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@IT > Windows Server 2003 導入実践特集(1) |
企画:アットマーク・アイティ 営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限2003月11月30日 |
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Windows
Server 2003 導入実践特集(1)
いまでこそコンピューティングにとってネットワークは不可欠な存在となったが、Windows NT 4.0が発表された1996年当時といえば、ネットワーク機器は非常に高価で、ソフトウェアのネットワーク・サポートも十分ではなかった。高いお金を出してLANを構築したところで、何ができて何が便利なのか。企業のネットワーク管理者は手探りをしていた時代であった。 Windows NT 4.0が世に登場したのはそんなときだ。結果からいえば、このWindows NT 4.0の登場によって、企業内のWindowsネットワークが爆発的に普及することになったわけだが、その導入スタイルの多くは、中央の情報システム部門の号令によるトップダウンのものではなく、現場の管理者がボトムアップ的に、手探りで導入したものが、便利で定着したというものだった。このときから、はや6年あまり。日本国内には、部門レベルなど、中小規模のLAN向けのファイル/プリンタ・サーバー用として、いまなおWindows NTベースのサーバーが多数稼働しているという。これらの多くは、前述のようにして企業に入り、定着したものだと思われる。 しかしこのWindows NT 4.0ベースのサーバーは、いくつかの決定的な理由からリプレースの必要性に迫られている。 1つは、マイクロソフトの製品ライフサイクル・ポリシーにより、Windows NT Server 4.0のサポートが段階的に終了することである。特にサーバー用途として重要なのは、2005年1月1日以降は、セキュリティ関連の修正プログラムを含め、Windows NT Server 4.0向けのすべての修正プログラムが提供されなくなることだろう。つまりセキュリティ・ホールが見つかったとしても、それを修正するプログラムは提供されなくなるということだ。 これ以外にも、Windows NT Server 4.0の導入は遅くともWindows 2000 Serverが発表された2000年までだとすると、すでに3年以上が経過しており、サーバー用ハードウェアの陳腐化やリース・アップ時期の到来などの問題もあるだろう。 順当に考えれば、古くなったWindows NT Server 4.0から、PCサーバーの更新を含めてWindows Server 2003への置き換えを検討することになろう。しかし、これにはいくつかのハードルがある。 周知のとおりマイクロソフトは、Windows 2000からディレクトリ・サービスのActive Directoryを導入し、より大規模なネットワークを系統的に管理できるようにした。実際には、Active Directoryを利用してWindows NTレベルのシングル・ドメインと同様のシンプルな構成も可能だが、将来の拡張性などから、DNSによる名前解決を正しく設定する必要がある。このため、Active Directoryの導入には会社全体のシステムを考慮する必要があり、管理者にとっては少々敷居が高いと感じる部分があるのではないか。 Windows Server 2003では、さまざまな新機能追加や機能改良がなされている。しかしWindows NT 4.0から移行するという点で、具体的にどのようなメリットがあるか、理解している管理者はまだまだ少数だろう。またWindows Server 2003は発売されたばかりで、安定性や過去のアプリケーションとの互換性に不安があるということも事実であろう。
確かに、Windows NT Server 4.0ベースのサーバーを、いきなりWindows Server 2003で置き換えるのは容易ではないだろう。それなら、既存のWindows NT Server 4.0ベースのドメインはそのままに、Windows Server 2003をドメインのメンバ・サーバーとして追加して評価してみてはどうだろうか。追加したWindows Server 2003にも共有フォルダを作成して、NT 4.0サーバーからの段階的な共有資源の移行を行うこともできるし、実際に現場で使いながら、Windows Server 2003移行のメリットを体験できる。もちろん安定性や互換性も検証できるというわけだ。最終的には、Windows NT Server 4.0からWindows Server 2003にドメイン・コントローラを移行して、Active Directory環境に移行する必要があるだろうが、そのための第一歩として、この評価方法をお勧めしたい。
以下では、中小規模のネットワークを前提として、ファイル&プリント・サーバーとして利用されているWindows NT Server 4.0をWindows Server 2003に移行した場合のメリットについて紹介しよう。これには大きく2つのポイントがある。 1つは、Windows Server 2003におけるファイル&プリント・サーバー機能の強化である。これにより、運用コスト削減やユーザーの利便性の増大、信頼性とパフォーマンスの向上といった恩恵を受けることができる。 そしてもう1つは、Windows Server 2003向けに提供されるWindows SharePoint Services(以下WSS)を利用したチーム・コラボレーションである。WSSを利用すれば、この秋にも発表が予定されるOffice 2003をフロントエンドとして使い、情報発信や情報共有を行うためのチーム・サイトを簡単に構築できるようになる。これにより、現在のようなプリミティブなファイル・レベルの情報共有から、より高度で生産性の高いアプリケーション・レベルでの情報共有が可能になる。 以下では、これらの中から代表的ないくつかのメリットについて、より具体的に掘り下げてみよう。
ボリュームシャドウコピー サービス(Volume Shadow Copy Services:以下VSS)は、サーバーのバックアップ作業を支援する機能である。VSSが提供されなかったWindows 2000までは、オープン中のファイルなどはバックアップすることができなかった(このためバックアップを行うには、データベースなどのサーバー・ソフトウェアを停止するなどの必要があった)。これに対しWindows Server 2003のVSSでは、バックアップの開始時点でバックアップ対象のスナップショット(ファイルの状態)を保存し、たとえオープン中のファイルがあったとしても、バックアップ処理を続行できるようにする。
なお、Windows NT 4.0にも標準でバックアップ・ユーティリティが付属するが、バックアップ先はテープ・ドライブなどに限定されていた。これに対しWindows Server 2003のバックアップ・ユーティリティでは、テープ・ドライブはもちろん、ローカル・ディスクやネットワーク・ドライブに対して、通常のファイルとしてバックアップすることが可能になっている(この機能は、Windows 2000から追加された)。
ローカル・ディスクに保存されたファイルやフォルダを削除すると、実際にはファイルが本当に削除されるのではなく、「ごみ箱」と呼ばれる特別な領域に移動される(デフォルト時)。これは、うっかり削除してしまったファイルを取り戻せるようにする機能である。しかしこの「ごみ箱」の機能は、ネットワーク上の共有ファイルについては適用されない。共有ファイルを削除すると、「ごみ箱」にはファイルは移動されず、ファイルが直ちに、実際に削除されてしまう。泣かされた経験がある読者も少なくないだろう。 これに対しWindows Server 2003には、共有フォルダのシャドウコピーリストアと呼ばれる機能があり、共有ファイルについても「ごみ箱」と同じように、誤って削除したファイルを取り戻せるようにできる。管理者は、必要な共有フォルダを指定して、シャドウコピーリストアを構成しておくだけでよい。こうすると、定期的にファイルの変更がサーバー上で退避されるようになり(VSSのしくみを利用)、ユーザーが間違ってファイルを削除してしまった場合でも、ユーザー自身が以前のバージョンのファイルを取り戻せるようになる(ユーザーへの対応など管理者の手間を大きく削減できる)。
Windows Server 2003では、プリント・サーバーについても機能が強化されている。プリント・サーバーでよく問題になるのは、ドライバのトラブルやスプーラのハングアップなどであろう。Windows Server 2003は、トラブルの原因となったドライバをロールバックすることができる。また、ハングアップ状態のプリンタジョブを自動検知し、スプーラを自動的に再起動する機能もある。つまり、プリント・サーバーの管理がより簡単になり、手間のかからないプリント・サーバーになっている。
無制限に共有フォルダを利用できる環境では、一部のユーザーによって多量のディスク領域が占有されてしまい、すぐにフォルダがいっぱいになってしまうものだ。Windows NT 4.0では、ユーザー単位で共有フォルダの使用可能領域を制限する機能はなかったが、Windows Server 2003のディスク・クォータ機能を使えばこれができる(ディスク・クォータはWindows 2000から提供)。これにより、限りある共有フォルダのディスク領域を公平にユーザーに提供できるようになる。
新しいOSでは、多数の新機能追加がある分、コード・サイズは大きくなるのが一般的だ。しかしだからといって、必ずしもあらゆる場面でパフォーマンスが低下するとは限らない。洗練されたパフォーマンス・チューニングにより、旧バージョンのOSよりも性能が向上する処理も少なくない。 例えば以下は、NetBenchと呼ばれるベンチマーク・プログラムを利用して、Windows NT 4.0とWindows 2000、Windows Server 2003の共有ファイル・アクセス性能を計測したものだ(1〜8プロセッサのシステムにてそれぞれ計測)。
この結果から分かるとおり、同一のハードウェアを使用しても、すべての条件でWindows Server 2003はWindows NT 4.0やWindows 2000の性能を大きく凌駕している。
Windows SharePoint Services(WSS)は、具体的には、ASP.NETベースのWebパーツを組み合わせることで、Webインターフェイスを持つチーム・サイトを構築し、ドキュメント管理やOffice 2003統合(Office 2003からチーム・サイトを透過的にアクセスする)を可能にする。前述したとおり、WSSはWindows Server 2003ユーザー向けに無償提供される。WSSにより、チームでの生産性を大幅に向上させることができるだろう。これが無償で利用可能になるというのだから驚きである(複数のチーム・サイトを全社レベルで統合するには、有償の上位製品であるSharePoint Server 2003を利用する)。
このようにWindows Server 2003は、大規模ユーザーばかりでなく、中〜小規模のファイル&プリント・サーバー用途として見ても魅力的な機能を数多く備えている。まずはメンバ・サーバーとしてWindows NT 4.0ドメイン・ネットワークに接続して、その実力のほどを実際に体験してみよう。 |
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