金融事業好調のオラクル、i-flexとの協力体制が動き始める

2006/4/7

 日本オラクルの執行役員 インダストリー第三統括本部 金融インダストリー本部長 桑原宏昭氏は4月6日会見し、同社の金融機関向けソリューション事業が、今年度に過去最高の売り上げを記録するとの見通しを明らかにした。2006年5月期第3四半期を終えた時点で「すでに昨年の1.5倍の成長」といい、急拡大を見込んでいる。特に「Oracle E-Business Suite」(EBS)などのアプリケーション事業の伸びが顕著だという。

 オラクルは金融機関向けのERPで強みを持つ。EBSはすべてのメガバンクが導入していて、証券や保険、消費者金融などでもシェアが高い。「SAPはERP全体ではナンバー1だが、金融ではオラクルがナンバー1。ある調査では7〜8割を占めるとの結果もある」(桑原氏)。

 オラクルは、買収したPeopleSoftやSiebelの金融向けプロダクトをラインアップに備えて、金融機関のバックオフィス系やフロントオフィス系ソリューションの厚みを持たせる考え。「Enterprise Data Hub」などオラクルが展開しているSOA基盤「Oracle Fusion Middleware」を活用し、金融機関のレガシーシステムと、オラクル製品の連携・統合をアピールする。

日本オラクルのインダストリー第三統括本部 金融インダストリー本部 ディレクター 島藤孝弘氏

 日本オラクルのインダストリー第三統括本部 金融インダストリー本部 ディレクター 島藤孝弘氏は、「会計や収益管理など、ここ数年は大手銀行を中心にオラクルは発展してきた。しかし、今後は市場成長率が高いものの、これまでオラクルがカバーできなかった分野にも展開したい」と語った。具体的には地方銀行の収益管理や規制対応、生保、証券などの収益管理を新たな市場と定めている。

 そのうえで島藤氏は注力している金融機関向けソリューションとして「統合収益リスク管理」「新BIS規制対応」「保険向けグローバル経営管理/連結会計ソリューション」「Accounting STP」の4つを挙げた。このうち「最も力を入れて営業しているのはAccounting STP」(同氏)。金融機関の業務処理と会計処理を完全分離することで、新しい金融商品を導入する際もシステムの大幅な再構築を行わなくても済むようにするソリューション。「仕訳生成から単体、連結決算まで一連の財務会計業務の統合が可能になる」(同氏)という。

 金融分野を手がけるIT企業が最も注目しているのは、オラクルが2005年8月に資本参加したインドの金融機関向けパッケージソフトウェアのベンダ、i-flexの動向だろう。i-flexは銀行勘定系システムのパッケージを持つベンダで、3月末で米オラクルが46.8%の株式を保有する。世界の顧客数は575社以上。2005年は38の金融機関が新規に導入した。日本でも新生銀行や日本振興銀行、日興シティ信託銀行などが導入している。

 日本オラクルはi-flexとの共同案件をサポートするチームを社内に立ち上げた。人員は2人だが、ビジネスの拡大で将来的には10人規模まで増やす考え。i-flex日本法人やアジアパシフィックのスタッフ、約70人と協力して、新規顧客の開拓を進めている。営業案件情報の共有や、共同のプリセールス活動も始めた。

 ただ、日本オラクルの桑原氏は、国内の金融機関が勘定系システムをオープン系システムに早期に移行していくとの見方には、否定的だ。団塊の世代が引退する2007年問題もあり、システムを開発・保守するエンジニアの不足も指摘されている。その状況で「いますぐフルバンキングでオープンに変えようとする地銀は少ない」(同氏)。

 桑原氏は、新商品をタイミングよく投入したい地銀などに対して、モジュール化したFLEXCUBEの個別機能をSOA技術を活かして導入する考えを示した。「地銀はSOAの考えに基づき、新しいアプリケーションを既存システムに差し込んでいくケースが多くなるだろう。地銀だけでなく、メガバンクでも可能性はある」。日本オラクルとi-flexはすでにいくつかの案件を獲得。桑原氏は「今後2年を見ると、i-flexは金融事業の大きな柱になる」と語った。

(@IT 垣内郁栄)

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