Office 2016を社内で展開する二つの方法:Office 365運用管理入門(11)(2/2 ページ)
Microsoft Officeの最新バージョンとなる「Office 2016」の提供が開始された。Office 365の管理者としては、Office 2016の新機能と変更点、社内への展開方法は確認しておきたい。
Office 2016を社内で展開する二つの方法
[方法その1]Office展開ツールを利用した展開
ここからは、企業内でのOffice 2016の展開方法を確認していこう。Office 365の管理者がユーザーにOffice 2016を展開する際には、「Office展開ツール」を利用するのが一般的だ。
Office 2016がリリースされたことで、Office展開ツールも新しいバージョンにアップデートされている。現在、Office 2013をOffice展開ツールで管理していても、Office 2016を利用する場合には新たなツールを以下のWebサイトからダウンロードする必要がある。
- Office 2016 Deployment Tool[英語](Microsoft Download Center)
上記のWebサイトからダウンロードしたファイルには、「構成ファイル(configuration.xml)」と「実行ファイル(setup.exe)」が含まれている(画面1)。
Office 2016展開ツールの「configuration.xml」は、SourcePath属性の記述が省略されているので注意しよう。SourcePath属性に正しくパス(UNCまたはローカルのフォルダー)を指定しなかった場合は、ダウンロードエラーが発生する。詳細は以下のトラブルシューティングを参照してほしい。
- Office展開ツール(ODT)を使用してOffice 365 ProPlus(2016)をダウンロードしようとすると、エラー 30015-1007(123)が発生してインストールできない(Microsoft Office 365 Community)
前述した更新モデルの選択では「Branch」属性に以下のいずれかを記述する。
- Current Branchを選択する場合:Branch=”Current”
- Current Branch for Businessを選択する場合:Branch=”Business”
- First Release for Current Branch for Businessを選択する場合:Branch=” Validation”
Office展開ツールの利用方法については、本連載第2回「Officeアプリケーションを展開する」を参考にしてほしい。
今回は、新しいOffice展開ツールを使ってローカルにOffice 2016をダウンロードし、インストールしてみる。管理者としてコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを実行する。
setup.exe /download <configuration.xml ファイルのパス>
数分で指定したフォルダーにOffice 2016がダウンロードされる。本稿執筆時点(2015年9月23日)では、ビルド番号は「16.0.4229.1024」となっている(画面2)。
続いて、以下のコマンドを実行するとOffice 2016のインストールが開始され、数分で完了する(画面3)。
setup.exe /configure <configuration.xml ファイルのパス>
Office 2013のインストールでは、解説画面の表示や「次画面へ」ボタンのクリックが必要だった。Office 2016では、インストール完了画面が表示されるまで、特に画面の確認やボタンをクリックすることもなく、放置しておくことができる(画面4)。
インストールが完了すると、Office 365 ProPlusで導入したOffice 2013からOffice 2016にインプレースアップグレードされていることが確認できる(画面5)。
[方法その2]グループポリシーを利用した展開
Office 2016では、「グループポリシー」を利用して展開することも可能だ。まずは、以下のWebサイトから「Office 2016用のグループポリシーテンプレート」(ADMX/ADMLファイル)をダウンロードする。
- Office 2016 Administrative Template files (ADMX/ADML) and Office Customization Tool[英語](Microsoft Download Center)
ダウンロードしたグループポリシーテンプレートをドメインコントローラーにコピーすると、「グループポリシー管理エディター」上の「コンピューターの構成」−「管理用テンプレート」に「Microsoft Office 2016」が表示される(画面6)。ここから「セキュリティ設定」や「更新」などをカスタマイズできる。
グループポリシーの詳細設定画面では、更新の制御やダウンロードする場所などを細かく指定することができる(画面7)。
これまでのOffice展開ツールは、XMLファイルベースで細かい属性を指定する必要があった。そのため、XMLファイルの扱いに不慣れな管理者にとっては難易度が高かったようだ。
Office 2016からは、Active Directoryの管理者であれば、なじみ深いグループポリシー設定のUIで操作できるため、より管理の幅を広げることができるだろう。
Office 2016では今回紹介した展開や更新方法の他にも、多要素認証の変更やADAL(Active Directory Authentication Library)のサポートなど、管理者が注目すべき機能が実装されている。次回以降、順次紹介していく予定だ。
- Azure Active Directory(Azure AD)
- Office 365のセキュリティとコンプライアンスをさらに強化する
- Office 2016を社内で展開する二つの方法
- 最新のディレクトリ同期ツール「Azure Active Directory Connect」でシングルサインオン環境を構築する
- Active Directoryのオブジェクトを「ディレクトリ同期ツール」でクラウドに同期する
- 「コンプライアンスセンター」でOffice 365のコンプライアンス管理を強化する
- OneDriveのセキュリティをRMSで強化する
- Office 365のモバイルデバイス管理機能
- Office 365のセキュリティを強化する「多要素認証」
- Office 365の監視とトラブル解決に使えるツール
- Exchange Onlineでメールのセキュリティ対策を設定する
- Officeアプリケーションを展開する
- Office 365のユーザーアカウントを作成する
筆者紹介
宮川 麻里(みやかわ まり)
株式会社IPイノベーションズ所属のマイクロソフト認定トレーナー。主に、Windows Server Active Directory、SQL Server、Office 365などを担当し、マイクロソフト認定コースや要望に沿ったカスタマイズコースを実施している。Microsoft MVP for Office 365(Jul 2015 - Jun 2016)を受賞。
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