初めての後輩がやってきた――先輩デビューの春:特集:「ハチロク世代」がやってくる(3)(2/2 ページ)
かつて新人だったエンジニアも、いずれは後輩を迎え入れる。初めての後輩指導に四苦八苦した経験は、彼女に何をもたらしたのか。連載「システム開発プロジェクトの現場から」で人気の筆者に、あらためて「先輩デビューの春」を振り返ってもらった。
一大事を乗り越えて
一連の騒動について自分自身も反省し、先輩にも多くのご指導をいただきました。その結果、SVとしての反省点は、
- 自分の責任下の人間・事象であるにもかかわらず、後輩を責めたこと
(事象の解決に取り組むべきで、わたしの方が反省すべきでした) - 責任を投げ出したこと
の2つであると考えました。
また、このことを通じて、自分のやり方が彼らに確かに伝わったと実感できたとき(例えば、書類作成のスタイルが似ているといわれたとき)や、彼らの成長を感じたときに、上司や先輩としてやりがいが感じられるようになりました。
わたしの視点、後輩の視点
自分はこうした考え方を得られたことだけで、SVをした甲斐があった、十分な収穫を得られたと思っていました。
しかし、当時を思い返していると、より多角的な視点で当時を見つめてみたいと思うようになりました。
となれば、やっぱり一番聞きたいのは当事者である後輩の意見。聞いてみると、後輩は快く回答をくれました。
「もっとコミュニケーションを取ればよかった」と。
確かに、と、しんみり思いました。
当時は、初対面にもかかわらず距離感の近い後輩に戸惑い、先輩という立ち位置を保とうと、余計な話はあえてしないようにしていました。
実際、年齢だってそう違わない。ない威厳を保つには、距離感を感じさせねば、という変な思い込みがあったとも思います。コミュニケーションという点では、反省が多いな、と。
そして、なにより思ったのは、「わたしの反省とは違う視点だ!」ということ。
- わたし:責任をしっかり取ること→結果
- 後輩:コミュニケーションをしっかり取ること→過程
やっぱり仕事はみんなでやるから面白い! と思いました。こういう新しい視点を身に付けることができるのも、後輩がいてこそです。
せっかくなので、後輩の視点を借りて、SV就任数週間をあらためて振り返ると……。
- 就任1週間目:携帯メールを使ってはいけない理由を示せず、後輩は納得感が得られていない
- 就任2週間目:後輩にその手順を選んだプロセスを聞いていない
- 就任数週間後:“いい訳”を聞いていれば、平和的解決もあり得た
いずれもコミュニケーション不足によるもの、という指摘ができる。結果(責任を取ること)も大切だけれど、その結果を生み出す過程(コミュニケーション)も大切。そう、後輩に教えてもらいました。
「浮いてる新人」も、いまでは立派な先輩
わたし自身、入社して4年たったいまでも、年次の離れた先輩方から、
「理解不能なヤツ」
「自信だけはある世代」
などといわれます。新人時代なんて、さぞかし浮いた存在だっただろうと思います。実際、自分は浮いているんじゃないかな、と悩んだ時期もあります。
でもいま、同じ悩みを持ってる人がいたら、
「新人時代なんて、浮いていても、浮いていなくても、どっちでもいいんだよね」
と伝えます。
それは、わたしから見て浮いていた後輩も、浮いていなかった後輩も、いまでは立派な先輩になったからです。
新しいスタイルをもたらす者
新人は「新しいスタイルの塊」だと思います。
それはハチロク世代だから、といった特定世代のことではなく、「自分から見た後輩たち」という、相対的な世代についていえることだと思います。
最近、同期と飲むと、それぞれの部下について話が及んだりします。そうすると、大体「常識って何だろうねー」「彼らの言動って理解できないよね」といった“昔の自分棚上げ状態”の口調になります(常識=スタイルと読み替えてください)。
そんなとき、お酒でぼんやりしつつも、「常識外れなのは後輩か自分か」ということではなく、「常識自体がどんどん変化してるよね」と思います。
新人は常に、新しい常識で年長者に刺激を与えてくれる存在なんじゃないかな、と思います。そして、新人にとってもわたしたちは刺激的な存在なはずだ、と思います。
毎年毎年、新人がやってきて、職場は困惑しながらも彼らのスタイルと対峙(たいじ)し、お互いに何かしら影響を受けて、それがまた新しいスタイルに変化していく。
今年もやってくる新人たち。さて、今年はどんなスタイルがやってくるか。手ごわいかもしれないけれど、彼らと出会うのが楽しみです。
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