元プログラマ、現Web系企業の人事担当者による、エンジニア転職指南。「応募書類の書き方」や「自己PRの仕方」について、エンジニアの視点を持ちながらアドバイス。エンジニアの幸せな転職のために、菌類が奮闘する。
人を泣かせる花粉より、人を笑わせる胞子でありたい。こんにちは、きのこる先生です。ヤツ(花粉)らの破壊力はすさまじいものがありますね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
さて、本連載もついに最終回です。今回のテーマは「転職したいITエンジニアが知るべき97のこと」。タイトルの元ネタはもちろん、私の愛する“きのこ本”こと、『プログラマが知るべき97のこと』。
前半は過去の連載を振り返った「まとめ編」。転職についてのあれこれをおさらいしてみてください。後半では転職について特に重要なこと――「ソーシャル転職」「面接」「新人エンジニアの心構え」について解説します。
1.中途採用で必要な書類
中途採用に応募するには、「履歴書」「職務経歴書」「スキルシート」という3種類の書類が必要です。一番大事なのは「職務経歴書」です。
2.職務経歴書に書くべきこと
職務経歴書には「職務経歴」「志望動機」「自己PR」を書きます。いずれも大事な項目なので、書き方や注意点をおさらいしましょう。
3.読む人の気持ちになった書類を
「書類を読むのはエンジニア」ということを意識しましょう。1ファイルにまとめたPDFで提出し、読みやすい構成を心掛け、誤字脱字に注意しましょう。
4.「職務経歴」で過去のアピールをしよう
「職務経歴」には、今まで業務で経験してきた開発プロジェクトについて書きます。「開発範囲」「開発規模」「アーキテクチャ」を簡潔に、そして具体的に書きましょう。くれぐれも技術用語の表記ミスには気を付けて!
5.もったいないお化け撲滅運動
あなたの実力をきちんとアピールできない書類は、あなたにとっても、あなたの書類を読む人事担当者にとっても、不幸なものです。「もったいないから」といって、何でもかんでも詰め込んではいけません。きちんと整理し、きちんと伝わる書類を書いて、お互いの幸せを増やしましょう。
6.「自己PR」で現在のアピールをしよう
「自己PR」は書類審査で最も重視される部分です。「あなたの長所」と「業務外の取り組み」について、しっかり効果的なアピールをしましょう。
7.長所は誰にでもある
奥ゆかしい日本人ならではの「長所をアピールするのが苦手」という悩み。しかし、きちんと長所をアピールできないと、あなたの良さは伝わりません。ここは、「より良い転職のため!」と開き直りましょう。自分の性格を客観的に分析し、それを良い方に解釈して書いてみると……けっこう長所っぽくなりませんか?
8.NGワードにご注意!
「上流のスキルを身に付けたいです」という工程にこだわるマインド、具体的に何をしたかよく分からない「サブリーダー経験」、そして、アウトプットの実物がないのに『勉強しています』」アピール。これらは典型的なNGワードです。評価のプラス材料にはほとんどなりません。上流下流ではなく「何をしてきたか」、サブリーダーとして「何をしてきたか」、技術習得のために「何をしてきたか」を具体的に書きましょう。
9.そのピカピカの「奴隷の鎖」はしまっておけ
「体力がある」「残業・休日出勤による長時間労働が可能」といった「根性で問題を解決した」アピールは最悪です。深夜残業や休日出勤が大好きならしょうがありませんが、真っ当なエンジニアとして「働くこと」「休むこと」「腕を磨くこと」のバランスをとって仕事をしたいなら、奴隷の鎖自慢はやめましょう。
10.業務外で、何をしていますか?
業務で積んできた経験がミスマッチだと採用されない? そんなことはありません。むしろ自己PRでは、普段から「業務外で何をしてきたか」の方が重視されることが多々あります。仕事と離れて行ったアウトプットがあるなら、積極的にアピールしましょう。
11.Webサービスを作ろう
Web系企業への転職を考えているなら、実物でアピールするのが一番です。アクセスやユーザー数などの規模は気にせず、まずは作って公開し、応募書類にそのURLを書きましょう。インフラの手配からサービスとして公開するところまでを1人でやった、という実績は、それなりに有力なアピール材料です。
12.ブログを書こう
普段から継続的に技術の習得に努めることは、プロのエンジニアとして当然の振る舞いです。しかし、それをきちんと記録に残し、成果を系統立ててアピールできる人は、意外と多くありません。いつもの習慣を記録し、成果をブログの記事としてアウトプットしておくことは、転職時のアピール材料としてももちろん、あなた自身のスキルアップにも大きく役立つはずです。
13.勉強会に行こう
連日各所で開催されている、いわゆる「IT系勉強会」は、スキルアップのためのネタの宝庫です。また、参加したセッションやワークショップの記録、内容に刺激を受けてやってみた取り組みは、絶好の「ブログのネタ」になります。勉強会に行くことで、インップットにもアウトプットにもプラスの作用が働きます。
14.ソースコードを公開しよう
プログラマの腕を知るのに一番簡単な方法は、ソースコードを見ることです。GitHubなどソースコードホスティングサービス(たいてい無料です)を使い、業務外で書いたソースコードを公開しておきましょう。
15.ソーシャルメディアで発信しよう
普段からTwitterやFacebookなどのソーシャルメディアを利用しているなら、そのアカウントも書いてしまいましょう。書類選考担当者は、気になった候補者ほど検索しますので、よほどうまく隠していない限り、たいていバレます。また、Webに関する仕事をするのであれば、普段からロクに使ってない人よりも、これらのサービスをうまく使っている人の方が評価される傾向もあります。
16.下調べしよう
応募先企業については、最低限コーポレートサイトぐらいはチェックしておきましょう。看板になるサービス / プロダクトについては、できれば触ってみるぐらいの準備をしたいところです。応募書類に自社への記述があると、採用担当者もうれしい気持ちになります、にんげんだもの。
17.コピペは悪ですよ
プログラミングするとき「コピペは悪」なのは言うまでもありませんが、志望動機を書くときも「コピペは悪」だと言い切ってしまいます。面倒くさがらず、応募先の企業にあわせた志望動機を書きましょう。数行の志望動機すら書くのに苦労するようなら、その企業は転職先としてあなたとマッチしているのでしょうか?
18.あなたは、あなたと一緒に働きたい?
ここまでくれば自己PRの材料はけっこう整ってるはずです。一度全部並べて、読み返してみましょう。こういうアピールをしている人が、あなたの同僚になりたがっているとしたら、あなたは「一緒に働きたい!」と思うでしょうか?
19.転職サービスの仕組みを知っておこう
転職サービスは「企業から求人を集める」「転職希望者を集める」「両者のマッチングを行う」のが仕事です。そして、転職希望者が企業への就業が決まると、その年収ををもとに報酬を受け取ります。転職サービスにとっては、企業もあなたも顧客であること、企業としては転職サービスを経由して採用するとコストが掛かることを覚えておきましょう。
20.エージェントを上手に使おう
転職サービスに登録すると「エージェント」という担当者がつきます。あなたにマッチした求人を紹介してくれ、企業とのやりとりを代行してくれるという重要な役割を担ってくれます。うまく付き合い、上手に利用しましょう。
21.業界動向をナビゲートしてもらう
エージェントはたいてい業種・業界の担当分野があるため、その業界の景気、採用動向については知識を持っています。現在の状況、市場で求められているスキルなどの情報をうまく引き出し、アピールの準備に活用しましょう。
22.良い企業をリコメンドしてもらう
個人が知ることが可能な「会社の名前」はごくわずかです。一方、エージェントは毎日求人書類を見ているため、知名度は低いけれど採用意欲を持っている企業をたくさん知っています。思いもよらない応募先を提示してくれる可能性がありますので、できるだけ手札をオープンにしてもらいましょう。
23.応募書類をレビューしてもらう
残念なことに、エージェントは、「業務知識」についてはそれほど詳しくないケースが大半です。技術用語をきちんと理解しているエージェントはほとんどいません。しかし、「きちんとした書類」を書くことに関してはプロですから、しっかりとレビューしてもらい、応募書類のレベルをあげましょう。
24.転職サービス/エージェントは複数使うべしかか
求人している企業はすべての転職サービスと取引しているわけではありません。可能性を増やすためにも、転職サービスは複数(2〜3社)に登録しましょう。また、エージェントも人間ですから、あなたとの相性もあるでしょう。セカンドオピニオンを用意しておく、という意味もあります。
25.エージェントは企業の窓口でもある
「あなた」も「企業」も転職サービスにとっては「顧客」です。エージェントは顧客同士のやりとりを仲介するという、とても面倒くさい役割を担っている、ということを意識し、誠実で迅速な対応を心掛けましょう。
26.結局、信頼関係
「サービス」と「顧客」という関係ではありますが、同時にあなたもエージェントも人間です。信頼関係を築いてこそ、味方としての援護が得られるのは当たり前ですよね。
27.転職サービスを使うのが転職のすべてではない
たいていの企業は、コーポレートサイトに「Recruit」ページを設けています。ここに直接書類を送付するだけで「エージェントを使わない転職活動」のいっちょあがり。転職サービスだけが唯一の道ではない、ということを覚えておきましょう。
28.転職サービスに出てこない求人もある
小規模なベンチャー企業やスタートアップ企業は、転職サービスに掛かるコストを嫌って、求人を出さないケースも見られます。そういった企業はTwitterやFacebookなどのソーシャルメディア、エンジニアが集まる勉強会やカンファレンスなどを「求人媒体」として活用しています。こういった情報を収集しておくのも転職のルートとしては有力です。
29.直接応募は意外と有効
ベンチャーでなくても、企業としては「できれば求人に掛かるコストを節約したい」というのが本音です。あなたが「この企業で働きたい!」と熱意を持っているなら、その熱意をそのまま直接ぶつけてみるのも、なかなか有効な手段です。ただし面接日程や合否、就業条件などの交渉を自分でやる必要があるのは、ちょっと大変ではありますので気を付くけて。
30.モテるエンジニアとは誰だ
今までは書類を送って審査してもらう「愛の告白」形式の転職をご紹介してきました。でも、普段の活動で企業の中の人から注目されると、転職を表明したとき「うちで働かない?」という愛の告白(オファー)が届くこともあります。転職活動の必要すらない「モテるエンジニア」を目指すというのも、立派な転職活動です。
31.たった3つの、モテるやり方
企業からオファーが届くようなエンジニアになるために必要なのはたった3つ。「業務外で手を動かす」「アウトプットする」そして「出会いのチャンスを増やす」。これらを普段から地道に積み重ねるしかありません。
32.モテの秘けつは度胸と愛嬌
なぜ企業からオファーが届くか? それは「優秀であること」と「きちんとアピールできていること」の両方を満たしているからです。そのために必要なことが「たった3つの、モテるやり方」です。
33.業務外活動をしなくて許されるのは学生までだよね
社会人、つまりプロのエンジニアになったら「腕を磨くのは当たり前」です。プロ野球選手が素振りをするのと同じぐらい当然の行為なので、これが苦になるようなら「プロのエンジニア」を続けることそのものを考え直した方がいいかもしれません。普段から情報を収集し、エンジニアとしての価値を高める活動をしましょう。
34.可視化しないと誰にも見えない
普段の「素振り」の記録を、ブログやGitHubなどで公開しておきましょう。「誰かが見てわかる形」にまとめるのは、スキルアップにとても役立ちます。そして、「誰かが見て分かる形」にまとまっていないと、アピールの材料にはなかなかなりません。
35.はぐれエンジニア出会い系
普段素振りをし、アピールできるよう記録しておく。これでずいぶん優秀なエンジニアに近づきましたが、それだけではまだ「モテるエンジニア」への道半ばです。アウトプットのURLはソーシャルメディアなどで宣伝する。勉強会があれば行って成果を発表する。自分がやってきたことが誰かの目に触れる機会を、積極的に増やしていきましょう。
36.わぁい勉強会 あかり勉強会大好き
出会いを増やすのにとても有効なルートの1つが「勉強会に参加すること」です。とはいえ座って話を聞いているだけではモテません。運営を手伝ったり、スピーカーとして登壇したり、「お客さん」から一歩踏み出すことで、コミュニティの中での価値をアピールできます。今までのアウトプットがあれば、それを誰かに発表するのはそんなに難しくないでしょう。
37.勉強会に潜む魔物
勉強会には魔物が潜んでいます。それは「企業の人事担当者」。普段から素振りをし、成果を勉強会でアピールしていると、そこに参加している「人事担当者」からオファーがあるかもしれません。人事担当でなくても、参加したエンジニアが注目して「うちを受けてみない?」なんて話があるのも、今ではそれほど珍しいことではなくなりました。
38.転職2.0の幕開け
オンライン・オフライン問わず、業務外活動とその成果が転職のきっかけになるケースが急増しています。応募書類の準備もしつつ、ソーシャルなつながりを活用した「転職2.0」への準備をしていくのも、エンジニアとして欠かせなくなってきています。
39.「SIerに転職しないのかい?」「私の戦場はここじゃない」
SIerからWeb系企業への転職希望者は増える一方です。しかし、要求されるマインド・スキルはまったく違うものばかり。Web系企業での仕事をするには、適応するための「準備」と「覚悟」が必要です。それでもWeb系企業を目指しますか?
40.SIerとは/Web系企業とは
ざっくり分けると、SIerとは事業の主体が「受託開発/BtoB」、Web系企業は「自社サービス/BtoC」という特徴があります。ちょっと乱暴ではありますが、「よりSIer的」「よりWeb系企業的」という分類はこの2軸で考えてみます。
41.開発モデルを区別しない
SIerで主流の開発手法に「ウォーターフォールモデル」があります。しかし、Web系企業では「アジャイル開発手法」を取り入れているところが多く見られます。上流・下流を区別したり、設計・製造を分ける考え方は歓迎されません。ウォーターフォールモデルでの開発が好きなら、Web系企業は心休まる場所ではないでしょう。
42.Like a rolling stone
SIerでは「仕様変更」は上流行程のミスとされ、手戻りとして嫌われる傾向があります。一方、Web系企業では、仕様どころが要件も日替わりで変化することが珍しくありません。変化すること、変化に対応することを楽しめる人こそが、Web系企業に向いていると言えるでしょう。
43.上流も、下流も、ないんだよ
SIerでは「わたし設計する人」「ぼく実装する人」と担当範囲を厳密に決める傾向が見られます。しかしWeb系企業では、そんなことを言う暇もないほどの速度で開発は進んでいきます。プロジェクトに対しての責任はチームで負う「職務横断型チーム」の一員として「なんでもやる」マインドが必要とされます。
44.だがそのコミュニケーションは日本で二番だ
いわゆる「顧客」とうまくやるのが、SIerにおける「コミュニケーション」の大半を占めています。しかし、Web系企業で求められる「コミュニケーション」は、上辺を繕ったり落としどころを探ったりするためのものではありません。
45.手強い問題、ズバッと解決
Web系企業では、「手強い質問をぶつけ合い、本質を明らかにする」のがコミュニケーションの目的です。SIerの「顧客との折衝」とはまったく違う、問題解決の手段としてのコミュニケーション能力が要求されるのです。
46.顧客、敵、そして仲間
Web系企業においては、「顧客」の定義さえSIerとは違ったものになってきます。サービスやプロダクトのエンドユーザを代表する立場として「企画職」が存在しすることが多く、コミュニケーションとは「顧客の代表」としての彼ら(つまり同じ会社の仲間)と話し、時には交渉し、時には協力し、問題を解決していきます。
47.ここは天国じゃないんだ。かといって地獄でもない
SIerにいる技術志向の強いエンジニアは、「エンジニアが大事にされる」「技術レベルが高い」という理由でWeb系企業を目指すこともあるようです。しかし、Web系企業だからって誰もがスーパーエンジニアなわけではありません。「隣の芝生は青く見える」という言葉をもう一度、声に出して読んでみましょう。
48.「もうウンザリです。何も改善できません」
Web系企業は新しい技術をどんどん取り入れる傾向が強い一方で、レガシーコードが蓄積しやすい傾向もあります。長く運営されている華やかなサービスでも、裏に回るとコードはそびえ立つレガシーの山、ということも少なくありません。
49.本当の顧客と向き合えますか?
Web系企業には「エンドユーザの声」が直接届きます。もちろん賞賛や感謝の声はとても嬉しく、やる気につながるものです。しかし実際には、その何倍もの「罵倒」にさらされるということを覚悟しなくてはなりません。あなたは「死ね」と100回書いてあるメールを受け取れますか? そんな罵倒も、プロダクトの改善や機能追加にフィードバックできるタフさが求められます。
50.『覚悟』とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開くことだッ!
SIerからWeb系企業に移るには、それなりの覚悟が必要です。闇雲に飛び込むのではなく、しっかり情報を集め、自分のキャリア、スキル、そしてビジョンを明確にし、移るべき理由を明確にしておきましょう。そうすることで覚悟することができ、暗闇の荒野に進むべき道を切り開くことができるのです。
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