これらの検討の末、同社はOracle Exadataの採用に傾く。しかし、これは先のグランドデザインに反するものと映る。
「Oracle Exadataを選ぶことは、グランドデザインでうたう“共通化(汎用製品)の推進”や“サーバ仮想化技術の活用”といった指針に反するのではないかとの疑念が湧きました。そこで、『共通化が全てにおいて正しいのか』をメンバー間で議論し、社内のシステムをあらためて見回してみたのです。そして、『データベースはオラクル、ストレージはA社』といった具合に“ベストオブブリード”で作られたシステムでは、インテグレーションや性能の確保、運用管理などで大変苦労していることを再認識しました」(小西氏)
これに対して、ハードウェアとソフトウェアがあらかじめ融合/最適化されたOracle Exadataならばスムーズに導入でき、特別なチューニングなしで高い性能が得られる。新統合データベース基盤は、将来にわたってエディオンのセントラルデータベースとして運用していくものだ。長期間にわたって運用保守していくのならば、高い性能を備えていながら、扱いやすいOracle Exadataの方が好ましい。
「何より、“スピード経営”を指向する以上、導入や運用保守に手間とコストの掛かるインフラに足を引っ張られて次の打ち手が遅れることは、最も避けたいことでした」(小西氏)
こうして2013年、同社は新統合データベース基盤のインフラとしてOracle Exadataの採用を決断(データベースはOracle Database 11g)。本番環境機としてHalf Rack(2分の1ラック)構成 1台、開発/検証機としてEighth Rack(8分の1ラック)構成 1台の導入を決める。また、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の観点から、次の構成によって冗長化を図ることにした。
- 本番環境機上ではOracle Real Application Clusters(RAC)により冗長化
- 本番環境機と開発/検証機のデータをOracle Data Guardによって同期
- 開発/検証機のデータを遠隔地に設置したストレージにバックアップ
また併せて、統合データベース基盤に格納した顧客情報など機密データの保護を目的に、「Oracle Advanced Security」の導入を決めている。
新統合データベース基盤にOracle Exadataを選定したエディオンは、続いて具体的な移行方法の検討に入る。その中で大きな課題として浮上したのが、新環境への移行手段である。
「約7TBものデータを格納した統合データベース基盤は約1200店舗の運営をリアルタイムに支えるものであり、日中に止めることはできません。とはいえ、通常の方法では大量のデータを短時間で移行するのは困難です。従来のように、旧統合データベース基盤のデータを段階的に新統合データベース基盤に移しながら、徐々に寄せていくことになると考えました」(小西氏)
しかし、移行プロジェクトに加わり、この課題の解決策を検討したNECから、それとは異なる方法を提案される。それはデータベース連携ツール「Oracle GoldenGate」によって、新旧切り替え当日の作業を夜間の数時間で完了させるというものであった。
「Oracle GoldenGateを使えば、新旧データベースを同期させてデータを事前に移行し、切り替え当日に行う作業をアプリケーション接続先の変更など最小限に抑えられます。これにより、前日の業務終了から翌日の業務開始までの夜間の数時間で切り替え作業が行えるわけです。止めることが許されないデータベースの移行には最適のツールだと考え、採用を決めました」(小西氏)
Oracle GoldenGateは初めて使うツールであることから、プロジェクトメンバーは仕様や使用方法についてNECよりレクチャーを受けたうえで、具体的な移行手順を作成する。そして数度にわたる入念なリハーサルを経て、繁忙期を避けた2015年1月末の1週間で初期データ移行を実施し、Oracle GoldenGateによる同期状態を確保。続いて2月初旬の夜間、当初の要件であった4時間以内のサービス停止を大きく下回る約1時間で無事に切り替え作業を完了させた。
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