開発費5000万円、売り上げ10万円!――オリジナルプロダクト開発に失敗し続けたシステム開発会社の今:開発残酷物語(8)(2/4 ページ)
トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探る本連載。今回は未経験分野のゲーム分野に勢いで参入して、火だるまになった事例を紹介します。
3度の失敗にも懲りずに、まだまだチャレンジ!
「『次いってみよう!』ということで、その後、立て続けに2本失敗しました」(島田氏)
「……は?」(山本氏)
1本目を担当したディレクターやプログラマーが退職したため、別のディレクターを外部から雇い入れ、新たなカード型バトルゲームと、エンターテインメント系ゲームをリリースした。もちろんコストは抑え気味にしたという。
「2本目のゲームは開発費を1500万円まで圧縮したのですが、売り上げも下がり、5万円ほどでした(苦笑)」(島田氏)
「セクシーですねえ」(山本氏)
しかし、学びもあった。島田氏は3度の失敗を経験して「制作サイドの熱量」に注目するようになったのだ。
ゲームを「創る」とは、作りたいものを作ることではない。「作って納品して終わり」ではなく、「そのゲームをユーザーがどのように利用するか」「今後どう育てていくか」という視点を持って初めて、ゲームを創れる。それにはゲームの行く末にコミットするエンジニアの「熱量」が必要だと考えたのだ。
2017年に「4本目」となる自社オリジナルゲーム『OTOGAMI-オトガミ』をリリース。今度は生え抜きの社内人材を登用して、リスクを大幅に軽減した。また、「熱量」のあるエンジニアを起用することで、運用まで見据えた企画を立案できたという。
「ソーシャルゲームでは珍しい音ゲーということもあり、ゲーム専門サイトでも取り上げられるなど、そこそこのプレゼンスを発揮しました」(島田氏)
イベントなども展開し、一定のコアなファン層の心をつかんだ。しかし、ビジネス的に「成功したか」といえば、そこまでには至っていないという。
「これだけ失敗が続くと、さすがにショックも大きいですよね?」(山本氏)
「そうですね。でも今、5本目を作ってるんです。懲りないんです(笑)」(島田氏)
「……は?」(山本氏)
2017年に島田氏は同社代表に就任した。これまでの失敗を端で見続けていたのだから撤退を決断してもよいと思うのだが、島田氏はオリジナルゲーム開発をやめるつもりはないという。
「『いつか自分たちの手でゲームを作って成功させたい』というエンジニアたちの想いがある限り、続けていきたいんです。おかげさまで、予算をかけずに作るノウハウや、組織作りの面は整ってきました。また、『MAU(月間アクティブユーザー)を伸ばす』などの初期にはなかった発想も、今はしっかり持っています」(島田氏)
5本目は、新卒4年目のエンジニアがプランナーを務め、新卒1年目のプログラマーたちが実装を進めているという。
「ゲーム開発は自社のブランディングにもつながるし、何よりエンジニアたちの希望なんです。単純な損得だけで片付けたくないし、試行錯誤する中からヒット作が生まれたらうれしいです」(島田氏)
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