パナソニックグループはいかにして分散する基幹DBを集約したか【後編】:基幹業務システムのDB統合は可能か(2)(1/4 ページ)
複数のDBを集約してなおかつパフォーマンスを改善する、運用工数や細かなチューニング工数を削減して標準化する――巨大メーカーを支える基幹業務DBならではの最適化ノウハウを聞く。
前編では、今回取材に応じていただいたパナソニック インフォメーションシステムズ(以下、パナソニックIS)における基幹情報システムを支えるDB環境の課題、外的要因や検討の詳細について話を聞いた。一口にDBaaS環境の構築といっても、企業内の重要な基幹業務を担うシステムを対象とした場合、検討すべき項目はパフォーマンスや可用性だけでなく、企業としての安全性や信頼性、セキュリティや品質についても、十分に検討が必要な領域である。また、これらの検討に伴い、システムそのものが新たになる場合、部門の持つべき役割に変更が必要なこともある。DBaaS環境の実践には避けて通れない検討プロセスである。
後編となる本稿では、パナソニックISにおける基幹情報システムのDB統合および、DBaaS化による運用効率化に向けた、実際の移行プロセスを追う。
今回も取材に応じていただいたのは、パナソニックISサービスビジネス本部 IDCサービス事業部 インフラ基盤サービスグループ アプリ基盤担当G グループリーダー 片岡光康氏と、同社 サービスビジネス本部 IDCソリューションセンター 戦略企画グループ リーダー 河田恭利氏だ。
各部署のあるべき姿を説いて内部統制を実現
新たな統合DB基盤は、2012年から本番環境へ適用され始め、2013年1月には構築を完了している。
本番環境適用前には、アプリケーションチームとの事前整合が行われ、以下の4つのポイントで運用していくことが決められていった。
(1)DBノードを完全分離するようにアプリケーションを変更する
Exadataを最大限に利用するため、ShellやJavaなどのアプリケーションをDBレイヤーからアプリケーションレイヤーに変更する
(2)メンテナンス発生時にはシステム停止調整が必要となる
運用では回避できない不具合などでパッチを適用する場合は、データベースやアプリケーションの再起動を伴う場合があるため
(3)運用集約によって本番DB変更権限を移管する
専任チームが本番DBを運用し、IT内部統制の観点から、開発と運用の分離を行う
(4)マシンパワーに頼ったアプリケーション設計を禁止する
非常に高速となった統合DB基盤の処理能力に頼るのではなく、適切な処理方式を考えて設計し、マシンパワーに頼った設計は最後の手段とする
前編でも少し触れたが、同社の場合、運用を担当するパナソニック エコソリューションズ社(以下、ES社)のアプリケーションを担当する部門、インフラ全般を運用する部門と、担当が分かれていた。基幹システムのDBも担当は分かれていたが、ものによってはアプリケーション担当者がDBのメンテナンスも行ってきた。
こうした体制になっている理由は、アプリケーション実装がDBと密接に結び付いていたためだ。
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