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仕様書と通信方法が違うから、1銭も払いません!――全ベンダーが泣いた民法改正案を解説しよう その2:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(32)(2/4 ページ)
IT紛争解決の専門家 細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。民法改正がIT業界にもたらす影響の解説、第2回は「成果物」についての変更点を取り上げる。
成果物の一部納品でも費用を請求できるのか?
まずは改正案を見てみよう。
第六百三十四条
次に掲げる場合において、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その部分を仕事の完成と見なす。この場合において、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき。
二 請負が仕事の完成前に解除されたとき。
今までは、請負開発とは「完成した成果物を全て引き渡すことにより報酬を請求できる」というのが原則だった。
もちろん実際の現場では、成果物に多少の欠落があっても、報酬の一部か全額かを支払われることはあったが、法律上は、約束した機能の99%を作り上げても、残り1%の未完成を理由にユーザーが支払いを拒むこともできたのである。
以下のような判例も出ている。
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