インフォマーシャルとダイレクトマーケティングを駆使したスキンケア商品の通信販売で知られるザ・プロアクティブカンパニー。長年にわたり基幹データベースとDWHを別々に運用してきた同社は、ソフトウェアの保守期限切れによってこれらの刷新を迫られる。そこで同社が選んだのが、Oracle Database ApplianceとOracle Database 12cによる基幹データベース/DWHの統合であった。
ニキビケア商品「プロアクティブ+」をはじめとする各種スキンケア商品の通信販売で知られるザ・プロアクティブカンパニーは、通販/販売サイトやコールセンター、カスタマーサービスセンターで利用する基幹データベースと、同データベースから抽出したデータを活用するためのデータウェアハウス(DWH)を「Oracle Database Appliance X5-2」と「Oracle Database 12c」によって統合。従来よりも大幅にコストを削減しながらリアルタイムなデータ活用を実現した。
同社がOracle Database Applianceを採用した理由と、それによって得たさまざまな効果について、導入を主導したシステム部 オペレーションズマネージャーの持田健治氏が語った。
米国企業Guthy-Renkerの日本法人として2001年に設立され、Nestle Skin HealthとGuthy-Renkerの事業提携を受けて2017年に社名を「ザ・プロアクティブカンパニー」に変更。さらなる事業拡大に向けてまい進する同社のビジネスの特徴は、商品の特性や効果を分かりやすく説明したインフォマーシャルをTVやWebメディアで放映し、関心を抱いた消費者を同社の通販/販売サイトやコールセンターに誘導することで、顧客のニーズに応じた商品提供に努めるダイレクトマーケティングの手法を駆使している点にある。
そんなザ・プロアクティブカンパニーのビジネスを支えてきたのが、通販/販売サイトやコールセンターシステムなどのバックエンドで顧客や商品在庫の情報などを管理する基幹データベースと、同データベースからETLツールで取り出したデータを経営層やマーケティング、商品企画の担当者に提供するDWHだ。このうち、基幹データベースはWindows Server上のOracle Database 10g Standard Edition(Oracle Real Application Clusters[RAC]により冗長化)で運用され、DWHは基幹とは別のサーバ上で動作する他社のデータベース製品を利用していた。
「当社規模のシステムとしてはスタンダードな構成」だと持田氏は話すが、2015年にこれらのシステム環境の継続利用を不可能にする事態が生じる。
「Oracle Database 10gのサポート終了により、アップグレードを検討しなければならなくなりました。また、Windows Server 2003のサポート終了に伴い他社データベース製品のバージョンアップが必要となりましたが、他社データベース製品のライセンス料が高騰し、こちらも別製品への移行を検討せざるを得なくなりました」(持田氏)
ザ・プロアクティブカンパニーにとってはダブルパンチともいえる事態だが、持田氏らはこの機会に、従来のシステム環境が抱えていたさまざまな課題の解消を図ることを決める。それらの課題とは、次のようなものだ。
「【1】DWHへのデータロードに伴う負担の軽減」の背景について、持田氏は次のように話す。
「DWHには、当社発足時からの全データをETLツールによる夜間バッチ処理で毎日フルロードして利用していました。事業の拡大によってお客さまの数が増えるのに伴い、このバッチ処理で遅延やエラーが生じるようになっていたのです」
遅延やエラーが生じる理由はさまざまだが、根本的な原因は24時間/365日稼働している基幹データベースからデータを抽出していたことにあった。バッチ処理の実行中に通販/販売サイトへのアクセスが集中すると基幹データベースに大きな負荷がかかり、データロードが失敗するといった事態が頻発していたのだ。
「夜間のデータロードに失敗した際には翌日の日中にやり直すことになりますが、データをフルロードしていたのでは夜までかかってしまいます。そこで、データを絞り込むために『本日の業務に必要なデータだけをロードするので、該当する方は申し出てください』と業務部門に呼び掛けると、皆が一斉に手を挙げるのです(笑)。仕方がないので私たちシステム部員が手作業でSQLを発行し、半日以上をかけてデータ抽出を行うようなこともありました」(持田氏)
「【2】データベース基盤の性能と安定性の向上」も深刻な課題だった。直販をメインとするザ・プロアクティブカンパニーのビジネスにおいて、通販/販売サイトは生命線ともいえる販売チャネルだ。しかし、これもビジネスの拡大に伴い、性能や安定性などに深刻な問題が生じていた。
「以前の環境では動作が不安定になる事態が度々生じていました。リソースを増強してもハングアップしてしまうことがあり、それを避けるために運用担当者が常に稼働状況を監視していたのです。調査しても原因が分からないため、半年に一度再起動するという運用を行っていましたが、本来ならば24時間365日稼働すべきシステムを止めるのは簡単ではありません。通販/販売サイトへのアクセスがいつ急増するかが分からない状況でのスケジュール調整は困難を極め、『この期間はアクセスが増えないようにしてください』と業務部門にお願いするしかありませんでした」(持田氏)
データベース基盤の性能が不安定なことについては、通販/販売サイトやコールセンターの担当者からも度々指摘を受けていた。
例えば、顧客が通販/販売サイトで自身の会員情報を照会しようとした際、情報がなかなか表示されないと苦情を受けることがあったという。
また、コールセンターやカスタマーサービスセンターのオペレーターが顧客対応時にデータベースを参照した際、通常なら5秒程度で返るレスポンスが突然30秒近くにまで低下することがあった。レスポンスが安定していればオペレーターは常に同じテンポでスムーズに顧客に対応できるが、レスポンスが不安定になると対応のテンポが乱れ、顧客に不快感を与えてしまう。限られた数のオペレーターと電話回線を効率的に利用するためにも、データベース基盤のレスポンスをいかに安定させるかは大きな課題だったのだ。
このようにデータベース基盤が抱える問題が業務にもさまざまな支障を来していたザ・プロアクティブカンパニーは、ベンダー各社に後継基盤の提案を依頼。それに対し、多くのベンダーは従来と同様に基幹データベースとDWHを分けたシステム構成を提案するが、その中で異彩を放ったのがアシストの提案であった。
「Oracle Database専用のデータベースアプライアンスであるOracle Database Appliance X5-2の上でOracle Database 12c Enterprise Editionを利用し、12cのオプションであるインメモリデータベース『Oracle Database In-Memory』などを活用して基幹データベースとDWHを1つに統合するというプランでした」(持田氏)
それまでOracle Database Applianceの存在を知らなかった持田氏にとって、この提案は突拍子のないものと映った。しかし、アシストの説明を聞き、Engineered Systemsとして作られたOracle Database Applianceと、Oracle Database In-Memoryやデータベースパーティショニング(Oracle Partitioning)、パラレル処理といったOracle Database Enterprise Editionならではのオプションに強い魅力を感じるようになったという。基幹データベースとDWHを統合できれば、システム部を苦しめていたDWHへのデータロードが不要となるだけでなく、いつでも最新のデータを活用したリアルタイム経営を実践できる。
アシストの提案はコスト面でも優れていた。データベース基盤とDWHを別々に購入して統合するという構成で他のベンダーから見積もりを取ったところ、アシストが提案した倍の金額を提示されたという。Enterprise Editionへのアップグレードに伴うライセンス料の問題については、利用コア数分だけの課金でスモールスタートできるOracle Database Applianceのライセンス方式「Capacity-on-Demand」によって低く抑えられる上に、サーバ台数の削減によってファシリティや運用管理のコストを削減できる。加えて、ハードウェアとソフトウェアが事前構成済みのOracle Database Applianceであれば、導入も短期間で行えるだろう。
だが、そもそも長年にわたって異なる専用環境で運用してきた基幹データベースとDWHを統合しても問題はないのか? これについては社内でも異論が出たが、アシストの「ザ・プロアクティブカンパニーのシステム規模なら心配なし」との言葉を信じ、他社の導入事例なども参考に入念な検証を行う。その結果、2016年8月にOracle Database Applianceの採用を決め、2016年10月から導入プロジェクトをスタートした。
持田氏らの期待どおり、Oracle Database Applianceの導入はスムーズに進んだ。実機がデータセンターに搬入された10月末に移行作業を開始し、約1カ月半後の12月半ばに新システムをカットオーバーする。この移行により、ザ・プロアクティブカンパニーの基幹データベースとDWHは1台のOracle Database Appliance X5-2上に統合された。
それから約1年半の運用を経る中で、ザ・プロアクティブカンパニーはさまざまなメリットを実感してきた。持田氏は、それらのメリットを「システム効果」「コスト効果」「業務効果」という3つの観点で説明する。
システム効果に関してまず挙げられるのが、新データベース基盤を短期間で円滑に構築できたことだ。
「Oracle Database Applianceは自前でハードウェアやソフトウェアを組み合わせて構築する煩わしさがなく、システム構成もすっきりします。難易度の高いOracle RAC環境の設計や構築も不要でした。プロジェクトの計画も立てやすかったし、ノントラブルで進められました」(持田氏)
これらとアシスト独自の強力な支援体制、手厚いサポートが、わずか1カ月半で基幹データベースとDWHを統合できた大きな理由だという。
安心して利用できる安定したデータベース基盤を実現できたことも、システム面の重要な効果だ。以前の環境は半年に一度の再起動が必要だったが、Oracle Database Applianceへの移行後は一度も再起動していない。
「これほど安定しているのは、オラクル製品が丸ごと最適化されているからでしょう。アシストからは『大丈夫だ』と言われていましたが、本当にその通りでした。今は監視する意味がないのではないかと思うくらい安定していますし、トラブルも一度もありません。これはすごいことだと思います」(持田氏)
Oracle Database ApplianceとOracle Databaseに関して、アシストによるワンストップサポート体制が実現されたことも大きな利点である。アシストは、ザ・プロアクティブカンパニーがシステム統合運用管理に使うJP1のサポートも行っており、データベース基盤と運用基盤に関するサポートが全てアシストに一本化されている。
なおザ・プロアクティブカンパニーは、Oracle Database Applianceのバックアップ環境として「Oracle Database Cloud Service」も導入している。Oracle Databaseと親和性の高いクラウドサービスによって容易にバックアップ環境を整えられたこともシステム面の成果の一つといえよう。
さらに、持田氏は「コスト面の効果も絶大だ」と続ける。
「基幹データベースとDWHを統合し、以前は7台だったサーバを1台に削減しました。これにより、データセンターの電力使用量やラックのレンタル料が大きく減りました。Capacity-On-Demandにより、Oracle Databaseのライセンス料は他社製品で同等構成を組んだ場合と比べて半額程度で済んでいます。これらのメリットにより、以前の環境と比較してトータルで約50%ものコスト削減効果を得ています」(持田氏)
持田氏らにとってそれ以上にうれしいのは、Oracle Database Applianceが業務面でもたらした効果かもしれない。
「以前はアクセスが集中すると不安定になっていたレスポンスが安定し、システムダウンも起きなくなったことで、お客さまをお待たせしたり、業務が滞ったりすることが一切なくなりました」(持田氏)
カスタマーサービスセンターでキャンセルを抑止するための対応がスムーズに行えるようになったことも大きなメリットだという。
「当社の商品は、実際に使用して効果にご不満があれば60日間まで返金を保証しています。ただ、実際には数日使用しただけで効果がないと諦めてしまう方が大変多いのです。そうしたお客さまからお問い合わせいただいた際には、オペレーターが商品の特性を改めてご説明し、しっかりと60日間使ってみてからご判断いただくようお勧めしています」(持田氏)
その際には、顧客が過去にどのような商品を購入し、どういった悩みを抱えているかを顧客データベースの記録によって把握し、それに応じて的確な説明を行うが、以前のシステム環境ではレスポンスが不安定となって必要な情報を速やかに参照できず、しびれを切らした顧客にキャンセル(返品)を告げられてしまうこともあった。
「期待した効果が得られないとお問い合わせを頂いたのに、その対応で不必要にお待たせしたのではお客さまをさらに失望させてしまいますし、そうなるとオペレーターも自信を持って『60日間お試しください』と言いづらくなってしまいます。システムが原因でこうした状況が生じていたのは私たちとしても不本意でしたが、今は常に安定して早いレスポンスが得られるため、効果が得られるはずのお客さまにもしっかりとご説明できるようになりました」(持田氏)
レスポンスが安定したことで、放棄呼※が減ったことも大きな利点だ。
「人気TV番組の中で当社のインフォマーシャルが放映されると、その直後にたくさんのお問い合わせを頂きます。以前のシステムではそうしたピーク時にデータベースのレスポンスが不安定になり、問い合わせ1件当たりの対応に時間がかかって放棄呼がたくさん出てしまうことがありました。レスポンスの安定によってこれを大きく減らせたことも、業務面の重要な効果です」(持田氏)
※ 呼び出しへの対応が遅れ、待ち切れずに切れてしまう電話のこと
業務部門が最新のデータをリアルタイムに活用できるようになったことも大きな成果だ。以前はDWHへのデータロード時間を確保するために、前日24時までのデータしか提供しておらず、それ以降のデータは参照も帳票出力もできなかった。現在は見たいデータをいつでもリアルタイムに参照し、必要な帳票を出力できるようになっている。
これらの成果により、業務部門からはOracle Database Applianceの導入を高く評価されていると持田氏は明かす。
「これまで、システムは不足なく動くのが当たり前で、何か問題が起きればお叱りを受けるのが常でした。ところが、Oracle Database Applianceの導入後、『レスポンスが安定して助かっている』と各部門から褒められたのです。この仕事で業務部門からこんな言葉をもらうのは初めてのことで、Oracleには本当に感謝しています」(持田氏)
Oracle Database Applianceは持田氏らシステム部門の業務にも大きな恩恵をもたらしている。
「以前はバッチ処理の時間を確保するための調整やデータロードが失敗した際の対応で常に奔走していましたが、今はバッチ処理そのものがなくなり、それらの負担が一切なくなりました」(持田氏)
以上、ザ・プロアクティブカンパニーがOracle Database ApplianceとOracle Database 12cによる、基幹データベースとDWHの統合によって得たメリットを紹介した。業務の足かせとなっていたデータベース基盤を、今後の成長を支える基幹インフラとして大きく刷新した同社。より美しく、健康でありたいと望む顧客に最適な商品を提供する上で、この新データベース基盤が今後も大きな役割を果たしていくことになる。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2018年9月25日
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