「帳票SOA」、ウイングアークは標準化を目指す

2005/11/16

 ウイングアーク テクノロジーズは11月15日、新コンセプト「帳票SOA」に基づく帳票開発ツール「SVFX-Designer」を12月8日に出荷すると発表した。帳票を1つのサービスとして捉え、業務アプリケーションなどを組み合わせたビジネスプロセスを柔軟に構築できるようにする。ウイングアークの代表取締役社長 内野弘幸氏は、「アプリケーション環境が変化しても帳票ツールやフォームを継承できるようにし、ユーザーの資産を保護する」と帳票SOAを説明した。

ウイングアーク テクノロジーズの代表取締役社長 内野弘幸氏

 帳票SOAはこれまで業務システムごとに構築していた複数の帳票ツールを共通化するのが基本の考え。システムやアプリケーションに変化があっても帳票ツールは影響を受けないようにして、開発・運用コストの無駄を減らすことが狙い。システムやアプリケーションから帳票機能を分離し、サービスとして取り出す。サービス化された帳票機能は、SOA環境で構築されるエンタープライズ・サービスバス(ESB)にWebサービス技術で接続し、ビジネスプロセスの構築に利用する。

 帳票機能のサービス化を実現するのがウイングアークが構想する「ハイブリッド帳票インターフェイス」。ハイブリッド帳票インターフェイスは業務アプリケーションとの接続のために、WebサービスのI/OとFile I/O、API I/Oを持つ。WebサービスのI/OはESBとの接続に利用。File I/O、API I/OはSOAに対応しない既存アプリケーションとの接続に利用する。「いまも使えて、将来も使える」(同社 マーケティング部 マネージャ 谷口功氏)というハイブリッドが特徴で、非SOA環境のアプリケーションが中心でも、徐々にSOA環境に移行できるという。

 ハイブリッド帳票インターフェイスは、I/O部分と、印刷、PDFなどの出力モジュール、XMLベースの帳票フォームファイルで、ウイングアークが開発した「Enterprise XML Form」の3層で構成。Enterprise XML Formは表示機能を持つフォームレイヤと、計算式や編集式などの機能があるロジックレイヤ、帳票データで構成する。ロジックレイヤの機能は通常は各アプリケーションが制御する部分だが、Enterprise XML Formはフォーム側に持たせることで、ビジネスプロセスの柔軟な構成を可能にする。

 ウイングアークが発表したSVFX-DesignerはEnterprise XML Formを生成するツールで、ウイングアークの従来の帳票ツール「SVF」の機能を継承する。SVFで作成したフォームを取り込んでEnterprise XML Form形式に変換することも可能で、フォーム資産の有効活用が可能だという。ウイングアークはSVFで作成したフォームをEnterprise XML Form形式に変換するコンバータも用意する。SVFX-Designerの価格は1クライアントで50万円。SVFX-Designer対応の帳票運用モジュールも販売し、ウイングアークは合わせて初年度2億5000万円の売り上げを見込む。

標準技術としてEnterprise XML Formの普及図る

 内野氏は@ITの取材に対して「Enterprise XML Formの仕様を公開していく」と述べ、帳票に関するSOA環境の標準技術としてEnterprise XML Formの採用を業界に働きかけていく考えを示した。内野氏は「SOAのインターフェイス標準化は、大枠はできている。しかし、帳票に関しては細かな定義はなく、どこかが決めていかないといけない」と説明。「Enterprise XML Formの仕様公開は、イメージとしてはAdobe PDFに近い」と述べた。内野氏はソフトウェアベンダやシステム・インテグレータが参加するウイングアークのパートナー組織「WARP」(WingArc Technologies Relationship Program)を中心に、Enterprise XML Formの業界への普及を働きかけるとした。

 また、内野氏は帳票ツールの海外展開に強い意欲を見せた。SVFX-Designerは次期バージョンで設計部を中国簡体語、英語に対応させる計画。実行部はすでにUnicodeで多言語に対応している。海外の販売拠点も2006年に中国と北米に設立する予定。内野氏は「全世界の開発者に使ってもらいたい」としている。

(@IT 垣内郁栄)

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