Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004)のSysprep済みカスタムイメージを作成する方法:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(82)
Windows 10では、イメージ展開のための技術である「Sysprep(システム準備ツール)」をこれまで通り利用可能です。しかし、Windows 10に搭載された新機能や仕様変更の影響を考慮しないと、イメージの一般化に失敗することがあります。以前にも紹介しましたが、一般化を必ず成功させる方法やヒントを、最新の「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004、ビルド19041)」を用いて紹介します。
Sysprepだけじゃない、Windows 10のイメージ展開の手法
本連載でも説明してきましたが、「Windows 10」には「プロビジョニングパッケージ」や「Windows AutoPilot」といった新しい展開技術が搭載されており、「Microsoft Endpoint Configuration Manager」(旧称、System Center Configuration Manager)や「Microsoft Intune」「Microsoft Store for Business」などと組み合わせることで、さまざまな方法でイメージを展開できます。
マスターPCでカスタムイメージを準備し、「Sysprep(システム準備ツール)」を使用してイメージを一般化して、ベアメタルPCにイメージ展開する方法も引き続き利用可能です。以前は大量のPCを準備するために用いられた方法ですが、現在は仮想デスクトップインフラストラクチャ(VDI)用のカスタムイメージを作成する際に必須のテクニックになりました。
物理PCの場合、一度Windows 10を展開(プリインストールPCを含め)したら、後は機能更新プログラムでアップグレードを繰り返すことができます。一方、VDIの仮想デスクトップイメージは、毎月の品質更新プログラムや半期に一度の機能更新プログラムで更新するよりも、新しいイメージと入れ替えた方が早いのです。
しかしながら、Windows 10を新規インストールしたPCに対して、「Windows 8.1」以前と同じように何も考えずにSysprepを実行すると、Sysprepでエラーが発生し、一般化できない場合があります。
例えば、Sysprep実行前に、ビルトインされているストアアプリの更新バージョンがインストールされるとエラーが発生することがあります。Sysprepのエラーを回避して成功させる方法と、Windows 10に対応した無人応答ファイルの作成方法については、本連載でも紹介しました(第34回、第35回、第47回)。第34回と第35回は、Windows 10 バージョン1803に基づいたものです。そこで、今回は最新の「Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004、ビルド19041)」に基づいて手順を再確認します。
- Windows 10のOSイメージ展開の新常識(その1)――推奨パーティション構成(本連載 第34回)
- Windows 10のOSイメージ展開の新常識(その2)――Sysprepを成功させるポイント(本連載 第35回)
- Windows 10のOSイメージ展開の新常識(その3)――応答ファイルの作り方(本連載 第47回)
Windows 10 バージョン2004のクリーンインストールからSysprepまでの手順
今回は、Windows 10 Enterprise バージョン2004をクリーンインストール(新規インストール)後に品質更新プログラムを適用して最新状態にし、イメージの一部として組み込むアプリケーションをインストールして、Sysprepを実行してイメージを一般化するまでの手順を説明します。
基本的な手順は第35回の「Windows 10のOSイメージ展開の新常識(その2)」と変わりませんが、少し手順の入れ替えや補足を加えました。Windows 10 Educationも同様の手順になります。Windows 10 ProやPro Educationについては、同様の手順で成功するかどうか、確認していません(関係する一部のポリシーがこれらのエディションを対象としていません)。
●手順(1)
Windows 10 バージョン2004をクリーンインストールします。このとき、ネットワーク接続は切断した状態でインストールを進め、ローカルアカウント(オフラインアカウント)を作成してセットアップを完了します。ローカルアカウントはセットアップ完了後にすぐに削除するため、適当な名前とパスワードで構いません(画面1)。
「Windows 10のOSイメージ展開の新常識(その1、その2)」では、パーティション構成を「Windowsセットアップ」には任せずに、手動で推奨パーティション構成にすることをお勧めしました。その理由はWindowsセットアップが古いパーティション構成で準備し、「Windows回復環境」(WinRE)がC:ドライブに不適切にセットアップされてしまったり、次の機能更新プログラムで余計なパーティションが増えてしまったりといった問題があったからです。
Windows 10 バージョン1909以前のこの潜在的な問題は、Windows 10 バージョン2004でようやく解消されました。Windows 10 バージョン1909のパーティション構成をWindowsセットアップに完全に任せても、推奨パーティション構成で準備されるようになりました(画面2)。
画面2 Windows 10 バージョン2004をUEFI(画面上)とBIOS(画面下)ベースのPCにクリーンインストールした際に自動作成されたパーティション構成。どちらも最後尾に回復パーティションを持つ推奨パーティション構成になった
●手順(2)
Windows 10のクリーンインストールが完了したら、セットアップ時に作成したローカルアカウントでサインインします。
ビルトインの「Administrator」アカウントは「無効」であるべきですが、作業のために一時的に有効化します。このアカウントはSysprepで一般化した際、再び無効化されます。
「コンピューターの管理」スナップイン(Compmgmt.msc)を開始し、「システムツール\ローカルユーザーとグループ\ユーザー」を開いて「Administrator」アカウントのプロパティを開き、「アカウントを無効にする」のチェックを外します(画面3)。また、「Administrator」アカウントを右クリックして「パスワードの設定」を選択し、「Administrator」アカウントにパスワードを設定します。
●手順(3)
現在、サインイン中のローカルアカウントをサインオフし、ビルトインの「Administrator」でサインインし直します。「システムのプロパティ」コントロールパネル(Sysdm.cpl)の「詳細設定」タブの「ユーザープロファイル」にある「設定」をクリックし、セットアップ時に作成したローカルアカウントのプロファイルを削除します。また、「コンピューターの管理」スナップインを使用して、そのローカルアカウントのユーザーを削除します(画面4)。
●手順(4)
ネットワークに接続する前に、行うべき作業があります。この手順が、Sysprepを成功させるポイントになります。
まず、「タスクスケジューラ」(Taskschd.msc)を使用して、「\Microsoft\Windows\AppxDeploymentClient」にある「Pre-staged app cleanup」タスクを無効化します。または、コマンドプロンプトを管理者として開いて、次のコマンドラインを実行します。
Schtasks.exe /change /disable /tn "\Microsoft\Windows\AppxDeploymentClient\Pre-staged app cleanup"
「ローカルグループポリシーエディター」(Gpedit.msc)を開き、次の3つのポリシーを有効化します。
- コンピューターの管理\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\クラウド コンテンツ\Microsoft コンシューマー エクスペリエンスを無効にする:有効
- コンピューターの管理\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\ストア\更新プログラムの自動ダウンロードおよび自動インストールをオフにする:有効
- コンピューターの管理\管理用テンプレート\Windows コンポーネント\ストア\最新バージョンの Windows への更新プログラム提供をオフにする:有効
コマンドプロンプトまたはWindows PowerShellを開いて「gpupdate」と入力して実行し、ポリシーの変更を反映させます(画面5)。
●手順(5)
この時点でネットワークに接続することができます。有線またはWi-Fiでネットワークに接続し、インターネットと通信可能な状態にします。
●手順(6)
「設定」アプリの「更新とセキュリティ」から「Windows Update」を開き、「更新プログラムのチェック」をクリックして、最新の品質更新プログラムとその他の更新プログラムがあればインストールします(画面6)。インストールを完了するためには、Windows 10の再起動が必要です。
●手順(7)
展開用のイメージにデスクトップアプリケーションやツール(ストアアプリ以外のデスクトップアプリで、Sysprepに対応しているもの)を含めたい場合は、この時点でインストールしておきます。例えば、Chromiumベースの新しい「Microsoft Edge」などです。新しいMicrosoft Edgeは以下のダウンロードサイトからダウンロードしてインストールできます(画面7)。
新しいMicrosoft Edgeをインストールすると、Windows 10標準のレガシーなMicrosoft Edge(EdgeHTMLベース)が置き換えられます。ドメインに参加していない状態でWindows Updateを実行すれば、Windows Updateを通じて新しいMicrosoft Edgeが配布されます。配布対象は段階的に拡大されている状況なので、Windows Updateで検出されない場合は手動でインストールしましょう。
なお、2020年秋リリースの次のバージョン「20H2」(バージョン「2009」ではなく、バージョン「20H2」でリリースされる予定です)では、新しいMicrosoft Edgeが標準となり、まだインストールされていない場合は機能更新プログラムのインストール時にインストールされます。
「Microsoft 365 Apps」(旧称、Office 365 ProPlus)をOSイメージの一部としてイメージに含める手順については、以下のドキュメントで説明されています。
- Deploy Microsoft 365 Apps as part of an operating system image(Microsoft Docs)
●手順(8)
「ローカルグループポリシーエディター」を開き、「手順(4)」で有効化した3つのポリシー設定を「未構成」にします。この時点で意図せずOSやアプリが更新されないように、ネットワークを切断しておくことをお勧めします。
●手順(9)
コマンドプロンプトまたはWindows PowerShellを管理者として開き、次のコマンドラインでSysprepを実行します。仮想マシンで作成したイメージを仮想マシン環境に展開する場合は、さらに「/mode:vm」を追加することで、初回起動時のデバイスの検出をスキップさせ、セットアップの高速化を図ることができます。
C:\Windows\System32\Sysprep\sysprep.exe /oobe /generalize /shutdown /mode:vm
Sysprep実行時にエラーが発生せず、シャットダウンしてPCの電源が切れたら成功です(画面8)。
カスタムイメージのテスト
一般化したカスタムイメージが完成したら、イメージ展開や仮想デスクトップの作成に使用する前に、仮想マシン環境などを利用してテストしておきましょう(画面9)。カスタムイメージを仮想マシンで作成した場合は、チェックポイントを作成して起動することで簡単に確認できます。確認できたら、チェックポイントにロールバックするだけでよいからです。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2020-2021)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
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