映像解析技術で世界をより良くする――エンジニア出身社長を突き動かすたった1つの想い:Go AbekawaのGo Global!〜Abhijit Shanbhag編(3/3 ページ)
イメージや動画の解析技術を提供し、シンガポールの犯罪減少に寄与するソフトウェアを開発しているテクノロジー企業の代表が常に持ち続けている“純情”な想いとは――。 ※日本のエンジニアへのアドバイス動画付き
5%の冒険を!
阿部川 日本のエンジニアと一緒に仕事をするのは楽しいですか?
アビジットさん もちろんです、最高ですよ! 日本のエンジニアは優秀な方が多く、仕事を決まったプロセスにしっかりのっとって行う姿に常に感心させられています。
阿部川 日本の若いエンジニアにアドバイスをいただけますか?
アビジットさん 実績のあるプロセスに基づいて業務を進めることも大切です。しかし、ときにはその枠を超えて仕事にメリハリを付けることも大切です。
日常業務のほんの少し、5%程度で構わないので、決まった方法では“ない”方法にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。常識を覆すようなクリエイティブなアイデアは、従来なかった常識を超えたところから生み出されるからです。プロセス度外視、予算や時間などの制約も一切取り払って、どのようなプランができるかを考えてみるといいと思います。
阿部川 日本のエンジニアがグローバルな市場で勝ち続けるために必要な考え方ですね。
アビジットさん その通りです。1日のうちの5%とはいえ、従来の枠組みを壊す思考を行えば、日本のエンジニアが世界に誇ってきた効率的なワークフローを、より革新的なものに進化させられると思います。
Go's think aloud〜インタビューを終えて
日本語であいさつしてくれる海外の方は以外と少ない。しかしアビジットさんは破顔一笑、元気に「コンニチハ!」と言ってくれた。
「グローバル化とは何か」などと大上段に構えなくとも、あいさつ1つで人の心はつかめる。それこそがグローバル化の第1歩だ。秘訣(ひけつ)は世界共通。元気なこと、笑顔でいること、そして相手の親しんでいる言葉で懐に入ることだ。
常識を超えた、破壊的なこと――インタビューでは「disruptive(破壊的な)」と表現した。ご承知のように、今多くの業界でdistuptersが活躍している。UberやAirbnbなどがその代表例だが、GoogleやAppleが自動車業界に参入するのも、その中に含めていいだろう。IT業界では「旬な」用語だ。
1日8時間の業務時間の5%を「25分」だと仮定する。現在インドのエンジニアは「150万人」。彼ら全員が1日25分をdisruptive ideaのために使えば、ざっと計算すると「2万6000日」、実に「70年分」近くもの時間が「革新」のために使われることになる。
そこから生まれた競争力、変革力は既に現実のものになっていて、米Microsoftをはじめとした、少なからぬ大手グローバル企業が、インド出身のCEOたちによって率いられている。
映像コンテンツのサーチや編集を劇的に変える、まさにdisruptiveな発想から生まれたこの企業の、次の一手が楽しみだ。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。
編集部より
「Go Global!」では、インタビューを受けてくださる方を募集しています。海外に本社を持つ法人のCEOやCTOなどマネジメントの方が来日される際は、ぜひご一報ください。取材の確約はいたしかねますが、インタビュー候補として検討させていただきます。
ご連絡はこちらまで
@IT自分戦略研究所 Facebook/@IT自分戦略研究所 Twitter/電子メール
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 今の日本には、「人工知能」に関する研究を社会実装につなげるエンジニアが必要
「画像解析」は、近年の「人工知能」と呼ばれる技術によって品質とスピードが著しく向上している分野の1つだ。画像解析エンジンを独自に開発し、生体認証をはじめとしたさまざまな分野に応用しようとしている日本のベンチャー企業にLiquidがある。代表の久田康弘氏に、Liquid設立の経緯や、「人工知能」に対する考え方について聞いた - 女子高校生AI「りんな」や食べ物画像判定サービスに見る、精度向上の鍵とは
多くの人々にとって身近な存在になりつつある「人工知能」。「Microsoft Innovation Day 2016」で紹介された、2つのサービスを取り上げることで、要素技術や課題、応用分野、活用業種などを考察する - Deep Learningが人工知能の裾野を拡大。ビジネス、社会、エンジニアはどう変わるのか?
「アクションを起こすスピード」「イノベーティブな製品・サービス」が企業競争力の源泉になりつつある中で、人工知能が今あらためて大きな注目を集めている。では、人工知能とはどのようなもので、どのようなインパクトをもたらすのか? 事例やインタビューを通じて明らかにする - ニューラルネットワーク、Deep Learning、Convolutional Neural Netの基礎知識と活用例、主なDeep Learningフレームワーク6選
最近注目を浴びることが多くなった「Deep Learning」と、それを用いた画像に関する施策周りの実装・事例について、リクルートグループにおける実際の開発経験を基に解説していく連載。初回は、ニューラルネットワーク、Deep Learning、Convolutional Neural Netの基礎知識と活用例、主なDeep Learningフレームワーク6選を紹介する - 「日本人もインド人もインドで学ぶ」――ゾーホーが実践するグローバル人材育成
時代を読む力は、生き残れるエンジニアの必須条件である。本連載では、海外と深い接点を持つ人物へのインタビューをとおして、IT業界の世界的な動向をお届けする。ITエンジニア自らが時代を読み解き、キャリアを構築するヒントとしていただきたい