジデント兼ガートナーフェロー ハワード・ドレスナー氏

 俊敏性=agilityはヒューレット・パッカードなど多くのベンダが注目するキーワード。市場やユーザーのニーズなど刻々と変わる環境の変化にIT戦略を俊敏に対応させられる基盤を構築することの重要性を訴える。米ガートナーのバイス プレジデント兼ガートナーフェロー ハワード・ドレスナー(Howard Dresner)氏はITシステムだけでなく、ビジネス全体の課題として俊敏性をとらえる。「俊敏性は企業の能力を測る基準であり、あらゆるレベルと種類の変化に対し効率的かつ効果的に対応する能力を示す」。

 同じく米ガートナーのバイス プレジデント兼ガートナーフェロー ボブ・ヘイワード(Bob Hayward)氏はビジネスの俊敏性を測る要素として、柔軟性と順応性、認識力、生産性の4つを挙げた。さらにこれらの要素を押さえながら、「IT部門が俊敏性を獲得するには具体的なライフサイクルに落とし込むことが重要」と指摘した。知覚、戦略、決定、伝達、行動のサイクルで「すべての組織がこのステップを回さなければ変革に対応できない」として「会社としてすべての人に、常に支持と理解を与えることが重要だ」と強調した。

左から米ガートナーのバイスプレジデント兼ガートナーフェロー ボブ・ヘイワード氏、ガートナー ジャパンのリサーチ バイス プレジデント 栗原潔氏、米ガートナー リサーチ バイス プレジデント クリスティン・スティーンストラップ氏、米ガートナー グループ バイス プレジデント ジェイミー・ポプキン氏

 ガートナー ジャパンのリサーチ バイス プレジデント 栗原潔氏は「ソフトウェア開発が俊敏性を獲得するためにはフレームワークが必要だ」と述べ、企業が意思決定を行う際のガイドラインとして利用できるITアーキテクチャの重要性を指摘した。そのITアーキテクチャのインターフェイス部分を担う要素として注目されるのがサービス指向アーキテクチャ(SOA)。栗原氏はSOAについて「ソフトウェアを部品として考える見方は新しくない。FORTRAN言語の共通ライブラリやCORBA、OSのAPIなど過去の概念とSOAとの違いは、サービスがほかと完全に独立していること。複数ベンダの複数サービスを混在できる」と説明した。さらに栗原氏は「過去の概念の各部品は同じ環境、同じツールでなくては再利用できなかった。しかし、SOAは提供元からの独立性がある」と述べた。

 では、部品化というソフトウェアの「理想的な姿」をSOAで実現できる、とガートナーがみているのはなぜなのか。栗原氏はWebサービスの標準化が進んでいることをその理由に挙げた。栗原氏は「Webサービスの標準化が進んだことで、サービスが自分自身を記述できるようになった。この自己記述性が標準化における重要なステップだ」と説明。さらに「もう1つの理由はサービスが実行時にだけ結合されること。このサービスの疎結合によってソフトウェア開発の俊敏性が向上する」と述べた。

 また、栗原氏は「ソフトウェアはユーザーの入力だけに対応して動作するのではなく、あくまでビジネス・イベントに対応して動作しないといけない」と指摘し、「ビジネスの事象=ビジネス・イベントを中心に考えるソフトウェア構築が必要になる」と訴えた。この考えは「イベント駆動型アーキテクチャ」(EDA)と呼ばれる概念。栗原氏は「ソフトウェアの設計、稼働ではビジネスプロセス中心の考えが重要になる」と述べ、「SOAとEDAは相性がいい。アプリケーションを変革する大きな波になる」と強調した。

(編集局 垣内郁栄)

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ガートナー ジャパン

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