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運用自動化、ここだけは押さえておきたい4つのポイント特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル(6)(2/2 ページ)

運用自動化が求められる背景から実現法、ツールの選び方、適用法まで、全方位的に解説してきた本特集。今回はこれまでの記事を基に、実現のポイントをシンプルに振り返る。

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ポイント2:運用自動化ツール、選択の基準とは?

 以上のように、標準化・可視化した作業手順は運用自動化ツールに適用することになる。だが、より効果的な運用自動化を図るためには、各社のツール自体が持つ特徴も考慮する必要がある。

 本特集では第4回で国産・外資主要7社の製品を俯瞰(ふかん)した。それらの基本的な特徴としては、多くがランブックオートメーション機能を備え、作業手順を設定するためのGUIを備えていることが挙げられる。「自動化作業部品をドラッグ&ドロップで選択し、手順に沿って線でつないでいく」といったように操作性に配慮した製品も多く、この設定画面自体が可視化・標準化を考える一つの手助けとなり得る。

 ただ、運用自動化ツールも他のツールと同様に、スペックだけでは見えてこない選択のポイントがある。その象徴的なものが「自動化作業部品の数」だろう。スペックだけを見比べると、外資ベンダー製品は数千点という部品を用意しているのに対し、国産ベンダー製品は数十点といった製品が目立つ。だが、これを単純比較することはできない。作業部品の粒度が製品によって大きく異なるためだ。

 例えば「仮想サーバーの追加」という作業があるとすれば、外資ベンダー製品の場合、「仮想サーバーのメモリ/コア数の設定→ストレージのプロビジョニング→仮想サーバーの作成→OSの初期設定」といった一連の手順それぞれに独立した作業部品があるのに対し、国産ベンダー製品は「仮想サーバーの追加」という一部品にまとめている、といったイメージだ。

 こうした点を考えると、「自社独自の運用プロセスがあるため、細かなプロセスまで含めてフィットさせたい」場合は、外資ベンダー製品の方が有利といえるだろう。しかし部品点数の多さは、自動化プロセス設定の柔軟性を高める半面、標準化やツールの設定に一定以上のスキルレベルと時間・工数が求められる。逆に部品点数が少ない場合は、自社独自のプロセスにフィットさせる柔軟性は相対的に低下するが、ツール導入の時間・工数は抑えることができる。

 「ツールが推奨するプロセス」を導入し、それに合わせることを効率的と捉えるのか、あくまで自社のプロセスに自動化を取り込むことを効率的と捉えるのか。この辺りは「“自社が”運用自動化を取り入れる目的」「自社における標準化のスキル」「標準化に掛けられる時間・コスト」などによって判断は変わってくる。ツールはそれぞれ一長一短あり、その長所、短所も見方によって大きく変わるということだ。

 ただ、プロセス標準化がツール導入のハードルとなってきた事実を考えると、「自動化すべき運用プロセスの選定」「ツールへの設定」などを支援する「導入アセスメントサービスの有無」「導入後のサポート」「ニーズに応じた自動化部品の開発」なども一つの判断基準になるのではないだろうか。この他、マルチベンダー環境にある例が一般的な現在、ランブックオートメーションの他の運用管理ツールとの接続性などもチェックすべきポイントといえるだろう。

オープンソースソフトウエアと商用ツール、使い分ける基準とは?

 ただ、コストとのバランスを取りながら効率化を追求することは、営利組織の大前提だ。そこで本特集では運用監視系オープンソースソフトウエア(以下、OSS)と商用ツールの比較も行ってきた。商用ツールとの使い分けの基準は何か、という点については以下の記事に詳しい。

参照記事

 なお、運用監視を自動化するOSSの種類については、以下の記事で詳しく紹介している。

参照記事

ポイント3:運用自動化、高度化の先にあるものとは?

 以上のような運用自動化を突き詰めていくと、「必要なときに、必要なリソースを、ユーザーがセルフサービスで調達できる」プライベートクラウド環境におのずと近づいていく。サーバー仮想化によるリソースプーリングは、プライベートクラウド化の入り口であり、その上で「標準化した各種運用プロセスを自動化」し、「任意のサービスを選択すれば自動的にサービスが実行、提供されるサービスポータル」を作り、「提供したサービスに対して自動的に課金するメータリング」機能まで実装すると、一般的なプライベートクラウドの定義を満たすことになる。

 今現在はキャリアやプロバイダーなどを除き、一般企業でここまで実現している例は非常に少ない。だが、いずれはプライベートクラウドを実現する企業、複数のパブリッククラウドとオンプレミスを組み合わせたハイブリッド環境を利用する企業が増加すると見られている。事実、IaaSは多くの企業に浸透しているし、プライベートクラウド環境を構築できるオープンソースソフトウエア、「OpenStack」も注目を集めるなど、「ビジネスに即応できるインフラ」の在り方は、いま多くの企業の関心を集めている。

参照記事

クラウド環境では「システム構成が変動する」ことを前提とした視点が不可欠

 では、こうしたクラウド環境を使う上で、運用管理では何がポイントになるのだろうか? それは「一度作ったシステムは変わらない」ことを前提とした静的な運用管理から、「システム構成が変動する」ことを前提とした動的な運用管理に視点を切り替えることにある。運用自動化はここでさらに大きな意味を持つことになる。

 例えば「オートスケーリング」機能への対応だ。一般に、クラウド環境では、負荷状況に応じて自動的にサーバーリソースを追加・削除するオートスケーリング機能が利用できる。だがこれを運用管理側から見ると、新しいサーバーが“いつのまにか”増減していることになる。

 そこで「サーバーの増減を認識し、最新のシステム構成を自動的に更新する機能」や、「監視、パッチ当てなどの運用管理対象に、新しいサーバーを自動的に組み入れる/自動的に運用対象から外す」といった仕組みが求められる。

 また、クラウド環境ではサーバー構築・設定作業も自動化することができる。この点については、作業手順をドキュメント化するのではなく、コードで作業手順を記述することで、ツールに自動的に構築・設定作業を実行させる「Infrastructure as Code」という概念が注目を集めている。すでに「Puppet」「Chef」など、サーバーの起動後、OSやミドルウエアの各種設定を自動化する構成管理ツールが実際に使われている他、構築についても必要なシステム構成をコードで記述しておくことで、自動的に構築できる機能を「AWS CloudFormation」や「OpenStack Heat」などが備えている。

 こうした技術により、人的ミスを抑えながらスピーディに必要なインフラを整備することができる。すなわち、冒頭で述べた「速くシステムを開発、リリースし、エンドユーザーの反応を見て改善/廃棄する」といった一連のフィードバックサイクルをスピーディに回すための自動化テクノロジが、着実に進展しつつあるのだ。

参照記事

ポイント4:これからの運用管理の在り方とは?

 さて、以上のように“ビジネスの動きに追従できる開発・運用”が強く求められている中で、運用自動化はその実現の柱となる非常に重要な取り組みとなっている。今現在も「まだ先のこと」「自社では難しい」といった見方は少なくないが、企業を取り巻く環境を見れば運用自動化が不可欠になっていくことは確実といえるだろう。

 これに伴い、運用管理業務にも新たな認識が求められている。各種運用作業をツールが行うようになることで、「作業を行うこと」自体ではなく、「どのように作業を行うか」「どうすればより効率的なのか」といったプロセスの策定・改善に、業務の価値が求められるようになる。

 開発においても、「言われたものを、言われたように作る」だけではなく、ビジネスへの積極的な寄与が重視されているが、それと同様に、運用管理も「システムのお守り」からの脱却とビジネスへのコミットが求められている。その点、運用自動化を考えることは、自動化によるコスト/工数の削減、開発成果物の迅速な展開など、運用視点から“攻めの施策を提示する”大きなトリガーになり得るのではないだろうか。

 ビジネスとITを取り巻く環境は日々変化している。今あらためて、ポジティブな視点で運用自動化を見つめ直してみてはいかがだろう。 

特集:運用自動化ツールで実現する、クラウド時代の運用スタイル

インフラ整備に一層のスピード・柔軟性が求められている今、仮想化、クラウドは企業にとって大きな武器となった。ただ運用管理を人海戦術で行うスタイルでは、そのメリットを生かし切ることは難しい。サーバー配備や監視など、あらゆる定型業務のミスを抑止し確実・迅速に行える「運用自動化」を取り入れることが、仮想化・クラウドを生かす大前提となるのだ――本特集ではツール導入の要件からOSS/商用ツールの使い方、ツール同士の比較まで、「運用自動化」を徹底的に深掘りする。




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