ピープルソフトがIBMを選んだ理由は“オープンな環境”

2004/12/2

 日本ピープルソフトは12月1日、同社が9月21日に発表したIBMとの企業向けアプリケーションに関する提携について説明会を開催した。説明会では「米オラクル社との合併問題に関しては、一切コメントしない」という前置きをしたうえで、米ピープルソフト プロダクトマネジメント上席副社長イェスパー アンダーソン(Jesper Andersen)氏が今回のIBMとの提携の狙い、今後の方針を説明した。

米ピープルソフト プロダクトマネジメント上席副社長イェスパー アンダーソン氏

 アンダーソン氏は冒頭、全世界のITトレンドを「IT予算は横ばいか減少気味。そんな状況下でも運用保守費用はうなぎ昇りで上昇しており、新規開発費はそれに反比例して減少している」と分析。そのような状況下で、同氏は「最も重要なのは限られたリソースをいかに有効活用するかだ」と語り、今後を「2008年までにアプリケーションの75%以上が、複数社製品が混在するコンポジット環境になるだろう」と予測している。そのような予測を受けて、ピープルソフトは「他社製品と共存していくことを容認し、オープンな環境を作るために標準化対応へ力を入れていく」という方針を打ち出したのだという。

 アンダーソン氏は、他社の動向としてSAPを例に出し、「SAP社はミドルウェア分野に入るためにNetWeaverを開発した。しかし、NetWeaverはその環境下でしか動かないのが問題だ」と語っている。このような他社の動きを受けてピープルソフトは、ミドルウェアプラットフォームに関する戦略として「自社開発」「有力ベンダを買収」「パートナー締結」の3つの選択肢を用意。結果として、IBMとの提携を選択したという。

 IBMとの提携によってピープルソフトは、同社のビジネスアプリケーションと、IBMのWebSphereを代表としたミドルウェアを統合していく。これは、ミドルウェアプラットフォームを強化したかったピープルソフトと、アプリケーション分野を強化したいIBMの思惑が一致した結果だ。両社は今後、両社の製品をともに販売していくほか、開発や販売、コンサルティングなどの分野に対して、3〜5年の間に10億ドルの投資を予定している。また、1000名規模の開発者を用意し、共同開発も行う。

 アンダーソン氏はIBMを選択した理由の1つとして、「IBMが多分野にわたる標準仕様をサポートしている点」を挙げた。ピープルソフトが予測するコンポジット環境に対応するためには、いかに多くの標準仕様に対応しているか、標準化にかかわっているかが重要だという認識からだ。標準化に関して言えば、「SAP社の場合、IBMの半分程度しか標準に対応していない」(アンダーソン氏)のが現状だと説明。標準化対応を含めて、「IBMとの連携こそ、最強のコンビネーションだ」(同氏)だと語った。

 最後にアンダーソン氏は、「このように“オープンな環境”に固執した結果、IBMとの提携という流れになった」としており、あくまでもピープルソフトの目的は「数多くの標準化に対応すること」だと強調した。従って、IBMとの提携に関しても、マイクロソフトやオラクルなどを排他的にするのではなく、「レガシーを含め、1番ベストな製品を選択した結果、ピープルソフトとオラクルという選択肢も十分考えられるものだ」と解説した。

(編集局 大津心)

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