IBM出身CTOが語るEMCの注目テクノロジ

2005/2/15

 米EMC 上席副社長 兼 最高技術責任者(CTO)のジェフリー M. ニック(Jeffrey M. Nick)氏は2月14日に会見し、EMCが2月2日に買収を完了した米SMARTSの技術をEMC社内に取り込むことで、「ITインフラのモデリングに力を入れることができるようになる」と述べた。EMCは情報ライフサイクル管理(ILM)に続く、次期情報インフラの構想として「メタストラクチャ」を提唱している。ITインフラのモデリングはそのメタストラクチャの構築に欠かせない技術。元IBMフェローで2004年9月にEMCに加わったニック氏は「これから数カ月、1年でEMC製品の間で相乗効果を出していきたい。ストレージ、ILM、コンテンツ管理、モデリングなどを連携させて、ILMの価値提案を実現する」と語った。

米EMC 上席副社長 兼 最高技術責任者(CTO)のジェフリー M. ニック氏。ネクタイ柄がバックスバニー

 ニック氏が提唱したメタストラクチャとは、サーバ、ネットワークからなるリソース中心の仮想インフラと、ストレージからなるILMという現在の情報システムの構成から「欠落しているもの」。メタストラクチャを一言でいうなら、アプリケーション、リソース、データの3つの相関関係を理解したうえで、共通のポリシーによって管理し、最適なITサービスを実践していくこととなる。メタストラクチャを実現するうえで重要になるのが、データの属性を示す「メタデータ」と、情報管理の規範となる「モデリング」だ。

 注目されるのはITインフラのモデリング。情報システムに対してパフォーマンス管理を行う場合、関係するデータにひも付いたメタデータを収集、分析し、システムの設定や構成を最適化する。ディザスタリカバリを構築する場合も、リカバリするシステムと、そのシステムに連携するアプリケーションの構成を分析する。ニック氏は「そこまではいまの技術でできている」という。

 ITインフラのモデリングが提供するのは、これらの複数のITサービスを管理できる一貫した指標。さまざまなメタデータの中から、提供するITサービスで有用となるメタデータだけを抜き出して、複数のITサービスを管理する共通のビューを提供する。ニック氏は「メタストラクチャはILMなど既存のITインフラの上に載せる」と説明し、「ITリソースとアプリケーションの依存関係の分析がモデリングで可能になる。問題の特定、パフォーマンスの最適化、制約の分析をストレージ・ネットワークの中で可能にする」と述べた。ニック氏はストレージの業界団体「SNIA」で、ITインフラのモデリングの標準化について議論していることも説明した。

 EMCはここ数年で買収したVMware、レガート、ドキュメンタム、SMARTSなどソフトウェアベンダのテクノロジをさまざまエリアに配分し、メタストラクチャの実現を急ぐ考えだ。ニック氏は「EMCはILMの傘の下で、メタストラクチャの実現に取り組んでいく。技術は手の届く範囲か手中にある」と述べ、メタストラクチャの実現に自信を見せた。

(@IT 垣内郁栄)

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