今年も新人たちがやってくる。@IT自分戦略研究所では「『ハチロク世代』がやってくる」と題して、どんな新人たちがやってくるのか、どう付き合っていけばいいのかなど、彼らに関する特集を行う。第1回となる本稿では、彼らがどのような世代であるのかをデータから探る。
経済環境は相変わらず冷え切ったままだが、いつまでも暗い顔をしているわけにはいかない。4月は出会いの季節だ。そう、今年もフレッシュな新人たちがやってくる。
2009年度の新人たちはどんな世代なのか。どんな環境で生まれ育ち、どのような志向を持っているのか。特集「『ハチロク世代』がやってくる」第1回では、各種データから彼らの「リアル」に迫ることとしよう。
メンターを任命された諸先輩方や、新人がチームに入ってくるリーダーの皆さんにとって、参考となれば幸いである。
四年制大学をストレートで卒業し、そのまま2009年度に新卒入社してくる世代は「1986年生まれ」である。今回の特集における「新人」とは、この「1986年生まれ」前後の世代を指す。
1986年といえば男女雇用機会均等法が施行され、ドラゴンクエストが発売され、フライデー襲撃事件が起きた年である。IT業界に関していえば、マイクロソフトの日本法人が設立され、東芝が世界初のラップトップパソコン「J-3100」を発売した年でもある。
彼らは1993年に小学校に入学した。1993年といえば、後のインターネットブームの立役者となるWebブラウザ「NCSA Mosaic」が公開された年。1995年(彼らは小学3年生)には「Windows 95」が発売され、翌年には「Yahoo! Japan」がスタートする。彼らは、小学生のときにインターネットが普及し始めた世代なのである。
1999年、中学校に入学。時を同じくしてNTTドコモの「iモード」がスタートし、携帯電話の文化が本格的に花開く。全員がそうというわけではないだろうが、あなたの目の前にいる新人は「ケータイを持った中学生」だった可能性があるわけだ。彼らにとって「メール」とは携帯電話のメールのことである。
彼らの中学〜高校時代は「インターネット黎明期」といえるだろう。2ちゃんねる、Google、Amazon、Winnyなど、インターネットの清濁併せのむ文化に「ハマった」者たちをこの世代は内包する(もちろん、この時代にインターネットにハマっているのは、相当「濃い」部類ではあるだろうが)。
彼らが大学生になる(2005年以降)と、いわゆる「Web 2.0」の時代を迎える。「mixi」や「GREE」といったSNS、「YouTube」などの動画共有サイトなどを、大学生である彼らは享受してきたことになる。
以上のことから想像できるかもしれないが、彼らにとって「IT」とは「インターネット」を指すと考えてよい。「IT企業といえば?」と訪ねてみれば、ヤフーやグーグル、ミクシィなどのWebサービス企業が多く挙がるだろう。彼らは「個人向けサービスとしてのIT」の歴史とともに歩んできた世代なのである。
ケータイやWebサービスのある生活が当たり前。それが今年の新人たちである。
ちなみに、近年の若者を揶揄(やゆ)する目的で「ゆとり世代」などと呼ぶことがあるが、1986年生まれは「ゆとり世代」ではないと考えてよい。どの世代からを「ゆとり世代」と呼ぶかは議論が分かれるが、2003年度から実施された高等学校の新学習指導要領に基づいた教育を受けた世代をそう呼ぶとすれば、それは1987年生まれからである。そもそも、あまり褒められた言葉ではないので、使用は控えるのが大人というものであろう。
続いて、アンケート調査から2009年度の新人たちの姿に迫ろう。
明治安田生命が毎年実施している「新入社員アンケート調査」によれば、彼らの「理想の上司」は、男性上司の1位が「イチロー」、女性上司の1位「真矢みき」だった(調査期間:2009年2月23日〜3月1日。有効回答者数:994人)。
就職先を選んだ理由については、44.7%が「会社の安定性」と回答。2008年度新卒では1位だった「仕事のやりがい」を上回った。
また、将来の展望については、全体の49.6%が「一生同じ会社に勤めようと思う」と回答している。内定後、一気に経済環境が悪化した世代であるだけに、「安定志向」の度合いが高まっているのは納得できる結果である。「最近の若者はすぐ会社を辞める」と悩む企業上層部にとっては、うれしい傾向かもしれない(もちろん、本当に「3年で辞める若者」が増えているかどうかは別の議論である)。
一人前になるには何年かかると思うか、という質問の回答は興味深い。「4〜5年」が最も多く、平均は約7.8年。「10年は泥のように働け」と新人にいうべきかは分からないが、彼らは「一人前になるには、石の上にも8年」と考えているようだ。
こちらも毎年おなじみ、財団法人社会経済生産性本部による「新入社員タイプの命名」。2009年度の新入社員のタイプは「エコバッグ型」だそうだ。
その心は、
環境問題(エコ)に関心が強く、節約志向(エコ)で無駄を嫌う傾向があり、折り目正しい。小さくたためて便利だが、使うときには大きく広げる(育成する)必要がある。酷使すると長持ちしない(早期離職)が、意外に耐久性に優れた面もあり、活用次第で有用となるだろう。
とのこと。ちなみに2008年度は「カーリング型」、2007年度は「デイトレーダー型」、2006年度は「ブログ型」である。
なお、ITmedia オルタナティブ・ブログでは「エコバッグ型」の発表前に新入社員タイプの命名予想企画を行っていたので、そちらも併せて見てみよう。企画発案者の吉川日出行氏は「タッチパネル式携帯型」と命名している。ほかにも「netbook型」「クラウド型」「5万円パソコン型」「携帯ゲーム機型」「アウトレット型」「アイススケート型」「スマートフォン型」「クーリングオフ付き多機能炊飯器型」「VOCALOID型」「野生の王国型」「カツ・コバヤシ型」「ちょっと上のロスジェネ見つつ不況の嵐にあえぐ世知辛い社会に自衛を講じるCOOLな(冷めた)携帯SNS型」と、実に多種多様な命名案が挙がった。
今年の新人たちがどのような時代に生まれ育ち、どのようなことを考えているのか、データからそのエッセンスを感じ取っていただけただろうか。
もちろん、こうした表面的なデータや調査だけで分かった気になってはいけない。最終的には、新人1人ひとりと接し、個々人のパーソナリティを見抜くことが重要となる。今回の内容は世代全体のイメージをつかむためのエッセンス程度に考えていただければ幸いである。
特集「『ハチロク世代』がやってくる」は、本日から4月17日まで、毎日更新でお届けする。ラインアップは次のとおり。
本特集が、新人を迎え入れるあなたにとって価値のある内容となれば幸いだ。
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