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日本伝統の島型オフィスは本当に正しいのか特集:ITエンジニアを変えるオフィス(5)(2/3 ページ)

あなたのオフィスに「島」はあるだろうか。日本のオフィスのほとんどは「島型」である。伝統的なこの形式は、果たしてナレッジワーカーにとって理想的といえるのだろうか。島型オフィスが普及した背景と、現代における「変形島型オフィス」の可能性を探る。

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島型オフィスの日米比較

 島型オフィスの日米比較を試みよう。図1に示す。

図1 島型オフィスの日米比較
図1 島型オフィスの日米比較

 両者の比較をすると、まず日本の場合は上下関係が明確であるが、アメリカ型だとはっきりしない。というよりは、どこに座るのか、かなり自由度があるといってよい。

 例を示す。写真4は、2人で打ち合わせをしているシーンである。

写真4 2人で打ち合わせ。視線を合わせての仕事である
写真4 2人で打ち合わせ。視線を合わせての仕事である

 写真5は、個別に仕事に専念しているシーンである。視線は外す。

写真5 個別に仕事。視線は外す
写真5 個別に仕事。視線は外す

 写真6は、1つのデスクだけ切り離して、誰からも干渉されずに2人だけで相談しているシーンである。

写真6 デスクは自在に模様替え可能
写真6 デスクは自在に模様替え可能

 さらに、写真7を見てもらいたい。

写真7 異なるアイデアのレイアウトを1つのオフィスに混在させるのも面白い
写真7 異なるアイデアのレイアウトを1つのオフィスに混在させるのも面白い

 これは、島型に背を向ける状態にデスクが並んでいる。このように、異なるアイデアのレイアウトを1つのオフィスに混在させるのも面白い。

 現代のナレッジワーカーにとって、日本の島型オフィスは完ぺきとはいえない。より理想的な「変形島型」とは、ここまで紹介したような形式である。アメリカの島型はコンパクトで、しかも1つ1つが切り離せる点で優れている。

曲線の美学

 上記のいくつかの写真で見られる「曲線」についても触れておきたい。ここで述べたアメリカの島型はスチールケースの製品である。筆者は長野県の実験場にハーマンミラーのオフィスシステム“リゾルブ”を運んでもらい、これもテストした。写真8がそれである。

写真8 曲線のデスクとキャノピーを多用したファンタジックなオフィス(野呂研究所/ハーマンミラー社製)
写真8 曲線のデスクとキャノピーを多用したファンタジックなオフィス(野呂研究所/ハーマンミラー社製)

 一時期、筆者はこのオフィスで、ダイムラー・クライスラーのメルセデス・ベンツの運転席まわりのレイアウトやJALのシート、ボールペンスパイラルのデザインに従事していた。このチャーミングなオフィスの恩恵はかなりあったし、こういう環境で仕事ができたことを幸せだと思っている。こういった幸せを感じさせるオフィスは素晴らしい。これは約10年前の製品だが、オフィスの古今の傑作だ。ここでも曲線が多用されている。

 このアメリカ式の曲線は、どこにいすを置けばよいかと迷うことができる。換言すれば、1人で使ってもよいし、多人数でも使える。また、曲線は座る人の気持ちを慰めてくれる。

 視線のオンオフについても、このシステムは心憎い配慮がなされている。写真9を見てほしい。この写真は座る位置の視線から撮影されている。パーティションにすき間があるが、これを使って対向デスクの人と話ができる仕掛けである。必要に応じてこのパーティションを外すと、その場で会議ができてしまう。

写真9 視線のオンオフが可能なパーティション(ハーマンミラー社製)
写真9 視線のオンオフが可能なパーティション(ハーマンミラー社製)

 人の気配は感じたい。人とかかわりたい。でもわずらわしいのはイヤだ。相反する気持ちに折り合いをつけるオフィスへと、あなたの島型を変えてみてはどうだろうか。アメリカの話ばかりになってしまったので、最後にコラムとして日本の島型オフィスに対する提案を付記する。

(注)実験の内容など、詳しくは拙著『図説エルゴノミクス入門』(培風館、2003)の13章と14章に譲る


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