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Web 2.0は説明不能、体験必須
2007/09/03
先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングは第1位は「日本のIT大手はWeb 2.0に興味なし、調査で浮き彫り」だった。NPO法人「Japan Venture Research」が日本のベンチャー企業を追跡調査したデータの一環として公表した資料から浮かび上がったのは、Web 2.0とされている企業に対して、積極的に投資している銀行系や商社系のファンド、ベンチャーキャピタルがある一方で、日本国内のIT大手は一切投資を行った形跡がないという実態だった。
JVRのユニークな活動は、まだ始まったばかり。こうした発表は今後も定期的に行うとのことで、期待したい。
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JVRの発表の目的とは異なるが、取材して印象的だったのは、富士通総研 経済研究所上級研究員の湯川抗氏の言葉だ。湯川氏は、Web業界の動向に詳しいリサーチャーとして、多くの経営者の前でWeb 2.0動向のプレゼンテーションをするそうだが、それは「カラーテレビを見たことのない人にカラーのよさを説明するようなもの」で、もどかしさを感じるのだという。経営幹部ともなれば知識も豊富で、説明する前からWeb 2.0とされるサイトのことを、よく知っているのだという。ところが、実際の行動につながるほどには話が相手に響かないのだという。私は、その理由は「自分で使ったことがないから」ではないかと思う。
Web 2.0が何であるかは、ティム・オライリーによるWeb 2.0の定義をいくら眺めてみても、Web 2.0サイトのスクリーンショットや説明をいくら眺めてみても分かるものではない。自分で参加し、使い込んでみて初めて分かるものだと思う。
新しいメディアというのは、そういうものだ。一通り説明を聞いても、なかなかその良さが分からない。「誰が移動しながら電話なんかするの?」、「色がついたテレビの何がうれしいの?」、「個人的な写真を共有して何がうれしいの?」、「説明を聞けば聞くほど○○○(Web 2.0サイト)が何をする場所なのかが分からない」。
例えば、写真共有サイトFlickrは、使ってみないとその良さが分からない。そこには「もはやローカルアプリケーション不要」と思わせるほど洗練された画像編集・管理機能があり、写真を介した交流がある。また、交流を促す工夫が随所にある。
YouTubeにビデオを投稿したことがないなら、ぜひ自分で撮ったビデオを公開することをお勧めしたい。さまざまな人から反応があって交流できることの楽しさは、体験してみなければ分からないと思う。私は趣味のスポーツで入門動画をたくさん公開しているが、日本やアメリカだけでなく、カナダ、北欧、中国、ロシアあたりからも、感謝の言葉と質問を毎日のように受け取っている。そうやって使い込んでみると、YouTubeの圧倒的なスケーラビリティや、YouTubeのユーザーインターフェイスがいかによく考えられているかということが、実感としてよく分かる。単にインターフェイスが使いやすいということだけではない。いかにユーザーの参加を促し、ユーザー同士の交流を促進するかということに、どれだけ腐心しているか、またユーザーの1つ1つのクリックを吸い上げてコンテンツフィルターに反映するかといったことで工夫しているかが良く分かる。そういうことはリアルなユーザーにならないと分からない。そうした差の集積にしかWeb 1.0とWeb 2.0を分ける違いはない。だからWeb 2.0は使ってみないと分からない。
もしあなたの周りにWeb 2.0が何だかよく分からない、あるいは単なるマーケティング上のバズワードだと思っている人がいるとしたら、それはまだWeb 2.0サイトを使った経験がないからではないかと思う。もっとも、これぞWeb 2.0といえるほど旧来のWebとの違いが明白な大手サイトが、日本にはまだほとんどないという事情もあるかもしれないが。
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