統合データベース環境の運用効率化に「マルチテナント」と「Zero Data Loss Recovery Appliance」は使えるか?:データベースクラウドに求められる3つの要件(2)(3/3 ページ)
多数のデータベースを集約したプライベートクラウドの管理において、バックアップの運用をどうするかは悩ましい課題だ。データベースの数が多ければ当然、作業が煩雑になる他、作業ミスで重要なデータを失うリスクも高まる。Oracle Database 12cの「マルチテナントアーキテクチャ」と「Zero Data Loss Recovery Appliance」ならば、この問題をスマートに解決できる。[プライベートクラウド/データベース統合][高可用性/災害対策][Oracle Database 12c]
Oracle Databaseに特化したバックアップマシン「Zero Data Loss Recovery Appliance」
このように、Oracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャを活用すれば、データベースの運用管理の負担を大幅に軽減することができる。ただし、前述したように全てのデータベースをいきなり集約するのは現実的ではなく、実際には段階的に統合を進めることになる。それでは、運用管理作業で特に多くの工数が掛かっているバックアップの課題をすぐに解決できる方法はないのか? そこで活用をお勧めしたいのが、複数データベースのバックアップを集約することができる「Zero Data Loss Recovery Appliance」だ。
Zero Data Loss Recovery Applianceは、Oracle Databaseのバックアップに特化したエンジニアドシステムであり、ハードウェアとソフトウェアを一体化することで容易な導入を実現している他、バックアップの負担を軽減する数多くの仕組みを備えている。
Zero Data Loss Recovery Applianceが目指しているのは、既存のバックアップ手法が抱えるさまざまな課題を解決し、データベースのバックアップに最適なソリューションを提供することだ。
具体的な課題としてまず挙げられるのは、データ損失のリスクである。バックアップ取得後にREDOファイルまで破損するようなトラブルが発生した場合、復旧できるのは当然ながら最後にバックアップしたデータまでであり、それ以降に更新されたデータは失われたままとなる。
バックアップウィンドウの問題も悩ましいところである。昨今、多くの企業ではデータベースの拡大に伴ってバックアップ時間が延び、週次のフルバックアップがウィンドウ内に収まらないといった問題が生じている。根本的な解決策はウィンドウの拡大だが、それによって業務に影響が生じたのでは元も子もない。
データベースを正常に復旧できないリスク、複数のバックアップシステムを管理する煩雑さも大きな課題であろう。特に前者は、障害発生によって多くのデータを失うことにつながるため、看過できない問題である。
バックアップウィンドウの課題を解決する「Delta Store」
Zero Data Loss Recovery Applianceには、これらの課題を解決するための仕組みが盛り込まれている。
まず一般的なバックアップソリューションと大きく異なるのは、日々のバックアップを保存するだけでなく、データベースから出力されたREDOログを記録する「リアルタイムREDOトランスポート」機能を備えている点だ。これは、REDOログを使ってデータベースを同期する「Oracle Data Guard」と同様の仕組みだと考えれば分かりやすい。この機能により、バックアップ後にデータベースがクラッシュした場合でも、REDOログの内容をデータベースに反映することで、データ損失をほぼゼロに抑えることができる。
フルバックアップを取得するのは初回だけであり、以降は増分バックアップだけを取得することで迅速化を図っていることも、Zero Data Loss Recovery Applianceの大きな特徴だ。これを実現しているのが「Delta Store」と呼ばれる独自の仕組みである。
Zero Data Loss Recovery Applianceでは、送られてきたバックアップデータを小さな単位(ブロック)に分割し、それぞれに索引を付けて検査および圧縮を行った上で格納する。ブロックを管理するための索引データはカタログデータベース上に保持しており、増分バックアップで新たなデータが送られてくると、同様の処理を行って新たなブロック情報をカタログデータベースに書き込む。そして、リカバリが必要になった際には、カタログデータベースの内容を参照して必要なブロックを組み合わせ、仮想的なフルバックアップデータを作り出すという仕組みだ。
これにより、Zero Data Loss Recovery Applianceではフルバックアップのためのウィンドウを確保する必要がないという大きなメリットを生み出している。また、転送するデータ量もフルバックアップより小さくなるため、広帯域のネットワークがなくても大規模なデータベースのバックアップを取得することが可能となっている。
Zero Data Loss Recovery Applianceに、さまざまなデータベースのバックアップ環境を集約
取得したバックアップで確実にデータベースを復旧できるかどうかを自動的に検証する機能を備えていることも、Zero Data Loss Recovery Applianceならではの特徴である。この検証は、取得したバックアップデータを使ってZero Data Loss Recovery Appliance内で疑似的にリストアすることで行われる。
ご存じの通り、Oracle Databaseにもバックアップデータを検証する機能が備わっている。ただし、この機能を使った場合はデータベースサーバのリソースを消費する他、ネットワークI/Oにも影響が及ぶ。これに対して、Zero Data Loss Recovery Applianceではデータベースサーバやネットワークに負担を掛けず、自動的に検証が行われる点が大きな違いである。
さまざまなデータベース環境をサポートしていることも、Zero Data Loss Recovery Applianceの利点の1つだ。Oracle Database 10g R2、同11g、同12cに対応している他、Standard EditionとEnterprise Editionのいずれもバックアップできる。プラットフォーム(OS)も、Linux、Windows、Solaris、AIX、HP-UXのそれぞれをサポートしている。そのため、バージョンやプラットフォームが異なる複数のデータベース環境を同じ手法でバックアップすることが可能であり、作業を大幅に簡素化できるというメリットをもたらす。
なお、Zero Data Loss Recovery Applianceは最小構成で94TB分のバックアップを取得可能な他、ストレージサーバを追加することにより1ラックで最大580TB、複数のラックを使えば最大約10PB分のデータベースをバックアップできる。これだけの拡張性があれば、大規模なデータベース環境にも十分に対応できるだろう。
Oracle Database 12cのマルチテナントアーキテクチャを活用したデータベース統合、プライベートクラウド環境への移行は、バックアップ運用の負担軽減というメリットをもたらす。複数のデータベースのバックアップをまとめて取得することが可能であり、それぞれのデータベースを個別にリカバリするなど、柔軟な運用を実現できるからだ。
ただし、現実にはデータベース統合は段階的なアプローチで進められるため、統合を完了するまでにはある程度の期間を要する。その前に、今すぐバックアップ運用の負担を軽くしたいという場合に有効なのがZero Data Loss Recovery Applianceであり、これによってバックアップ環境の統合を図ることができる。データベース統合やプライベートクラウド環境の構築を検討している企業は、ぜひマルチテナントアーキテクチャと併せてZero Data Loss Recovery Applianceもご活用いただきたい。
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