他社と協力し、携帯電話メモリのシェア拡大を狙うインテル

2005/12/7

 インテルとSTマイクロエレクトロニクスは12月6日、報道関係者向けの説明会を実施。両社の共通仕様に基づくフラッシュメモリ・サブシステムを発表した。両社の合意は、主に携帯電話のプログラム記憶などに利用されているNOR型フラッシュメモリに関してであるが、現行の90nmプロセス製造だけではなく、次世代の65nmプロセスも共通の使用に基づいて製品を提供していくとした。

図のように、NOR型フラッシュメモリで携帯電話用フラッシュメモリ市場の95%を満たせるという
 NOR型フラッシュメモリは、インテルが開発したフラッシュメモリ技術で、信頼性が高くランダムアクセスも可能なことから、携帯電話のプログラム記憶などに利用されている。調査会社iSuppliの調査では、携帯電話端末向けフラッシュメモリの92.8%がNOR型フラッシュメモリであると報告している。現在、インテルとSTマイクロエレクトロニクスの2社で、NOR型フラッシュメモリ市場のシェア40%程度を確保しているという。

 一方、東芝が開発したフラッシュメモリ技術であるNAND型フラッシュメモリは、NOR型フラッシュメモリより消去や書き込み速度が速く大容量化に向いている。しかし、ブロック単位での読み書きしかできず、ランダムアクセスが遅いといった欠点もある。メモリカードメディアに広く応用されており、コンパクトフラッシュ、スマートメディア、SDメモリーカードなどの記憶素子として利用されている。

 今回の協力で、両社は90nm多値セル(Multi-Level Cell)技術を採用したフラッシュメモリの設計で協力するほか、標準化されたメモリ・サブシステムを提供する。また、将来的には65nmやそれ以降に向けて、新機能やインターフェイス、パッケージなどを共同で定義する。ただし、今回の協力は仕様レベルであり、今後も両社は独自技術の開発は続け、それぞれ別に製品を出荷するという。

 STマイクロエレクトロニクス メモリ製品グループ グループバイスプレジデント ジュゼッペ・クリセンザ(Giuseppe Crisenza)氏は、「消費者がより高機能な携帯電話を購入する傾向にあるが、メーカーは機能向上を価格に転嫁することができないのが実情だ。従って、部材費の低減が重要な課題になっている」と指摘。このような携帯電話メーカーからの要求に加え、メモリメーカーがそれぞれ異なった技術を推進しているのが現状だという。そこで、インテルとSTマイクロエレクトロニクスの両社は仕様を共通化し、長期的にコスト削減を図ることを狙う。

両社のロードマップ
 現在、インテルとSTマイクロエレクトロニクスは90nmプロセス製造で、最大512Mbytesのメモリをサンプル出荷しているという。2004年における、携帯電話向けメモリは主に64Mbytes〜256Mbytesが中心であることから、「携帯電話端末に必要なメモリ容量の95%に対応している」(クリセンザ氏)と語った。

 米インテル フラッシュ製品事業部 CTO エド・ダラー(Ed Doller)氏は、「NOR型フラッシュメモリは、65nmプロセスで進化する。遅いといわれていた読み出しや書き込み速度は向上し、300万画素カメラやMPEG4ビデオに対応できるほか、低消費電力化も果たせる」と語り、NAND型フラッシュメモリとの性能差が縮まっていることから、コスト性能に優れたNOR型フラッシュメモリが今後携帯電話メーカーの部材費の低減に対応できると自信を見せた。ダラー氏は、「65nmプロセス製造によるフラッシュメモリは2006年初頭に登場し、2008年をめどに45nmプロセス製造製品の投入を目指している」と語り、今後の予定を説明した。

(@IT 大津心)

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