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“解読不能”の新暗号の記事について、いくつかのお詫び
2008/04/14
先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングの第1位は「Vistaに見切りをつけたMS、「Windows 7」登場は来年か」だった。Windowsの次期デスクトップバージョンである「Windows 7」(開発コード名)が「来年ごろ」にリリースされる見込みだとするビル・ゲイツ氏の発言が波紋を広げている。発言の真意は定かではないが、マイクロソフトがVistaを見限るのではないかとの観測が強まっている。
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先週末の金曜日に掲載した「『解読不能は数学的に証明済み』、RSAを超える新暗号方式とは」がアクセスランキングの2位に入っているが、はてなブックマークやブログで、たくさんのご指摘、ご批判をいただいた。取材、執筆したニュース担当記者である私(西村賢)はいくつかお詫びしなければならない。
1つは記事タイトルや冒頭の記述だけを見ると、まるで確定事項のように見えること。アルゴリズムの公開や検証が済んでいないので「原理的に解読不能と主張する研究者が現れた」と書かなければならないところだった。記事の末尾で「CAB方式は、まだ実績がなく事実上未公表の技術だ。情報が公になっていくにつれて、専門家たちがどう反応するかは未知数だ」と書いたときには、今後アルゴリズムが公表されてすぐに理論的な瑕疵が見つかる可能性があるという意味のつもりだったが、誤解を与える記事構成だった。
アルゴリズムを非公表にしたまま「解読不能」と主張するのが「詐欺まがい」だという指摘については、実装を行った入山博士自身も認めており、「当然のことだと思います」と話している。では、なぜアルゴリズムや実装を公開しないのかということだが、今のところ入山博士の説明は、こうだ。
「原理的で包括的な特許が取得できるならそれでいいのですが、無数にある個別のアルゴリズムのすべてで特許を取得しなければならないのだとすると、ある程度は実装で先行してから公開しないと大手企業に実装競争で負けてしまう。いずれにしても会社が立ち上がったばかりで、まだ検討課題が多いのが現状です」
記者にはこの説明が妥当かどうか分からない。ただハッキリしているのは、クリプト・ベーシック社がアルゴリズムを非公開のまま世に出そうなどという気はないということだ。この点は自明だと思ったが、多くの誤解を招いたようだ。記事の書き方がまずかったのだと思う。読者と関係者の双方にお詫びしたい。
専門家同伴の追加取材を予定
お詫びの2つ目は記事の内容が「解読不能」だったこと。ジョーク系ニュースサイト、ボーガスニュースでネタとして取り上げられるというのは、かりそめにもIT系を名乗る記者にとって痛恨だ。
しばらく何事もなかったかのように粛々と日々をやり過ごし、やはりCAB方式がガセだったと分かるか続報を聞かずに自然消滅すれば、それはそれでいい。その頃には誰も覚えていないだろう。と、そういう態度を取るつもりはまったくない。
記者の手元にはクリプト・ベーシック社の事業計画書があり、そこに暗号方式の概要が書かれている。記事公開後にいただいたご意見や、メールでいただいたコメントなどと合わせて改めて読んでみると、専門家なら読み取れるだろう話が多く盛り込まれているように思える。例えば記者は「OTP」というキーワードをワンタイムパスワードと誤解してしまったが、暗号技術の基礎を知る人であれば、それがワンタイムパッドであることは自明だろうし、「one-time-pad SSK」と言われれば内容もすぐ分かるだろう。
あわてて付け加えるが、ワンタイムパッドはCAB方式によって可能となる暗号通信の1つで、CAB方式は、これがすべてではないそうだ。ただこれ以上、記者が書いても恥の上塗りにしかならないので、後は専門家に委ねたい。
追加取材を予定している。公開鍵暗号の専門家、もしくはそれに準ずる研究者数名にコンタクトしている最中なので、続報をお待ちいただければと思う。コンタクト中だった方のうち1人に、「暗号アルゴリズムの専門家以外から、画期的なアルゴリズムが出る可能性は限りなくゼロ」などの理由からお断りされていることも付け加えておく。もしかすると、「アルゴリズムを公開しない以上、相手にするのは時間の無駄」との理由から、誰にも取り合ってもらえない可能性もある。もしそうなったら、それはそれで改めてお知らせするとともに元の記事にも、その旨注意書きを追記したい。もし、ご協力いただける専門家の方がいらっしゃれば、下のメールアドレス宛で、ぜひお知らせいただければと思う。
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