職歴書も、エージェントも使わない転職も、あるんだよきのこる先生のエンジニア転職指南(5)(1/2 ページ)

元プログラマ、現Web系企業の人事担当者による、エンジニア転職指南。「応募書類の書き方」や「自己PRの仕方」について、エンジニアの視点を持ちながらアドバイス。エンジニアの幸せな転職のために、菌類が奮闘する。

» 2011年11月29日 00時00分 公開

 皆さん、健康に過ごしていますか?

 私は気温の低下を読み間違えて早速、風邪をひいてしまいました。なんとかは風邪をひかないとはよく言ったものです。風邪をひいたら体を温めないと! 体を温めるには熱燗(かん)だよね! というわけで、いつもより3割へべれけ増しな菌類にどうぞお付き合いください。

 さて、これまでの連載で伝えてきたメッセージを覚えているでしょうか。

 「職務経歴書はラブレターである」

 気持ちを上手に伝えられるラブレターの書き方と、キューピッドである転職サービスの上手な使い方――菌類の英知を結集した、ノウハウという名の胞子を放出してきました。

 そんな今までのお話をまるごとひっくり返して、今回は「転職エージェントを使わない転職」をテーマに、「ラブレターのいらない告白」と「愛の伝え方」を紹介します。

エージェントを使わない転職

 まず、いまいちど「転職」にかかわるプレイヤーの関係性を見直してみましょう。

  • 企業:「イケてるエンジニアを採用して、問題を解決してほしい」
  • エンジニア:「楽しそうな企業に就職して、スキルを生かしたい」
  • 転職サービス:「両者を仲介してマージンをいただきたい」

 身もふたもない書き方ですが、これが転職サービスの立ち位置です。

愛を伝える方法は1つではない

 前回は、転職サービスとエージェントに味方してもらう方法を紹介しました。でも、「愛を伝える」=「求人に応募するルート」は転職サービス経由だけとは限りません。

●誰でも知ってる企業なら直接、応募しちゃう

 さて、これから唐突にマヨネーズの話をします。

 皆さん、「マヨネーズを作っている企業」をどれぐらい思い浮かべられますか。キユーピー? 味の素? 他には……。

 実は、家庭用マヨネーズのシェアは、上記2社の製品が90%以上を占めています。そのため、一般人が「マヨネーズを作っている企業」としてすぐに思いつくのは、この2社がほとんどのはずです。

 このような「誰でもすぐ思い浮かべられる企業」なら、転職サービスの手を借りずに直接応募してしまう、という手があります。

 これはあまり大きな声では言えませんが、とある同業者(人類)は、「直接応募だったら合格の書類も、エージェント経由だと落とすことがある」とつぶやいていました。転職サービス経由で採用すると、企業にとっては決して安くないコストが発生します。「それを削減できるのはメリット」と企業が考えることは、容易に想像がつくでしょう。

 知名度の高い企業に魅力を感じたら、直接コーポレートサイトの門を叩いてみる。結構オススメのアプローチです。

●エージェントに「業界知識」をサポートしてもらう

 先ほど、わざわざ「家庭用マヨネーズ」と書いたのには理由があります。なぜかというと、「業務用マヨネーズ」というジャンルがあるからです。業務用マヨネーズとは、 飲食店で使われたり、コンビニのサラダやサンドイッチなどの原材料となるマヨネーズを指します。

 業務用マヨネーズの業界2番手は「ケンコー」という会社です。こちらはキユーピーの独占に対抗して、30%以上のシェアを誇ります。製品がスーパーなど小売店に並ぶ機会が少ないので知名度は低いですが、実は業界2位の企業なのです。

 このような「業界知識」を得ることこそ、エージェントに頼るべきポイントでしょう。業務用マヨネーズという切り口があること、家庭用マヨネーズの世界では知名度が低いけれど業界全体では有力な企業があることを教えてくれるのは、エージェントが持つ最大の強みです。エージェントに業界知識をサポートしてもらい、直接応募する手があります。

●こだわり派のベンチャーは転職サービスに求人を出していないことも

 まだまだ、マヨネーズの話が続きます。

 皆さんは、「松田のマヨネーズ」という商品をご存じでしょうか。「マヨネーズ製造業」の松田優正さんが、ほぼ個人で作っているマヨネーズです。安全なえさで育てた鶏卵と非遺伝子組み換えのなたね油、リンゴ酢とはちみつを原料に作った「こだわりのマヨネーズ」です。大手メーカーの製品と比べて価格は3倍ほどしますが、「これが同じマヨネーズなの?」と思うぐらいのおいしさです。

 このように、知名度が低くても「愛せる」特徴やプロダクト、サービスを持っている会社にも、直接応募で愛や熱意を伝えるべきでしょう。

 「松田のマヨネーズ」のように、知名度が低いプロダクトをこだわりを持って市場に送り出している企業なら、プロダクトに愛を持っている人こそがマッチするはずですね。また、そういう企業は小さなベンチャーやスタートアップであることが多いので、転職サービスに求人を出すコストが大きな負担になっていることが容易に想像できます。その点からも、直接応募のメリットは双方にあると言えそうです。

 知名度や規模とは無関係に興味を持てる企業、大げさに言えば「愛を感じる企業」があるなら、ラブレターは直接届けに行きましょう。

「働いてほしいエンジニア」を目指す

 ここまでお話してきたのは「愛を伝える方法」についてでした。

 しかし、愛は伝えるだけのものでしょうか?

 もしあなたが「モテる」エンジニアならば、ラブレターを書かなくても、「一緒に働きませんか?」と告白してくる企業があるかもしれません。

 今までさんざん「応募書類をどう書くか」を話してきましたが、エンジニアとしての能力と魅力をアピールできてさえいれば、職務経歴書なんか二の次でいいのです。

●とある「モテるエンジニア」のお話

 サンプルとして、私が最近体験したケースについてお話ししましょう(詳細に書くのははばかられるため、ややボカした内容になっています)。

 とあるエンジニアのお話です。彼は、一身上の都合で退職することになりました。急な事情があり、次の勤務先が決まっていなかったので、自身のブログに「退職しました。次は決まってないので転職先募集中です!」と書いたのです。すると、「うちで働きませんか」というオファーが、一晩で12件も届いたそうです。

 彼はプログラマとしての業務の他に、オープンソースソフトウェアの開発を行ったり、雑誌に連載記事を書いたりと、積極的にアウトプットを行っていました。そのため、履歴書や職務経歴書を見なくても、企業にとっては「働いてほしいエンジニア」であることが明白だったのです。

 結局、彼は数あるオファーの中からとあるスタートアップを選び、技術部隊のトップとしてサービス開発をぐいぐいリードしています。人事担当としては、彼の争奪戦に敗れたことがいまだに悔しくて悔しくて、夜な夜な夢に見るほどです。ああ、一緒にきのこ帝国を築こうと思っていたのに……。

モテるエンジニアになるための方法

 彼のように知名度が高く、誰もが技術力を認めるエンジニアになるのは、そう簡単なことではありません。しかし、技術力を高める努力をし、それを積極的にアウトプットしていくことで、彼のように書類を見なくても働いてほしいと思われる「モテエンジニア」になることができるかもしれないのです。

 モテエンジニアになるためのポイントはこれだけです。

  • 業務外で手を動かす
  • アウトプットする
  • 出会いのチャンスを増やす

 上記の3つをきちんと続けていくことがモテの秘けつ。「転職したいとブログに書くと12件のオファーがあるエンジニア」になるための唯一の道です。

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