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物理データモデル作成のポイントは“森→木→森”ゼロからのデータモデリング入門(7)(3/3 ページ)

前回まで、システム企画段階における「概念データモデル」、基本設計段階における「論理データモデル」についてお話をしてきました。この2つの共通点は、企業のビジネス活動をデータモデルで可視化することでした。今回は、詳細設計フェイズにおける「物理データモデル」を解説します。

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データベース実装準備

 さて、いよいよ作成した物理データモデルをRDBMSへ実装します。実装を行うためには「領域」、「データベースの構成」、「障害対策」について決定する必要があります。ここでは、物理データモデルで設計された内容をRDBMS特有の機能やパラメータを使って設定します。

1.領域

 物理データモデリングで設計した「データ領域」をどのディスクに配置するのかについて決定します。データベースの性能を重視する場合は、ディスクへのI/Oを分散させるために領域の分散を検討しますが、安定性を重視する場合は冗長化の検討をします。性能と安定性はトレードオフの関係にあるので、システム要件を考慮しディスク領域への配置を検討します。

2.データベースの構成

 データベース名やブロックサイズなど、データベース作成時に最低限必要となるパラメータ値やメモリ、通信、固有機能のためのパラメータ値についても定義します。

3.障害対策

 システム要件を満たすための、データベース側の障害対策方針を決定し、バックアップ/リストア方式を検討します。その結果、障害対策用のディスク容量を見積もることも可能になります。

物理データモデリングで重要なこと

 本来、企業で利用しているデータベースの構造は、ビジネス活動と一致していなければなりません。そのために、この連載でお伝えしてきた概念データモデリングや論理データモデリングの段階で、ビジネス活動とデータの流れを一致させ、将来的な変化にもすぐに対応できるデータモデルをしっかり設計します。

 レスポンスや運用面で課題があり、使えないのでは本末転倒になってしまいます。そこで、この物理データモデリングのフェイズで調整するのです。物理データモデリングとは、単純に論理データモデルをRDBMSへ実装することではなく、ビジネスを可視化したデータモデルから、システムのレスポンス、運用を考慮したデータモデルへと変更することなのです。

 こうして構築されたRDBMSを運用/保守していく中で、システム変更や拡張要求により、データベース構造の変更まで影響が及ぶことがあります。この要求レベルを満たしながら、最適な解決策を見つけるうえでも、物理データモデリングで調査/分析フェイズを設けておくことは重要な意味をなします。

 このフェイズを設けることにより、物理データモデリングでなぜこの構造にしたのか、構築時と何が異なるのかを、迅速かつ的確に把握できるからです。

 品質の高いデータモデルを維持していくためには、こうした一連の作業の成果物(概念モデル、論理モデル、部物理モデル、CRUD図など)を一元的に管理し、変更時に反映していく運用ライフサイクルが必要となります。

●図3 情報管理
●図3 情報管理

時代が必要としている“データモデリング技法”

 ここで少し現在の状況に目を向けて、データモデリングについて考えてみましょう。いま、100年に1度の大不況といわれ、各社ともさまざまなコスト削減に取り組んでいる中、システム開発/運用において、特に外部委託依存度の高いシステムに関し内製化の検討が行われています。

 では、何を内製化して何を外部委託すればいいのでしょう。さまざまな事情にもよるので一概にはいえませんが、それは「システムの内製化の効果をどこに置くか」によります。「コスト削減」、「社員スキル」、「システムの可視化」、「ベンダとの関係強化」、「コミュニケーション向上」、「システム品質の向上」など、内製化によりいくつかの効果が期待されています。

 こうした効果を得るために、データモデリング技法の習得が役に立つのでしょうか。第4回「データベース設計はいつ、何をポイントに行うか」でもお伝えしたように、少なくともシステム企画/開発フェイズにおいて、データモデリング技法は有用なものです。概念データモデリングや論理データモデリングでは、ビジネス活動とデータモデルを一致させることにより、ユーザー部門とのコミュニケーション向上を図ることができ、ハイレベルエンティティとシステムのCRUD図(第5回「システム企画に役立つ概念データモデル作成の基本」参照)によりシステムの可視化も行えます。

 また、今回ご紹介した物理データモデリングにより、ベンダとの関係強化を図ることができます。処理効率設計を実施することにより、どのような手順を踏んでデータベース構造を検証、変更したかをベンダに問うことができるようになり、システム品質の向上につなげることができるのです。物理データモデリングでは、より効果的な施策を実施するために、RDBMS機能やくせ(特性)に関する知識が必要です。しかし、RDBMSのバージョンにより機能拡張されていたり仕様変更がされたりと、情報システム部の方が理解度を深めるには、多大な労力が必要となるため、逆にこの部分を外部委託することによって、外部ベンダとのすみ分けが明確になります。

 データモデリングに限らず、内製化に向けての目的を明確にして、こうした技法を1つ1つ身につけることで、目指すべき情報システム部の姿へ近づくことが可能となります。

 ここまでデータモデルの使い方、3つのデータモデリングの概略についてお話をしてきました。次回からは論理データモデリング、物理データモデリングの具体的な進め方についてお話しします。


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