検索
連載

このキャリア、Web業界で生きる? 職種別・Web業界相性診断きのこる先生のエンジニア転職指南(7)(2/2 ページ)

元プログラマ、現Web系企業の人事担当者による、エンジニア転職指南。「応募書類の書き方」や「自己PRの仕方」について、エンジニアの視点を持ちながらアドバイス。エンジニアの幸せな転職のために、菌類が奮闘する。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

組み込みプログラマ

 ハードウェアを制御するソフトウェアを開発する仕事を「組み込みプログラマ」と定義します。「ハードウェア」の定義は広く、工場の生産機械、駅の自動改札や券売機、プリンタやスキャナなどPC周辺機器、携帯電話やカーナビ、家電など多岐にわたります。生活のすべてに関わっていると言っても過言ではないでしょう。

●特徴

 さまざまなプラットフォームが存在するので、開発言語もさまざまです。ハードウェアリソースに制約があることが多いため、Cやアセンブリ言語など、低レイヤの制御に適した言語が多いようです。

 プログラマとしては、メーカーのソフトウェア部門に所属する場合が多いようです。「先代の残した秘伝のソース」を保守する仕事が多く、会社/製品に特化したキャリアを積みがちです。話を聞いてみると「ゼロからプログラムを書いたことはありません」というプログラマが結構いることには驚かされます。

 「レイオフや早期退職制度で転職を考えている」という組み込み出身プログラマと多く会う機会がありましたが、全体的に課外活動をしている率は低く、危機感を持っているようにも見えませんでした。

●Web業界を目指すなら

 こちらも残念ながら、Web業界で生かせる開発経験はほとんどありません。フィーチャーフォンからの流れでスマートフォン開発、さらにアプリケーション開発まで経験した場合は、例外として「スマートフォンプログラマ」に転身できる可能性があります。

 そうでない場合は、ひたすら課外活動あるのみです。Webアプリもしくはスマートフォンアプリにターゲットを絞って、できるだけたくさん公開しておきましょう。Webアプリなら継続してサービス提供すること、スマートフォンアプリならアプリマーケットなどに公開しておくことが重要です。

 また、Web業界で使われているミドルウェアへの理解を深めておくことも、重要な武器になります。C言語のキャリアを生かして「PHPのエクステンションが書けます」というスキルを身に付けておくと、マッチした場合は大きなアピールになります。

 まずは「秘伝のソースを熟成させるお仕事」以外のアピールを準備しましょう。きちんとキャリアを積んで低レイヤの理解があれば、ベースとなるプログラミングスキルは通用するはずです。

インフラエンジニア

 次に、インフラエンジニアについて考えていきましょう。……と言っても私はプログラマ出身なので、具体的に考察やアドバイスできることは、プログラマに比べると少なめです。が、人事担当者として感じたこと、インフラ責任者と採用について話したことをぶっちゃけて書いてみます。

●エンジニアの特徴

 Web系企業でインフラエンジニアに求められるスキルは2点、「一通りできること」「トラブル対応できること」に尽きます。

 企業の規模にもよりますが、「ネットワーク専業」や「データベース専業」というエンジニアを置くWeb系企業は少数派です。たいていのインフラエンジニアは、各自の強みを最大限に生かしつつ、全員が物理的な構築からOS/ミドルウェアのインストール、アプリケーションのデプロイ、日々の運用と障害対応までも担当しています。

 ですから、「強みを生かしつつ何でもやる」という意識が持てない場合は、Web業界は向いていないと考えましょう。「ネットワークだけやりたい!」「Oracle DBだけ極めたい!」という人が移ってきても、お互いあまり幸せにはなれないようです。

●Web業界を目指すなら

 Web系企業は、「何でもやる」役割をインフラエンジニアに求めます。そのため、アピール戦略としては、いままでの経験で培った強みを最大限に生かしつつ、なんでもできること、やる気があることをアピールしましょう。

 アピールに有利な材料としては、以下のようなものがあります。

1.負荷対策

 Web系企業の自社サービスは、たいてい負荷の問題に悩まされています。サーバリソースのコストを下げることは重要なミッションなので、負荷に適切に対応できることは大きなアピールになります。ボトルネックの特定から各種ミドルウェアのチューニング、SQLやアプリケーションの解析まで、広いレイヤの知識と経験があれば、ぜひアピールしましょう。

2.運用

 継続的にインフラを運用していた経験は、しっかりアピールすべきです。インフラ運用担当者は、通信量やディスク使用量、レスポンスタイムなどの監視を行い、トラブルが起きた場合はすぐに対応しなければなりません。ハードウェア、ネットワーク、ミドルウェア、アプリケーションと、障害の原因は広いレイヤに分布しています。そのスキルと経験は強みになります。特にアプリケーションレイヤへの理解は歓迎されるので、Webアプリケーションの開発経験はアピールしたいところです。

3.人柄

 インフラエンジニアには、商用環境でサービスを動かす「本番サーバ」へのアクセス権が与えられます。身もふたもない話ですが、信頼できなさそうな人に、大事な権限を任せようと思うでしょうか? 「人柄」をアピールするのはなかなか難しいですが、まずは書類から軽はずみな印象を与えないよう、気を付けましょう。

 以前、「ソーシャルの活動はいずれバレるから職務経歴書に書いておけ」とお話ししました(参考:「Web企業に転職したいなら、勉強会に行け&コードをさらせ」)。インフラエンジニアの場合は特に、ソーシャルの活動で信頼感を損なわないよう十分に注意しましょう。

次回予告

 ということで、各種エンジニアの皆さんに「Web業界を目指す」ためのアドバイスをお送りしました。

 さて、次回はいよいよ最終回。元プログラマとして、現人事担当として、転職を考えるエンジニアの皆さんに知っておいてほしいことをお話しようと思います。寒い日々が続いていますので、風邪など引かぬようご注意ください。それではまた!


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る