鍵が異なる暗号化データを復号せずに照合可能、富士通研究所が開発:安全なデータ交換取引の実現に弾み
富士通研究所と米Fujitsu Laboratories of America(FLA)は、異なる鍵で暗号化したまま復号することなく、IDや属性値などを照合可能な暗号化技術を開発した。
富士通研究所と米Fujitsu Laboratories of America(FLA)は2016年2月15日、新たな暗号化技術を開発したと発表した。複数組織の情報を異なる暗号鍵で暗号化したまま、復号することなく、IDや属性値などを照合可能な暗号技術で、同社によると世界初だとしている。これまでも、復号することなく暗号化データを照合する技術はあったものの、それらは共通の暗号化鍵を使用している場合に限られていた。
富士通研究所らが開発した暗号技術では、照合用の鍵ではデータを復号できない。そのため、例えば、複数の病院の間で検査情報や診療記録を連携する際など、クラウド上でも秘匿性を保ったまま複数組織のデータを安全に照合できるとしている。
両社が開発したのは、異なる暗号鍵で暗号化した文字列を、クラウドを介して照合する技術。FLA独自の「暗号化された情報同士の一致の程度を計算する関係暗号理論」を応用した。組織ごとに異なる暗号鍵で暗号化した検索対象文字列と検索文字列を、照合用のクラウドサーバ上で、暗号化したまま検索対象文字列ごとに検索文字列との一致/不一致を照合できる。これらの文字列は、ハッシュ関数と同様の効果のある一方向性関数で暗号化してある。そのため、暗号化に用いた鍵でも復号できない。照合結果も暗号化されており、データを復号するには専用の照合鍵が必要となる。
富士通研究所の検証によると、一般的なPCを用いた場合でも0.02秒で1件の文字列を照合できることを確認したという。同技術では、完全一致だけでなく、文字列同士で数ビットの違いを許容した近似照合も可能。金融や教育、行政、マーケティング、特許調査など、これまで個人情報や企業秘密などの情報漏えいに不安があった検索用途にも適用できるとしている。
富士通研究所では、同技術のさらなる高速化やデータサイズの圧縮などを進め、2016年度内の実用化を目指す。
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