クラウドBCP/DR対策を手軽にするAzure IaaS VMの「クロスリージョンDR機能」がパブリックプレビュー段階に:追加インスタンスなしに既存のサブスクリプションで使える
「Azure Site Recovery」で提供されるBCP/DR対策機能が強化。Azure IaaS VM(仮想マシン)向け「クロスリージョンDR機能」のパブリックプレビュー版が公開された。
Microsoftは2017年5月31日(米国時間)、Microsoft Azure(以下、Azure)の障害復旧サービス「Azure Site Recovery」で提供されるAzure IaaS 仮想マシン(以下、Azure IaaS VM)向けDR(Disaster Recovery:災害復旧)機能のパブリックプレビューを公開した。
この機能は、Azure上に構築したインスタンスを異なるAzureリージョンへレプリケートし、クラウドベースでのDR対策を容易にするもの。既存のサブスクリプションで、追加のインフラコンポーネントやソフトウェアアプライアンスをデプロイすることなく利用できるという。
また、このDR機能とAzure VM向けデータバックアップサービス「Azure Backup」を併用することで、Azureに構築した環境に対して包括的にBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)とDR対策を実施できるようになる。例えば、ISMS(Information Security Management System:情報セキュリティマネジメントシステム)の標準となる「ISO 27001」が求めるコンプライアンス要件では、BCP計画の一環として「証明可能なDRソリューションを運用していること」が必要とされる。これらの機能を的確に活用することで、この要件を満たせるという。
主な特長は以下の通り。
サービスとして提供される
このDR機能は、新たなインスタンスの追加なしに既存のAzureサブスクリプションで利用できる。サービスとして提供することで、DR対策のためのデプロイ、監視、パッチ管理、メンテナンスなどに伴う工数増を低減できる。
簡単に利用できる
利用開始手順は以下の通り。
- アプリケーションのクロスリージョンDR設定を有効にする
- 保護したいインスタンスを選択する
- レプリケーション先のAzureリージョンを選ぶ
- レプリケーションの設定を一覧から選ぶ
アプリケーションを意識した復旧が可能
Azure Site Recoveryでは、アプリケーションオーナー、DR管理者、マネージドサービスプロバイダーのそれぞれが常に管理を維持でき、いつ、どのようにフェイルオーバーを実行するかを指定できる。RPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)とRTO(Recovery Time Objective」目標復旧時間)の設定を軸にしたビジネス要件に求められる復旧プランを設計できるようになっている。
ビジネスに支障なく、DRの演習が可能
Azure Site Recoveryにはフェイルオーバーのテスト機能も用意される。本番稼働中のワークロードや実行中のレプリケーション作業に影響を与えずに、手軽にDRの演習が行える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- クラウドを活用したBCP/DR対策が、そのままハイブリッドクラウドへの“入り口”に
地震や台風などの自然災害だけでなく、さまざまな業務リスクをカバーする事業継続計画(BCP)/災害復旧(DR)対策。クラウドでこれを実現するのが「Microsoft Azure Site Recovery(ASR)」だ。ASRではシステム全体を丸ごとクラウドへ複製するため、“クラウドへの入り口”としても活用できる。 - Azure Site Recoveryは災害対策の“切り札”となるか?
マイクロソフトが「Microsoft Azure Site Recovery」のプレビュー提供を開始した。このサービスは、オンプレミスの仮想マシンのレプリカをMicrosoft Azure上に作成してバックアップする災害対策ソリューションになる。 - ランサムウェア被害に向け、FBIが企業に示した「最低限のバックアップ対策」とは
FBIが発表したランサムウェア攻撃に対する企業向けガイドラインを踏まえ、マイクロソフトがランサムウェア攻撃に関する現状と課題を解説。あらためて両者が伝えた、「最低限のバックアップ対策手段」とは何か。 - DRBD 9環境の構築をAnsibleでサクッと自動化する
DRBDを軸に、データを遠隔地にも即時複製して万が一の事態に備える「冗長化/高可用性システム」の構築テクニックを紹介する本連載。今回は、DRBDの最新版「DRBD 9」環境をOSSの環境構築自動化ツール「Ansible」を使って簡単に構築する方法をお届けします。