ユーザーはなぜ、自社のシステム開発に協力しないのか:本業が忙しいから、お手伝いはできないよ(2/4 ページ)
「受け入れテストのデータを作ってください」「ウチがやるの?」――IT“業界”解説シリーズ、第4弾はユーザー企業の「なぜ?」を解説します。
なぜベンダーに任せてしまうのか
ユーザーはなぜ、自社にとって大切なITシステムの導入をベンダー任せにしてしまうのでしょうか。
会議への出席やユーザー側意見の調整と取りまとめ、情報提供や各種の判断、そしてITに関しする低限の知識を得るための勉強、そうしたことを十分に行わないのはなぜなのでしょうか。
「『本来の業務』が忙しくて、とてもそれどころではない」――こんな言葉をよく聞きます。
確かに、それも分からないではありません。ITシステム導入に協力する気持ちはあっても、自分たちのお客さまへの対応、企画書、商談、見積もり、受注処理、製造、納品……ユーザーの担当者からすれば、自社のITシステムよりも大切に思える作業が山のようにあるのも事実です。
しかし現在、多くの企業や組織で、ITシステムは血液であり骨格です。特にデジタルトランスフォーメーションが叫ばれる昨今は、デジタルとそれを実現するIT技術により、これまでにない仕事の仕方を実現したり、イノベーションを起こしたり、業務の効率化、働き方改革を行ったりすることが、企業の存続すら左右しかねない重要な問題になりつつあります。
「新しい業務の姿やサービスデザインをユーザー自身が考え、ベンダーにはそれを手伝ってもらう」という考え方が必要であり、「後は専門家さん、よろしく」などという姿勢は、企業にとって「自殺行為」と言ってもいい時代になっているのです。
よろしく系の企業からは、デジタルを起点としたイノベーションは起きないでしょうし、業務プロセスの改善やコスト削減もおぼつかないことでしょう。ITをうまく活用しているライバルに差をつけられて、経営に深刻な影響を与えることにもなりかねません。これは、程度の差はあれ誰もが理解しているはずです。
それにもかかわらず、実際にプロジェクトを始めてみると、「本業が忙しいから」と十分に関与してくれないユーザー企業の担当者の数は一向に減っているようには思えません。
ベンダーに「じゃあ、顧客企業の規模や地域から見込み客を絞り出してリスト出力すればいいんですね?」と尋ねられ、「多分それでいいのだけれど、ちょっと周りに確認してみる」と答えたきり、いつまでも調整しないユーザー。「受け入れテストのデータはそちらで作るんですよね?」と言われて、「ウチがやるの?」と驚くユーザー――こんなユーザーたちが、使えないシステムを抱えて立ち尽くす姿を、私は嫌というほど見てきました。
一体、なぜこんなことになってしまうのでしょうか? どうしたら、もっとユーザーが参加してくれるようになるのでしょうか?
関連記事
- IT業界の仕組みと偽装請負の闇を分かりやすく解説しよう
上流企業のエンジニアは、プログラミングを行わないって本当?――IT業界への就職/転職を考えている学生や若手エンジニアに贈る、エンジニアとして希望通りのスタイルで活躍するために知っておきたいIT業界の仕組みと慣習、そして自分に合ったIT企業の選び方 - 多重下請け構造であえいでいるエンジニアが知っておきたいIT業界の仕組み
わが社は、なぜ頂点を、せめて少しでも上のポジションを目指さないのだろうか――IT業界解説シリーズ、第2弾は「多重下請け構造」の闇に迫ります - システム開発プロジェクトに存在する複数種類の契約形態
受託、派遣、準委任???――IT業界解説シリーズ、第3弾はシステム開発プロジェクトに混在する複数の「契約形態」を解説します - 最低限の知識も理解もないユーザーと渡り合うには?
「出荷管理をシステムを発注したにもかかわらず、勘定科目を把握していない」「意見を社内でまとめず、五月雨式に投げてくる」「モックを本番と勘違い」――こんなユーザー、あなたならどうする? - SESで働いているけど、客先から直接指示を受けています。これって違法ですか?
契約外の作業だけどやってください、契約の金額内でね――IT訴訟事例を例にとり、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する人気連載。今回は、「請負」「派遣」「SES(System Engineering Service)」、そして「偽装請負」について考える - 請負だって聞いていたのに、これじゃあ人材派遣じゃないですか!
作業指示はこちらが出します。成果物の責任はとってください。え、派遣と請負のいいとこどり? どこでもやってることじゃないですか――IT訴訟事例を例にとり、システム開発にまつわるトラブルの予防と対策法を解説する人気連載。今回は、契約が請負なのか派遣なのかが争点となった裁判を紹介する
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.