オラクルにとってアプリケーションサーバとは何か

2005/2/26

 米オラクルのオラクル・アプリケーションサーバ担当 チーフ ストラテジー オフィサー ビジェイ・テラ(Vijay Tella)氏は2月25日、日本オラクルのイベント「Oracle 10g World」で講演し、同日出荷を開始した「Oracle Application Server 10g Release 2」について、「顧客に対して完全なライフサイクル管理のアーキテクチャを実現する。われわれにとってメジャーバージョンアップだ」と述べた。

米オラクルのオラクル・アプリケーションサーバ担当 チーフ ストラテジー オフィサー ビジェイ・テラ氏

 メジャーバージョンアップとテラ氏が話す根拠は、SOA(サービス指向アーキテクチャ)を中心に、同社のアプリケーションサーバを大きく変える機能が追加されたからだ。BEAシステムズ、IBMなどもアプリケーションサーバにEAIの機能を持たせて、SOAへの取り組みを行っている。テラ氏はオラクルが展開するSOAについて、「既存のIT資産を活用してより素早い開発が可能になる。自動化、変化に対する即応性も向上する」と説明し、「ビジネスプロセスを調和=オーケストレーションさせることができる」と述べた。オラクルがAS 10g R2で狙うのは、J2EEアプリケーションを稼働させるためのプラットフォームから、ビジネス全体を駆動するためのプラットフォームへの進化だ。

 SOAを実現するうえでの1つの技術要素になるのがエンタープライズ・サービスバス(ESB)だ。テラ氏はAS 10g R2のESBについて、「WSDLなど完全なスタンダード技術に則る」としたうえで、データの変換、メッセージルーティング、接続性を提供すると説明した。さまざまなアプリケーションを接続するために200のアダプタを実装する。

 テラ氏はESBに関して、ドイツの事例を紹介した。「ドイツのアウトバーンで使われている衛星ベースの課金システムで利用している。システムは200キロで走る自動車から料金を徴収しないといけない。実現にはSAPとレガシーシステムをつなぐ必要があった。われわれはこれをESBの1つのインスタンスで対応した。200のメッセージングとルーティングを1秒間で処理する」(テラ氏)。

 BPELのサポートもSOAを実現するうえで重要な点だ。オラクルは2004年6月に米ベンチャー企業「Collaxa」を買収。BPELのモデリング、管理製品を自社に取り込み、「Oracle BPEL Process Manager」としてAS 10g R2に組み込んだ。BPELプロセスのデザイン、デプロイ、実行、BPELプロセス・インスタンスの管理が可能。BPELネイティブに対応するため、相互接続性が高いのが特徴だという。BPELプロセス作成ツール「Oracle BPEL Process Designer」が「Oracle JDeveloper」にプラグインとして付属する。BPEL Process DesignerはEclipseでもプラグインとして利用できる。

 テラ氏はワールドワイドでのOracle Applicatin Serverの実績として、すでに2万2600社が採用していることを強調。特にOracle Applicatin Serverの成長率は15%で、6.4%のIBM、マイナス4.3%のBEAシステムズを上回っていると説明した。テラ氏によると、2003年のアプリケーションサーバ市場の売り上げベースのシェアは、1位がIBMで29.2%、2位のBEAシステムズが26.3%、3位がオラクルで19.5%となっている。だが、テラ氏は「Oracle Applicatin Serverの価格が、BEA WebLogicの価格の3分の1から5分の1であることを考えると、ユニットベースではオラクルのシェアはIBMに続き、実質的には2位」と述べた。

(@IT 垣内郁栄)

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日本オラクルの発表資料

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