「新生HP技術の結晶」、HPが新世代ブレードサーバ発表

2006/6/16

c-Classを挟んで日本HPの石積尚幸氏(左)と上原宏氏(右)

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は6月15日、同社が第3世代のブレードサーバと呼ぶ「HP BladeSystem c-Class」を国内発表した。米国では6月14日(米国時間)に発表された製品で、日米ほとんど同時の発表となった。

 HPとコンパックが合併して以降も、HPは両社の既存製品ラインの延長線上で新製品を発表してきたが、「今回の製品は新しいHPの技術の結晶」と、同社取締役副社長石積尚幸氏は話した。c-Classは、これまでの同社におけるブレードサーバの主力製品であったp-Classを代替するものではなく、p-Classでも今後新CPU搭載機が予定されている。ブレードサーバとして最大の拡張性とシステム管理の自動化機能を備えた製品としてHPが投入したのがc-Classだ。

 c-Classは10Uサイズのエンクロージャに、最大16のサーバブレード、32台のハードディスクドライブを装着することのできる製品。実装密度は、p-Classに比べ、同等の機能で比較すると約30%向上したという。

c-Classの背面。引き出されようとしているのがHP自社開発の冷却ファン。中段はインターコネクトスロットで、イーサネット/ファイバーチャネルSANのスイッチなどを装着できる

 その決め手となったのは、HPが2年をかけて自社開発した冷却ファンだという。1個で1Uサーバを4台冷却できる強力なファンでありながら、同一性能のファンと比較して消費電力は66%減、騒音も50%減を達成。これを1台のエンクロージャに最大10個配置し、アクティブに制御することで、均一な冷却を実現し、ブレードサーバにおける高密度実装の最大の課題となっている発熱問題を軽減している。

 また、電力と発熱については、エンクロージャ単体だけでなく、ラックレベルでの情報を監視できるようにし、総合的な対策を行うきっかけとなる情報として提供している。

 管理面では新しく、エンクロージャに管理モジュール「Onboard Administrator」を搭載した。この管理モジュールからの情報を表示するため、小型の液晶ディスプレイ(「System Insight Display」)も搭載。故障発生時などにはコピー機のように原因と対処方法をウィザード形式で表示する。同一の情報はPC上のサーバ管理ツール(「HP Systems Insight Manager」)からも見ることが可能だ。

エンクロージャに装備された液晶ディスプレイ

 新製品では、ネットワークやストレージ関連の機能を拡張した点も目立つ。これまでの一般的な製品では、1ブレード当たりイーサネットポート4個が限界だったが、c-Classでは最大で1ブレードに16ポートを装着することができる。

 さらにI/Oの仮想化を通じてブレードの障害やメンテナンス時のネットワークやストレージへの接続管理を容易にする仕組みも新たに加わった。「バーチャルコネクトモジュール」というモジュールは、イーサネットにおけるMACアドレスやファイバーチャネルSAN接続におけるWWN(World Wide Name)を論理的にマッピングする機能を備え、例えば障害発生ブレードのMACアドレスを同一エンクロージャ内の別ブレードが引き継ぐ形で構成できるようにした。

 ネットワークやストレージ側からは何の変更もないように見せられるため、これらの管理者を巻き込むことなくサーバの追加や移動が可能になる。

 2006年後半には、インターコネクトスロットに装着可能なInfiniBandスイッチのリリースを予定しているほか、ブレード化したストレージの提供も計画されている。

 IDCの調査によると、国内x86ブレードサーバ市場における日本HPのシェアは、2005年第4四半期から2006年第1四半期にかけて急上昇し、25.4%に達した。日本HPのx86サーバ出荷に占めるブレードサーバの比率も、2006年2〜4月期では7.4%にまで上昇した。

 日本HP エンタープライズ・ストレージ・サーバ統括本部インダストリースタンダードサーバ製品本部本部長上原宏氏によると、サーバのフォームファクターとしてのブレードサーバはちょうど本格的普及期への入り口に入ったところだという。新製品の発表により、「ブレードといえばHPというイメージをますます確立していきたい」と話した。同氏は、「従来型を捨ててまでやりたいということではない」としながらも、「今後拡張していく日本のブレード市場で、HPがリードしていきたい」と語った。

(@IT 三木泉)

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日本HPの発表資料

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