スマホとWebSocketで連携するテレビ用SPA(Single-Page Application)の作り方:Chromecastアプリ開発入門(2)(2/5 ページ)
メディアストリーミングデバイス「Chromecast」用アプリの開発方法を一から解説する連載。今回は、Senderのコマンドを受信してHTML5のvideo要素を使ってメディアを再生したり画面を写したりするReceiverアプリの概要と作り方などを解説します。
Custom Receiver型のメディアストリーミングアプリの開発
それでは、具体的にメディアストリーミングアプリ(Custom Receiver)の開発について解説したいと思います。
メディアストリーミングアプリの基本
メディアの操作などは、video要素として定義されたMediaElement、MediaManagerとCastReceiverManagerのイベントをオーバーライドして処理を追加していきます。まずはMediaElement、MediaManager、CastReceiverManagerを初期化します(コード1)。
<html> <head> <!-- (1)Google Cast Receiver SDKの設定 --> <script type="text/javascript" src="//www.gstatic.com/cast/sdk/libs/receiver/2.0.0/cast_receiver.js"></script> </head> <body> <video id='vid' /> <script type="text/javascript"> window.onload = function() { //(2)デバッグレベルの設定 cast.receiver.logger.setLevelValue(cast.receiver.LoggerLevel.DEBUG); //(3)VideoタグのElementオブジェクトを取得 window.mediaElement = document.getElementById('vid'); //(4)Videoタグを指定してメディアマネージャを作成 window.mediaManager = new cast.receiver.MediaManager(window.mediaElement); //(5)レシーバーマネージャのスタート window.castReceiverManager = cast.receiver.CastReceiverManager.getInstance(); castReceiverManager.start(); }; </script> </body> </html>
以下、コード1について詳細に説明します。
(1)Google Cast Receiver SDKの参照を設定
必ずこのURLを指定する必要があります。バグフィックスや新機能のアップデートが行われた場合、セルフホストしていると内容が反映されません。
(2)デバッグレベルの設定
Cast receiver libraryのデフォルトではデバッグが無効となっています。リモートデバッグを可能にするには、ログレベルをデバッグに設定する必要があります。開発時にはリモートデバッグを有効に設定し、アプリケーションリリース時に無効に設定するとよいでしょう。
(4)MediaManagerの作成
メディアストリームを流したいvideo要素を引数にMediaManagerの作成を行います。
(5)ReceiverManagerの開始
メディアストリームを流したいvideo要素を引数にMediaManagerを作成し、レシーバーマネージャを開始します。
HTML5のVideo APIを使ってメディアを操作する
HTML5のvideo要素には、メディアを操作するAPI、イベントとプロパティが用意されています。これらを使用して、JavaScriptからメディアの操作・状態の取得を行います。
コラム「HTML5のvideo要素について詳細に知りたい方は」
W3Cにデモページ「HTML5 Video」がありますので、そこでどのような操作時にどのようなイベントが発生し、プロパティがどのように変化するか確認できます。
また、video要素のイベントについての解説は「Media events - Web developer guide | MDN」に記述されているので参考にしてください。
一般的なメディアプレーヤーでは、メディア再生時にメタ情報と再生状態を表示するかと思います。ここでは例として、図3のようなメディアプレーヤーに対して代表的なイベントに応じてプレーヤーの表示を変更する処理を実装してみます。
- プレーヤー領域:video要素を画面全体に表示
- ステータスパネル
- タイトルを表示
- 再生/一時停止状態を表示
- 再生時間を表示
- プログレスバー:メディア再生の進捗率を表示
- コンテンツ時間を表示
■イベント処理の仕様
図3のサンプルアプリケーションに対する、イベント処理の仕様は以下の通りです。
- 再生の開始前(メディアの読み込み開始時)に【1】タイトルを更新
- 再生が開始したら【2】再生/一時停止状態を再生状態に、【3】再生時間/【4】プログレスバー/【5】コンテンツ時間を更新
- 再生の開始後一定時間後にステータスパネルを隠す
- 再生中は、【3】再生時間と【4】プログレスバーを更新し続ける
- 再生が一時停止したらステータスパネルを表示し、【2】再生/一時停止状態を一時停止状態に変更
- 再生が再開したら1.へ戻る
■イベント処理の設定
前述のイベント処理仕様の通りに設定していきましょう。イベント処理は、MediaElementに対してaddEventListenerを使ってイベントハンドラーを登録することで設定できます(コード2)。ここではイベント処理の設定についてのみ解説し、再生時間や進捗率などの取得方法については後述します。
<body> <!-- プレーヤー--> <video id='vid' /> <!-- ステータスパネル --> <div id="mediaStatus"> <div id="mediaTitle"></div> <div id="mediaControl"> <div id="play"></div> <div id="pause"></div> <div id="current">00:00:00</div> <div id="duration">00:00:00</div> <div id="progress"></div> </div> </div> <script type="text/javascript"> window.onload = function() { //(3)VideoタグのElementを取得 window.mediaElement = document.getElementById('vid'); // イベントリスナーを登録 // メディアの読み込み開始した window.mediaElement.addEventListener('loadstart', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT LOAD START' + e); //(3.1)ステータスパネルを表示しタイトルを更新する。……1. window.mediaStatus.style.display = "block"; window.play.style.display = "block"; window.pause.style.display = "none"; window.mediaTitle.innerHTML = “タイトル....; }); // メディアの再生が開始した window.mediaElement.addEventListener('playing', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT PLAYING' + e); //(3.2)ステータスパネルを一定時間後に隠す。……2. window.setTimeout(function() { window.mediaStatus.style.display = "none"; }, 5000); }); // メディアの再生が一時停止した window.mediaElement.addEventListener('pause', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT PAUSE' + e); //(3.3)ステータスパネルを表示する。……5. window.mediaStatus.style.display = "block"; }); // 一時停止した後、メディアの再生を再開した window.mediaElement.addEventListener('play', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT PLAY' + e); //(3.2)ステータスパネルを一定時間後に隠す。……2. window.setTimeout(function() { window.mediaStatus.style.display = "none"; }, 5000); }); // メディアを読み込もうとしているが、予期しない理由で読み込めない window.mediaElement.addEventListener('stalled', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT STALLED' + e); // エラー処理 }); // メディアの読み込み中にエラーが発生した window.mediaElement.addEventListener('error', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT ERROR ' + e); // エラー処理 }); // メディアの再生位置が変更された window.mediaElement.addEventListener('timeupdate', function() { //console.debug('######### MEDIA ELEMENT TIMEUPDATE ' + e); //(3.4)ステータスパネルの更新 ……4. window.current.innerHTML = “[現在の再生時間]”; window.progress.style.width = [進捗率] }); // メディアの再生が完了した window.mediaElement.addEventListener('ended', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT ENDED' + e); // プレーヤー停止処理など }); // メディアの再生が中断した window.mediaElement.addEventListener('abort', function(e) { console.debug('######### MEDIA ELEMENT ABORT ' + e); // プレーヤー停止処理など }); };
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