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CEOとCTOを兼務し戦略的課題に迅速に対応──「ガワ替え」ではないゲームで勝ち抜くことを目指すCTOに問う(6)gloops編(3/3 ページ)

CTOとは何か、何をするべきなのか――日本のIT技術者の地位向上やキャリア環境を見据えて、本連載ではさまざまな企業のCTO(または、それに準ずる役職)にインタビュー、その姿を浮き彫りにしていく。第6回はgloopsのCEO兼CTOを務める池田秀行氏にお話を伺った。

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この5年の間に、ゲームの規模が飛躍的に大きくなり、複雑化している

編集部 そもそもgloopsにはエンジニアは何人ぐらいいて、ゲーム開発はどのような体制で行われているのでしょうか?

池田氏 現在エンジニアの数は、社員の4分の1に当たる120〜130人。以前は、開発部や企画部というように、機能別に組織を構成していましたが、現在は、ブラウザーゲーム事業とネイティブアプリゲーム事業という大きな枠の中で、プロダクトごとにチームを構成して開発を進めています。その上で、どのような技術をどう使うのかについては、多くの権限をプロダクトチーム側に与えています。

 先ほど紹介したように、共通のフレームワークも提供してはいますが、それはごく薄い表層のものでしかありません。そうした体制の下で、企画者とエンジニア、デザイナーが力を合わせて切磋琢磨していかなければ、ユーザーに支持されるエンターテイメントを生み出すことはできないのです。

編集部 ゲームの開発とその後の運営は仕事の取り組み方が違うと思いますが、同じチームで開発と運営も担当しているのでしょうか?

池田氏 もちろん同じチームで担当していて、開発も運営も仕事のやり方に大きな違いはないと思います。実際に、ゲームをローンチしてから、ユーザーの活動に合わせて運営の方向が変わることも珍しいことではありませんし、開発サイドと運営サイドがお互いにベクトルを合わせてブラッシュアップしていかなければ成功は望めません。

編集部 ブラッシュアップに関連して、技術的負債の解消について、池田さんはどのように考えているのか、お聞かせください。

池田氏 ブラウザーゲームの提供を開始して会社が急成長した当時は、とにかくゲームを提供するスピードを最優先にしたため、技術的な負債が多く生まれていました。ただ、それも当時の決断としては、必ずしも悪い選択ではなかったと考えています。ゲームの場合、いくらきれいなアーキテクチャを追求したとしても、結果としてユーザーを待たせてしまうようでは、サービスを継続できないからです。

 しかし、この5年の間に、ゲームの規模が飛躍的に大きくなり、複雑化しているため、品質を高め、競争力を高める上でも、技術負債を解消する取り組みが重要な課題になってきていると感じています。

編集部 技術負債の解消に向けて、リファクタリングも実施されているのでしょうか?

池田氏 それはプロジェクトによりますね。例えば、長期にわたって運営しているゲームタイトルの場合は、何度もパッチを当ててアップデートを積み重ねていくうちにコードが複雑化してしまいましたが、これまでにも適切なタイミングで大規模なリファクタリングを実施したことが何度かありました。リファクタリングを実施するかどうかは、開発の現場がビジネスとの兼ね合いで決定します。

 ただし、ゲームの場合1つのコードベースをメンテナンスして延々と使い続けることはほとんどありません。そのため多くの場合は、以前のゲームプロジェクトで発生した技術的な負債を十分に検証した上で、その経験やノウハウを新しいゲームタイトルの開発に生かすという形で、技術的負債の最小化に取り組んでいます。

「ガワ替え」ではないグローバルに通用するモバイルゲームを

編集部 会社の事業全体として、今後どのような展望をお持ちですか?

池田氏 ブラウザーゲームの事業については、それなりの成果を出してきたと思いますが、一方でブラウザーゲームは、ゲームジャンルや文化がある一定レベルの成熟期に入ってきたという現状から、ある意味、自分たちで表現の幅を制限してしまっている部分もあると捉えています。とはいえ、ブラウザーでできることも日々進化しているので、今後はブラウザーゲームだからこその強みを最大化させるようなゲームの開発や最先端の技術的チャレンジを貪欲に行っていきたいです。

 ネイティブゲームの世界では、サウンドや3D、ネットワークなど、利用できる技術要素がブラウザーゲームに比べて数多くあり、できることが一気に広がります。ユーザーに新しい価値体験を提供するためには、これらの高度な技術を活用するためのチャレンジが必要ですね。ネイティブゲームの事業においては、これまで培ってきた技術的強みと共に、若いエンジニアとデザイナーの力を結集して、技術的なチャレンジを行いながら品質の高いプロダクトの提供を目指します。また、新しい開発スタイルも確立していきたい。

編集部 ネイティブゲームの市場では激しい競争が繰り広げられていますが、競争に打ち勝つためにどのような取り組みが必要だと思いますか?

池田氏 ブラウザーゲームが急成長した時代に限らないかもしれませんが、この業界は、内容はほとんど同じで外観のみを変更した、いわゆる「ガワ替え」しただけのゲームが量産され、その多くがプレーもされずに埋もれてしまっているという問題を抱えています。このように、「取りあえず流行しているからやっておこう」という安易なモノづくりではなく、新しいアイデアを具現化する品質の高いゲームの提供に向けて真摯に取り組んでこそ、本当の意味でユーザーに価値を認められるゲームを生み出せるのだと確信しています。

編集部 今後もゲームを中心に事業を展開していくのでしょうか?

池田氏 基本的にはそうですが、今後を見据えてゲームを中核としたモバイルエンターテイメントの新たな領域を作り出していきたいと考えています。

編集部 池田さん個人としてはどのようなことにチャレンジしたいですか?

池田氏 会社の目標とも重なりますが、グローバルに提供し、従来のゲームに比べて1桁多い数千万人規模のユーザー数を持つゲームを提供することです。グローバルな領域には、ぜひチャレンジしたいと思っています。

編集部 グローバル展開の際に注目している地域はありますか?

池田氏 展開する地域はプロダクトによって異なりますので、特定の地域に対するこだわりはありません。確かに言えるのは、親会社のネクソンが世界100カ国以上にゲームを配信していることからも分かるように、モバイルゲームの世界では国境がなくなりつつあるということです。

 特に、ゲーム性の高いプロダクトについては、ワールドワイドに受け入れられる余地があると思います。まずは、日本できちんとヒットするものを提供することが重要ですが、同時に世界を見据えたモノづくりを模索していきたいですね。

編集部 最後にエンジニアの方にエールの言葉をいただければと思います。

池田氏 エンジニアリングのスキルは幅広い領域に生かせると思いますので、やりたいことがある方は、臆せずに一歩踏み出してみてください。また、エンジニアに限らず、さまざまな職種の方とも積極的に話をして幅広い視野を持つことを恐れないでください。特に、現在は外の世界に飛び出しやすい環境だと思います。私もやりたいことがあって、SIerからスタートアップだったGMSに転職し、その結果CTOそしてCEOを兼務することになりました。やりたいことがある方は、ぜひ挑戦してみてください。

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