インテルがプロセッサに組み込む仮想化技術、その可能性は

2005/4/8

 インテルは2005年下半期に出荷開始するPentium 4とItanium 2プロセッサに、1つのプロセッサを仮想的に分割して複数のOSを同時に稼働させられる「インテル バーチャライゼーション・テクノロジ」(VT)を搭載する。開催中の「インテル・デベロッパ・フォーラム Japan 2005」で4月7日に講演した米インテル デジタル・エンタープライズ事業本部 シニア・テクノロジ・ストラテジスト フェルナンド・マーティン氏は、「既存の仮想化ソフトウェアは複雑な処理をしている。VTはクリーンであり、本来あるべき姿の仮想化を実現する」と説明した。

米インテル デジタル・エンタープライズ事業本部 シニア・テクノロジ・ストラテジスト フェルナンド・マーティン氏

 VTは「Vanderpool Technology」のコード名で開発されている。ハイパー・スレッディング・テクノロジ(HT)やエクステンデッド・メモリ64テクノロジ(EM64T)と同様に、プロセッサに組み込まれる新技術。インテルではプロセッサに機能を追加する一連の技術を「*Ts」(スターティーズ)と呼んでいる。

 仮想化技術を使って1つのプロセッサ上で複数のOSを動かすソフトウェアは米VMwareなど数社が出しているが、マーティン氏によるとOSのコードの変更などが必要で、アプリケーションの処理も遅くなるケースが多いという。だが、VTに対応したプロセッサを利用すれば仮想化に最適化されているため、仮想化ソフトウェアを高いパフォーマンスで動かすことができる。VMwareなどの仮想化ソフトウェア(仮想マシンモニタ:VMM)と組み合わせて利用する。すでにVMwareのほかにマイクロソフト、Red Hat、XenコミュニティなどがVTのサポートを表明している。

 マーティン氏は「VTを使えばソフトベンダは簡単にVMMを作ることができる。シンプルで堅牢性が高く、よりよい環境の仮想化ができる」と話した。

 マーティン氏はVTを使った仮想化の用途として3つのソリューションを説明した。1つは分散したサーバを1台に統合するサーバ統合だ。サーバのコストや運用管理コストを削減できる。2つ目は「Isolation」。仮想化された環境では仮に1つのOSにトラブルが生じても、別のOSは影響を受けない。そのため複数のアプリケーションを仮想環境ごとに切り分けることができる。アプリケーションを複数のOSに分散させておけば、可用性が高まる。マーティン氏は、企業の情報システムで1台のサーバのプロセッサをシステム管理用のOSと、サービス提供用のOSに分割して利用する方法を説明した。1つのOSがワームに感染しても、別のOSに広がらないなどセキュリティを高めることもできる。

 3つ目の利用法はマイグレーションだ。VTで仮想環境を作れば、1台のサーバ上でWindows Server 2003とWindows 2000 Serverなどバージョンの異なるOSを稼働させることが可能。アプリケーションなど既存の環境を残しながら、新しいサーバに移行できる。VMMの機能によってはEM64Tを活用して1つのサーバ上で64ビットと32ビットのアプリケーションの両方を稼働させることも可能。

 VTは2006年上半期にはXeonプロセッサとCentrinoプラットフォームに搭載予定で、サーバ仮想化ソリューションを大きく変える可能性がある。

(@IT 垣内郁栄)

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