聞いていた話と違います!:退職活動やってはいけないこんなこと(5)(2/2 ページ)
転職を志し、選考過程を経て内定を獲得した後は、現在勤めている会社を円満に退職しなければならない。それが「退職活動」だ。本連載では、毎回退職活動にまつわる危険な事例を取り上げて解説する。連載内容を活用してトラブルを回避し、円満退社を目指してほしい。転職に対する不安を少しでも減らすことができればと思う。
リスクだらけの転職活動
以上のケースでは何が悪かったのか、検証してみましょう。
まずは転職先を決めるのを急ぎすぎたことです。一般に、転職活動においては後工程になればなるほど慎重な判断が求められます。当たり前のことですが、書類で応募するときよりも入社意思を表示するときの方が多く悩まなければなりません。しかし、柏原さんは説得されてその場で決めてしまいました。
次に良くなかったのは、メインテーマについて確認が足りなかったことです。転職先から情報を取得するのは意外と難しいものです。どんなにヒアリングしても、入社後にギャップを感じないことはありません。大事なのはその転職で何を実現させたいのか、本当に実現させられるのかをしっかりと確認することです。
柏原さんのメインテーマは生産管理システムのスペシャリストになることなので、仕事内容、配属先などは執拗(しつよう)に確認するべきでした。相手が熱意たっぷりに説得してきてもです。
サインするのちょっと待った!
このように、転職活動にはリスクが付き物です。そこで入社承諾書にサインする前に転職先企業に聞いておきたいことをいくつか挙げておきましょう。
1.仕事内容
当たり前のことですが、仕事内容はしっかりと確認しましょう。転職先でスキルダウンしては困りますし、過剰な期待も避けるべきです。仕事内容重視で転職をするならなおさらです。
2.報酬面
会社が従業員に支払う賃金の仕組みは近年多種多様になっており、十分な確認と知識が必要です。基本的なことでいえば残業代はどのようになっているのか、残業代以外の手当てはあるのか、退職金はあるのかなどです。
3.キャリアパス
キャリアパスについて質問するのも重要です。その会社をキャリア形成の一通過点と位置付けているのであればまだしも、長く勤めることを前提にしているのであれば必須です。
4.社員等級と評価制度
キャリアパスと似ていますが、どこの会社も従業員に等級を設けているはずです。自分にオファーされたグレードが全社的にはどのような位置付けなのかに加え、できればグレードごとの平均年齢と人数構成、昇格のためのスキルセットなどは聞いておいた方がよいでしょう。最初のオファー金額が高くてもなかなか年収が上がらない会社もあります。
5.中途採用の社員が活躍しているか
大手企業に多いのですが、新卒入社と中途採用では報酬や出世の面で差別されてしまうこともあります。中途採用者の数や、上位の役職に就いている人がいるかどうかは聞いておいた方がよいかと思います。
6.会社業績
株式を上場している会社であればIR情報で確認できますが、情報を公開していない企業であれば差し支えない範囲で聞いておいた方がよいでしょう。質問したことによって愚かな転職をしなくて済んだケースは多々あります。
ギャップのない転職をするために
くどいようですが、転職にはリスクが付き物です。多かれ少なかれ入社前と入社後ではギャップがあるはずです。
大事なのは、転職するかどうかを左右する重要な事柄をよく知っておくことです。100%の会社はありません。良いことも悪いことも知ったうえでないと賢明な判断はできませんし、転職しても長く続かないものです。どんなに優秀な人でも、ここで気を抜くと本来獲得できたはずのものを得られないことになります。せっかく一大決心をして転職活動を始めたのですから、最後で手を緩めて後悔しないようにしてください。
昨今、好景気からか求人は多く、それに伴い転職希望者も増加の一途をたどっています。各種メディアには転職崇拝論とも取れる記事があふれ、転職活動はキャリア形成の1つの方法として市民権を得た感があります。
が、その転職ちょっと待って! 意外と失敗する人が多い転職活動。もう少し慎重になってみませんか。心配な方は転職エージェントにご相談ください。皆さんの大事なキャリア形成のために転職活動を支援する、それがわれわれ人材紹介会社の使命ですので。
著者紹介
山口孝之
https://www.atmarkit.co.jp/job/ja/ad/ad1.html#2
千葉県出身。大学卒業後、建設会社にて人事、経理などの管理業務を経験。その後ITエンジニアに特化したスカウト型の人材紹介会社に転職し、キャリアアドバイザー業に従事する。その後アデコに参画。キャリアアドバイザーとしては一貫してIT業界を担当。ギャップのない転職を支援するための情報収集能力、転職者側と採用企業側の両方の目線で行うカウンセリングには定評があるという。
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