5分で分かるオープンデータ:データ資源活用の基礎(1)(3/5 ページ)
にわかに話題になり始めた「オープンデータ」だけれど、その現状は? 実際には何ができる? Linked Open Dataとは? ざっと理解するオープンデータのこれからと、ビジネス創出の可能性。
3分:ビジネス先進事例はどんなものがあるか?
オープンデータの活用が進んでいる欧米では、既に多くのビジネス事例が創出されており、The Climate Corporation社の事例などはオープンデータに関心のある方は既にご存じと思います。そこで、本項では日本であまり紹介されていない2事例を説明します。
(1)Kel Quartier社の地域情報提供サービス
フランスの企業Kel Quartier社は、政府が公開する400種類のオープンデータ(所得分布や自動車の使用度、暴力事件発生状況など)を地図上に表示する地域情報提供サービスを運営しています。
このサービスでは、同社の持つフランス全土を、生活圏ごとに4万2000エリアに分割するノウハウと、粒度の大きい統計データを当該エリアに応じて按分する独自技術を活用しています。さらに雑誌の読者分布など、民間から購入したデータも組み合わせることで、サービスの付加価値を向上させています。
このサービスは、不動産会社における物件の評価や、コンサルティング会社における企業買収のための意思決定などに利用されており、Kel Quartier社はこれらの企業から、詳細なデータを閲覧するための定額制の利用料や、特別なデータ分析などに関するコンサルサービス料を受け取ることで、収益を上げています。
(2)スマートフォン向けゲームアプリ「Blossom Bristol」
Blossom Bristolは、英国の企業Mobile Pie社の提供する農作物育成ゲームです。種を植えて時間が経つと作物が育ち、これを販売してお金に変える仕組みは既存の農作物育成ゲームと同じですが、ゲーム内での栽培環境に現実のBristol市の環境データ(気象情報、大気環境情報などのオープンデータを利用)を反映させている点が大きな特徴となっています。
このゲームはFacebookと連携しており、プレーヤーはFacebookでチェックインを行うと、ゲーム内にある実際の地名上に畑を作り、野菜を栽培することができるようになります。この各地点のリアルな環境データと併せて、「天候不順が続くと農作物がよく育たず販売価格が下がる」「カリフラワーは大気汚染度が高くてもよく育つ」といった農作物の特性が設定されており、プレイヤーには畑の位置と環境情報を踏まえた栽培戦略が求められます。このように、オープンデータという政府が公開する正確性の高い実データをゲームに活用することで、リアルとバーチャルを結ぶ新しいゲームビジネスが誕生しています。
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