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» 2011年07月12日 00時00分 公開

困った“ダメPM”3パターンとその対処法新任PMがついやってしまうNG集(5)(1/2 ページ)

1人で仕事をしているプログラマ時代は、ばりばり仕事がこなせたのに、PMになった途端に仕事がうまく進まない! そんな新任PMの悩みを解決するTipsを紹介します。

[水口和彦,ビズアーク]

 新任PM向けに書いた本連載、Twitterやブックマークで多くの反響をいただきました。ありがとうございます。

 反響の中には、管理する側のPMの意見だけでなく、管理される側の意見もいろいろありました。特に「うちのPMをどうにかしてほしい」という意見、つまり“ダメPM”に困っている人が多かったことが印象的でした。

 そこで、今回は番外編として、ダメPMとうまく付き合い、仕事を進めていくための方法について紹介します。

「うちのダメPMを、どうにかしていただきたい」

 「メンバーがなかなか思うように動いてくれない」とPMは嘆きます。しかしその逆、「うちのPMがちゃんとしてなくて困る」と嘆くメンバーが少なくないことも、また事実。

 そういう「困ったPM」、あえて厳しく言うなら「ダメPM」と一緒に仕事をしなければいけないメンバーは大変でしょう。そして、ダメPMほど、自ら勉強したり、自分のやり方のまずさを反省したりすることはあまりないものです。改善が見られないPMにメンバーのイライラは募り、とはいえ立場の関係上なかなか言い出しにくい……そんなストレスフルな状況では、良い開発ができません。

 必ずしもすべてのPMが「良いPM」とは限らない。残念ながらこれは事実です。PMだけでなく、「管理職」としてのマネージャにも同じことが言えます。

 よくある一例として、チームの「プレイヤー(プログラマなど)」としては優秀だったはずの人が、PMなどの「マネージャ」の立場になると途端にダメになってしまうという事象があります。

 そもそも、プレイヤーとマネージャに求められる能力はそれぞれまったく違います。プレイヤーとしての実績を評価してマネージャに昇進させたからといって、必ずしもうまくいくとは限りません。

 この現象は「ピーターの法則」という名前で知られています。スポーツの世界で「名選手が名監督(名コーチ)になるとは限らない」と言われるのも、これと同じ理屈です。ただし、プロスポーツの世界ならダメ監督はそのうち解任されますが、会社における「マネージャ」はなかなか解任されません(これは、日本企業の序列制度とも関係しています)。困ったものです。

PMに対する「あるべき論」はほどほどにしましょう

 ただし、プレイヤーとしての立場からマネージャを見ると、マネージャに対して求めるものが過大になりやすいという傾向があることも否定できません。

  • マネージャたるもの、常にチーム全体に万遍なく目を配るべき
  • マネージャたるもの、チームが動きやすい環境を整えるべき
  • マネージャたるもの、常にメンバーからの相談を受けられるよう配慮すべき

 マネージャは、こういった「あるべき論」を前提に評価されやすい立場なのです。

 人は誰でも、意識する、しないに関わらず「○○はかくあるべき」という「あるべき論」を持っています。「父親はこうあるべき」「母親はこうあるべき」「男たるもの、こうあるべき」というイメージも、その人なりの「あるべき論」です。

 この「あるべき論」が現実の姿とずれていると、悩みやストレスにつながる場合があります。例えば、部下の立場にある人が「うちの上司は、私の仕事ぶりをちゃんと見てくれていない」という悩みを訴えることは珍しくありません。しかし、この悩みは「上司たるもの、常に部下の仕事ぶりを見ておくべきだ」という「あるべき論」に基づいています

 一方、現実のマネージャは決して「万能な人間」とは限りません。まして、その上司がプレイヤーとマネージャの「一人二役」をこなす「プレイングマネージャ」だとすれば(実際にはそういうマネージャが多いです)、自分の仕事でいっぱいいっぱいになり、部下に気を配れなくなることは往々にしてあります。常に「チーム全体に満遍なく目を配れ」というのは、ちょっとむちゃな注文かもしれません。

 こうしたPM側の事情をメンバー側が理解できれば、悩みが軽減するかもしれませんし、「もう少し自分から報告するようにしてみよう」という現実的な解決策を見つけやすくなります(こうしたプロセスは「認知行動療法」という心理療法でも用いられています)。

 これは私の所感ですが、仕事に対して真面目に取り組んできた人ほど、「マネージャは万能であるべし」という「あるべき論」が強いことが多いと感じます。自分が部下の立場でいるうちは、それは「上司に対する不満」になりますし、自分が上司の立場になると、それが「自分に対する要求」になっていきます。

 どちらの場合も「あるべき論」が自分を苦しめがちです。でも、マネージャだって人間です。不完全なところだってあります。メンバーとPMがお互いに欠点を補い合うつもりでやろうと決めた方が、精神的に楽になることが多いものです。

“ダメPM”には主に3つのパターンがあります

 PMに理想論としての「あるべき論」をぶつけることは、あまり現実的ではありません。それより、「現実解」としてのやり方、つまり「PMの欠点を含めてお互いにカバーし合うようなやり方」を模索してみましょう。

 さて、「ダメPM」にもいろいろなタイプがあります。中には「手柄はすべて自分のもの。失敗はすべて部下のせい」といった、救いようのないタイプの人がたまにいますが、そういう問題外な人は今回、割愛します。本人にはあまり悪気はないけれど「困ったPM」になってしまう人は、主に3タイプに分けられます。

  • 発散させることが得意な「朝令暮令PM」
  • 都合の悪いことは忘れる「忘却型PM」
  • 周りが見えなくなる「テンパリ型PM」

 それぞれのダメPMについて解説し、対応策を考えてみましょう。

命令を発散、発散! 「朝令暮令型PM」

 「朝令暮改:朝に政令を下して夕方それを改めかえること。命令や方針がたえず改められてあてにならないこと。(広辞苑第六版より)」

 朝に出した命令を夕方になると改める――朝に出した仕様を午後に変更するなど――は、マネージャとして望ましいものではありません。しかし実際には、急な状況変化のために朝令暮改にならざるを得ない場合があります。また、変化に対して柔軟に対応していくという意味でも、朝令暮改は必ずしも悪いことばかりではありません。

 それよりももっと困るのが「朝令暮令」型のPMです。「朝令暮令」とは私の造語で、「次から次へと指示を出すタイプのマネージャ」を指します。朝に出した仕事の指示が完了しないうちに、夕方あるいは翌日には別件の指示を出す……つまり「思い付いたら即、指示を出す」タイプの人です。

 PMに限らず、マネージャにはこのようなタイプの人が少なからずいます。典型的なのが「ワンマン」な経営者や管理職。「発散型」あるいは「ムチャ振り型」といってもいいかもしれません。

 このタイプのマネージャは、メンバーにとって困りものです。前に受けた指示が完了しているかどうかに関わらず次々と指示を出します。そのくせ、本人は前に出した指示のことをすっかり忘れているのです。

「朝令暮令型PM」への対処法

 このタイプのPMの元で仕事をしていると、時間がいくらあっても足りません。メンバーがどれだけの仕事を抱えているかに関わらず、次々と指示が飛んでくるからです。

 このようなPMとうまくやっていくためには、交渉上手になることが必要です。昨日出された指示があるのにもかかわらず、次の指示が飛んできたときには、「昨日頼まれた○○の件も終わってないのに、無理ですよ!」と言いたくもなります。しかし、ここで「無理です」と突っぱねると話がこじれます。

 ここは、「この件と、昨日頼まれた○○の件、どちらを優先しましょうか?」と聞いてみましょう。

 相手に以前の指示を思い出させるわけです。そうすれば「昨日の件はもういいから、こっちをやって」と、仕事を減らすことに成功する場合もありますし、たとえ仕事量は変わらなくても、順番を指示してもらえれば仕事の見通しが立てられます。「朝令暮令」の発散型PMは、仕事の優先順位を考えずに次々指示を出す傾向があるので、そこをうまくコントロールすればよいのです。

 ポイントは、新しい指示が飛んできたときには「間髪を入れずに交渉する」ことです。いったん仕事を引き取ってから、後で「できません」と言うのは得策ではありません。

 その場で交渉をするためには、すでに受けた指示(自分にとっての「タスク」)を書き留めておくことが有効です(連載第1回を参照)。タスク表を見ながら新しい指示を聞けば、その場ですぐに交渉できる余地が生まれます。

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