開発費5000万円、売り上げ10万円!――オリジナルプロダクト開発に失敗し続けたシステム開発会社の今:開発残酷物語(8)(3/4 ページ)
トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探る本連載。今回は未経験分野のゲーム分野に勢いで参入して、火だるまになった事例を紹介します。
ゲーム以外の分野でも、チャレンジ(というか無謀)!
良かった良かった、と山本氏がうなずいていると、島田氏が「実は……」と切り出した。何とスタイル・フリー社は、ゲーム以外のプロダクトでも「やらかして」いたというのだ。
「事前リサーチが足りず失敗しました。企業や団体などB2B向けのトークアプリを企画、開発したのですが……」(島田氏)
同社には当時、「業界ウォッチ」という認識が一切なかったという。「こういうの、あったらいいよね」という社内のメンバーのノリで開発をスタートし、完成したら営業して回るというスタンスだった。
「営業が売り込みに行ったら『そういうの、もうあるよ』と言われ、慌てたという……」(島田氏)
「お客さんから指摘されるのはツラいですねぇ」(山本氏)
世の中には既に「Chatwork」に代表される競合製品が出回っており、多くの企業は、導入済みか、導入できない事情があるか、導入する必要がないか、のいずれかという状況だったのだ。
「後発が参入するのは厳しい世界でした」(島田氏)
「それでも、2000年代にはやった『ポストペット』のように、ユーザーに引っ掛かるフックのようなものがあれば、競合を押しのけられる可能性もあるのですが……」(山本氏)
「なかったですね。チャレンジというより無謀でした」(島田氏)
島田氏が代表となってからは、予算が発生するものは、事前に取締役会に諮り、承認を得てから推進していくスタイルにしたそうだ。きちんと事前のリサーチも行い、事業計画や予算も吟味されるようになったので、同じ失敗は二度と繰り返すこともない(だろう)。
そんな同社が現在注力しているのがメディア事業だ。その中でも旅行メディア『itta』はイチ推しのコンテンツである。「旅好きライターたちの『行った!』を感じる――思わず誰かを旅行に誘いたくなる旅のしおり」という同メディアは、現在順調に読者数を増やしている。
「マネタイズはまだこれからですが、旅行というテーマだけに可能性は広い。現在、いろいろなプロモーションも検討しています。数々の失敗を乗り越えて、ようやく生まれた自社オリジナルコンテンツということもあり、何とか成功させたいと考えています」(島田氏)
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