村田製作所がSCMのデータベース基盤を汎用機からOracle Exadataに移行 バッチ処理性能が大幅に改善:データベース移行テストはOracle RATで効率化(2/2 ページ)
村田製作所は、汎用機で運用していたSCMのデータベース基盤を「Oracle Exadata」に移行。事業拡大に伴い、窮迫していた夜間バッチ処理の性能を大幅に改善するとともに、データベースの安定稼働を実現した。[プライベートクラウド/データベース統合][Engineered System]
Oracle RATを活用してDBアップグレードのテスト工数を大幅削減
Oracle Exadataの導入を決めた後、6月からデータベースの移行作業がスタートするが、この中でOracle Database 11g R2から同12cへのアップグレードも実施している。この作業を効率化する目的で活用されたのが、データベーステストツール「Oracle Real Application Testing(以下、Oracle RAT)」である。
Oracle RATには、「SQL Performance Analyzer」と呼ばれるツールが用意されている。これを使うことにより、本番環境で実行されているSQLのワークロードを“キャプチャー”し、その内容をテスト環境など別環境で“リプレイ”して本番環境との差異を検出し、レポートとして出力することができる。データベースアップグレードなどにおけるSQLテスト作業の多くを自動化し、移行作業の期間と負担を大きく軽減するツールとして注目されている。
基幹系データベース基盤を担当する情報システム統括部の三坂太郎氏(情報技術企画部 情報技術・品質保証課 シニアスペシャリスト)は、Oracle RATの活用を決めた経緯について、「人手によってテストを実施する場合とOracle RATによってテストする場合のコストを比較したところ、ライセンス料を考慮してもOracle RATを使ったほうがコストを削減できることが分かり、採用を決めました」と話し、次のように続ける。
「今回のアップグレードに携わったデータベースチームのメンバーはわずか3人でしたが、Oracle RATを使ったことにより、約3万5000本のSQLのテスト/修正を2カ月で終わらせることができました。Oracle RATによるテスト結果を受け、全体の約1%のSQLをOracle Database 12cに合わせて修正しています。今回のテストを通じてOracle RATの有効性を確認できたため、今後もOracle Databaseのアップグレードやパッチ適用を行う際には積極的に活用していきます」
このデータベース移行作業では、日本オラクルのコンサルティングサービスである「Oracle Consulting Service」も活用している。その理由として、三坂氏は「Oracle Database 12cを使うのは初めてだった他、テストに十分な数のメンバーを割り当てるのが難しかったため、プロフェッショナルの力を借りようと考えたのです」と明かす。
また、そもそも三坂氏はOracle Databaseに関して豊富な経験と知識を有していることから、支援に入る外部スタッフにも高いレベルを求めていた。その要件に合致したのがOracle Consulting Serviceだったわけだ。実際に同サービスを利用した感想として、三坂氏は「何か分からないことがあったとき、問い合わせに対して即座に回答をいただけたことで、プロジェクトをスムーズに進められました。Oracle Consulting Serviceを利用したのは正解でしたね」と高く評価している。
Oracle Databaseの累積パッチを定期的に適用し、安定稼働を実現
こうしてデータベースの移行/テスト作業を2015年7月から12月の期間で実施すると、2016年1月にカットオーバーを迎える。新たなデータベース基盤では、本番環境となる西日本データセンターに3台のOracle Exadata X5-2を据え、それぞれ本番機、サイト内バックアップ機、開発/検証機として利用している。また、災害対策として東日本データセンターにもOracle Exadata X5-2を設置。「Oracle Active Data Guard」によって本番機との間でデータレプリケーションを行い、万一の事態に備えている。
カットオーバー後、Oracle Exadataは安定して稼働しているという。この安定稼働を継続するために、村田製作所ではOracle Databaseの累積パッチ(Patch Set Release)を定期的に適用することを決めた。
「提供される各パッチでどのような不具合が修正されているのかを見ると、将来的に当社のシステム環境でも起きる可能性のある問題が含まれています。そこで、定期的にパッチを適用することでトラブルを未然に防げると判断し、運用の中にそのための作業を組み込みました」(三坂氏)
Oracle Exadataを利用しているのは基幹系システムのデータベースであるため、当然ながら簡単に停止することはできない。村田製作所では、サイト内のバックアップ機を利用することで、システムを止めずにパッチを適用できる仕組みを整えている。また、開発/検証機でパッチを検証し、問題のないことを事前に確認する。このような環境を整えていることも、Oracle Exadataの安定稼働につながっているようだ。
夜間バッチ処理の性能が大きく向上し、トラブル発生時の対応時間も確保
汎用機からOracle Exadataに移行したことで、村田製作所はさまざまなメリットを手にした。これについて、情報システム統括部の久保誠二氏(情報技術企画部 情報技術・品質保証課 シニアマネージャー)は次のように話す。
「夜間バッチ処理の予定時間には、トラブル発生時の対応時間も含まれています。以前の環境で処理性能が窮迫していたときは、このトラブル対応時間を十分に確保できず、何か問題が起きた際には即座に対応することが求められる厳しい状況が続いていました。しかも、その作業が遅れてしまうと翌朝からのオンライン処理を開始できないため、大きなプレッシャーもありました。しかし、現在はOracle Exadataに移行したことで余裕が生まれ、対応時間も十分に確保できるようになっています」
なお、夜間バッチ処理にかかる時間は、単体の処理で見ると約30%の性能改善が図られ、処理全体で見ても20%ほど短縮されている。オンライン処理の開始に間に合うかどうかという瀬戸際の状態が続いていた以前の状況を踏まえると、Oracle Exadataの導入によるバッチ処理高速化の恩恵は極めて大きいと言えよう。
もう1つ、Oracle Exadataの大きな導入効果として挙げられるのがトラブル発生時の対応だ。
「従来の汎用機では、そもそも利用しているユーザー企業数が少ないこともあり、問題が発生した原因が分からないということが少なくありませんでした。一方、Oracle ExadataはLinuxベースであり、すでに多くの企業が利用しています。そのため、何か問題が起きても同様のトラブル事例があることが多く、それを参考にして問題解決までの時間を短縮することができます」(三坂氏)
このように、Oracle Exadataへの移行によってさまざまなメリットを得た村田製作所だが、オラクルに対する期待と要望はまだ尽きないようだ。名和氏は次のように話す。
「オラクルには、今後も高性能かつリーズナブルな製品を出し続けて欲しいですね。また、当社は個々のアプリケーション開発のボリュームが大きく、そのタイミングによって使用するITリソースが大幅に増減します。そのため、使いたいときにすぐ使えて、なおかつ使った分だけ料金を支払うといったフレキシブルなサービスがあるとよいですね」
オラクルでは、こうしたニーズに応えるサービスとして、Oracle Exadataをパブリッククラウドで提供する「Oracle Database Cloud - Exadata Service」のほか、オラクルが運用管理するOracle Exadataを企業のオンプレミス環境でサービスとして利用できる「Oracle Cloud at Customer」などを提供している。基幹データベースを汎用機からOracle Exadataに移行した村田製作所が今後、これらのサービスも含めオラクルのソリューションをどう活用していくのか、引き続き注目したい。
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