Oracleが約20年かけて開発してきた自動化技術の集大成「自律化」とクラウドによってDB管理者の業務はどう変わるのか自己稼働、自己保護、自己修正を実現

2017年に発表されたばかりの「Oracle Autonomous Database」は、大規模システムを抱える企業の要望にどう応えるのか。DB管理者の業務をどう変えるのか。日本オラクルが2018年7月27日に開催した「Oracle Innovation Summit Tokyo 2018」の基調講演において、Database Server Technologiesのマスタープロダクトマネジャーを務めるマリア・コルガン氏が語った内容から解説する。

» 2018年08月29日 07時00分 公開
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 2017年のOracle OpenWorldで構想が発表され、2018年から実際にサービス提供が始まったOracle Autonomous Database。Oracle Cloud上で自律的に稼働するため、運用管理の労力やコストが激減するという。具体的にどのような技術で実現しているのか。

 日本オラクルが2018年7月27日に開催した「Oracle Innovation Summit Tokyo 2018」の基調講演において、OracleでDatabase Server Technologiesのマスタープロダクトマネジャーを務めるマリア・コルガン氏が語った内容から解説する。

いまデータ管理に求められるものは何か――顧客が求めるものから考える

OracleでDatabase Server Technologiesのマスタープロダクトマネジャーを務めるマリア・コルガン氏

 現在、大規模システムを抱える企業が「データ管理」業務で抱える課題は何か。Oracleが顧客に聞き取り調査を行ったところ、その要望は「既存の環境を最新のクラウドモデルへと変革したい」「データの安全性などのエンタープライズ機能は損ないたくない」「より低コストでビジネスプロセスの効率化や迅速化などのイノベーションを加速させたい」の3点に集約されたという。

 「こうした声を聞いて、私たちはOracle Autonomous Databaseの開発方針を固めました」とコルガン氏は話し、その大きな特長として「自己稼働(Self-Driving)」「自己保護(Self-Securing)」「自己修正(Self-Repairing)」の3つを挙げた。

 自己稼働とは、データベースとインフラの管理、監視、チューニングを自動で実施すること。自己保護とは、企業の外部からの攻撃および内部犯行の両方から防御し、脆弱(ぜいじゃく)性パッチなどを自動適用すること。自己修正とは仮に障害が発生しても自動的に対処を行うこと。これらを、機械学習を用いて実現していることも大きな特長だ。

 Oracle Autonomous Databaseは2017年に発表されたばかりだが、一朝一夕で実現したものではない。Oracleが約20年かけて開発してきたデータベース自動化技術の集大成でもある。また、「データベース」「インフラストラクチャ」「クラウド」という3つの要素における自動化をもって成り立つサービスだ。それぞれ詳しく見ていこう。

データベース+インフラストラクチャ+クラウドの自動化→Oracle Autonomous Database

 まずは「データベース」だ。Oracle Databaseでは、9iの「Automatic Query Rewrite」や「Automatic Undo Management」から始まり、自動化や最適化のための、「Automatic」と名前に付く機能を徐々に増やしてきた。10gではスペース管理やメモリ管理、11gではチューニングや最適化などが該当する。コルガン氏は「DB管理者にとって退屈なタスクを、Oracle Databaseで次々と自動化してきました」と話す。

Oracle Autonomous Database実現への道のり(データベース)

 次に、「インフラストラクチャ」だ。以前はデータベースの構築にもネットワークやストレージ、サーバを調達するところから始めなくてはならないため、DB管理者にかかる負担も大きかった。そこでOracleは2008年に「エンジニアド・システム」として「Oracle Exadata」を発表。ハードウェアを組み上げて、ソフトウェアを「設定済み、テスト済み、最適化済み」の状態にし、すぐに使えて、かつ多くの管理の手間を取り除いた製品となった。

Oracle Autonomous Database実現への道のり(インフラストラクチャ)

 コルガン氏は「加えてエンジニアド・システムでは、データベースのアルゴリズムをインフラに搭載することでOracle Databaseのパフォーマンスを向上させました」と話す。Oracle ExadataではInfiniBandやスマートスキャンから始まり、列指向テーブルのデータ圧縮などデータベース性能を向上させるようなハードウェアのイノベーションを次々と組み込んできたのだ。

 しかし、これらだけではOracle Autonomous Databaseは成り立たない。「なぜかというと、『クラウド』という要素が必要だったからです」とコルガン氏は指摘する。Oracle Autonomous Databaseはデータベースとインフラストラクチャに、機械学習とデータセンター運用の自動化が組み込まれたOracle Cloudが加わることで初めて成り立つサービスなのだ。

自律化によって目的を達成

データベースライフサイクルの自動化 6つのポイント

 従来のデータベースとインフラストラクチャの技術にOracle Cloudの機能が加わった、Oracle Autonomous Databaseが実現する「データベースライフサイクルの自動化」とは具体的にどのようなものなのか。コルガン氏は、プロビジョニング、セキュリティ、運用管理、保護(ダウンタイム回避)、スケール、最適化の6つの観点から具体的に説明した。

プロビジョニング

 Oracle Cloudでは、インフラストラクチャにはOracle Exadataを使い、ユーザーがデータベースを作成すると同時にOracle Real Application Clustersを構成している。これにより、可用性と拡張性を実現する。

セキュリティ

 まずは暗号化。Oracle Cloudでは保存されているデータだけではなく、ネットワーク通信に至るまで、あらゆる部分で暗号化を施す。セキュリティアップデートはオンラインで実施し、既知の脆弱性を悪用した攻撃から防御する。また「Oracle Database Vault」を用いて管理者が技術的に顧客のデータをのぞき見できないようにしている。

運用管理

 Oracle Autonomous Database CloudではOSやSYSDBAなどの特権をユーザーには提供しない。そのため全ての運用保守に関する操作はOracle Cloud側で実施している。パッチはオンラインで自動適用し、稼働状況を監視して異常検知や対処も行う。異常検知には機械学習を用いている。挙動を常にチェックし、異常な挙動が検知されたら既知の問題と照らし合わせてパッチを当てるなど対処する。

保護

 Oracle Cloudではバックアップやリストアも自動的かつ透過的に行う。実際の運用ではシステム的な要因だけではなく、人的な操作ミスからも復旧が必要な場合がある。状況に応じて、クラスタまたはスタンバイを用いることで、元に戻す(フラッシュバックする)ことができる。アプリケーションに追加のコードを必要とせず、透過的に復旧する。「ダウンタイムなしに障害から復旧することを可能にします」(コルガン氏)

スケール

 Oracle Cloudでは、CPUやストレージなどのリソースを連動することなく、必要に応じてそれぞれ、即座に拡張または縮退することができる。「これにより真の従量課金を実現します」(コルガン氏)

最適化

 Oracle Cloudではワークロードに応じた最適化を行う。データをロードした時点で、ワークロードを推定し、適切なフォーマットで保存している。例えばデータウェアハウスに適しているなら列指向、トランザクションに適しているなら行指向というようにデータフォーマットを分け、索引、並列度、実行計画などを最適化する。

データベースライフサイクルの自動化

 「こうして見ると分かるように、Oracle Cloudではユーザーが特に意識せずとも、Oracleの最高級のテクノロジーが享受できるようになっています。オンプレミスなら上位のライセンスでなければ使えないような機能やオプションも“デフォルト”で使える。オンプレミスなら時間をかけて準備しなくてはならないようなミッションクリティカルなデータベースをこれほどまでに素早くかつ簡単に構築できるのです」(コルガン氏)

 また列挙したような運用管理の自動化や最適化について「他のクラウドサービスでも『マネージドサービス』として提供されているから、それほど特別ではない」と思えるかもしれない。その点、コルガン氏は「Oracleは一歩先を進んでいます」と言う。それが最後に掲げたワークロードの最適化だ。データをロードした時点でフォーマットを最適化するのはOracle Cloudならでは。データベースで実績があるOracleだから実現できる機能といえるだろう。

Oracle Autonomous Data Warehouse CloudとOracle Autonomous Transaction Processing Cloud

 このようにデータベースライフサイクルの自動化を実現するOracle Autonomous Databaseは、2018年8月時点ではワークロード別に2つに分かれて提供される。

 一つは2018年3月にリリースされた「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud」。データ分析に最適化されている。考えられるユースケースとしては、ビジネス分析におけるデータウェアハウスやデータマート、機械学習のプラットフォーム、データサイエンティストのためのサンドボックス、他のデータソースとも組み合わせて使うデータレイクなどがある。

 もう一つは米国時間8月7日にリリースされた「Oracle Autonomous Transaction Processing Cloud」だ。こちらはトランザクション処理および混合ワークロードに最適化されている。ユースケースとしては、ミッションクリティカルな業務アプリケーションや、リアルタイム分析で求められるようなトランザクションと分析の混合ワークロードが考えられる。加えて、新しい技術を手早く試すことが求められるようなアプリケーション開発の場でも有効となる。

Oracle Autonomous Databaseを使うことで得られるメリット

 続いてコルガン氏は、Oracle Autonomous Databaseを使うメリットをまとめた。

 あらゆる領域で自動化が施されているため、DB管理者を単調な作業から解放する。自動化でシステムに任せることができれば、人的ミスも生じなくなる。そうなることで、DB管理者はより高度な仕事に専念できるようになる。例えば「データからビジネス価値を引き出す」「セキュリティを向上させる」「アプリケーション開発のアーキテクチャを策定する」などだ。

 Oracle Autonomous DatabaseはDB管理者だけではなく開発者にもメリットを与える。データベースがすぐに使えるため、開発者はDB管理者がデータベースを構築してくれるのを待つ必要がなくなる。コルガン氏は「最高のデータベースが今や世界で最もシンプルなデータベースになったのです」と強調する。

 加えてOracle Autonomous Databaseによって、既知のセキュリティ事故も防止できるという。「Verizon - 2018 Data Breach Investigations Report」によると「85%のセキュリティ事故はCVE(Common Vulnerabilities and Exposures)の発表後に発生している」とある。近年では脆弱性が発表されてから、それを狙った攻撃が起きるまでの時間がどんどん短くなっている。脆弱性に対応するためのアップデートを行う前に攻撃されてしまうケースが後を絶たない。「Oracle Autonomous Databaseではセキュリティアップデートを即座に適用するため、セキュリティを強化することができます」(コルガン氏)

 可用性が高いのもOracle Autonomous Databaseの強みとなる。SLAは99.995%を保証している。コルガン氏は「これは1カ月当たり2.5分未満となります。計画停止も含めてです。Oracle Cloudでは他社と違って非合理な例外はありません」と念を押す。

 さらにOracle Autonomous Databaseには、オンプレミスでの実績が多いOracle DatabaseをOracle Cloudでも同じように使える互換性を実現しているため、クラウドへの移行が容易というメリットがある。「Oracle Data Pump」を使えば、古いフォーマットへの対応やパッチ適用、データ暗号化、管理者権限の削除などが不要になる。「Oracle GoldenGate」のレプリケーション機能を用いれば、移行時のデータ連携もオンラインで可能だ。MySQL、PostgreSQL、Microsoft SQL Serverといったデータベースに対応した移行ツールもある。

 コルガン氏はコストの観点からもOracle Autonomous Databaseのメリットを補足した。Oracle Autonomous DatabaseではBYOL(Bring Your Own License)を用いることができるため、既存ライセンスを有効活用できる。Oracle Cloudでは高性能なインフラストラクチャや自己最適化により、ランタイムコストが大幅に短縮できるため、コスト削減に大きく寄与する。自動化によりDB管理者の作業時間が減ること、ダウンタイムが減ることでビジネス損失を防げる。これもコストの観点では大きなメリットを生むという。

Oracle Autonomous Databaseによるコスト削減


 以上、Oracle Innovation Summit Tokyo 2018におけるコルガン氏の講演内容からOracle Autonomous Databaseの主要な機能とメリットを紹介した。コルガン氏が冒頭に掲げた大規模システムを抱える顧客からの要望として、既存環境を最新のクラウドモデルへと移行すること、データの安全性を保証すること、より低コストでイノベーションを加速することがあったが、これらの主要なITの目標は、Oracle Autonomous Databaseがあれば達成できることが理解できたのではないだろうか。Oracleが約20年かけて開発してきた機能の集大成「自律化」とクラウドによってデータベースは今後どのように進化していくのか。DB管理者の業務はどう変わっていくのか。今後もOracleが提供するサービスから目が離せない。

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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年9月28日

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