たとえハンディがあったとしても、私の仕事が私を作る:Go AbekawaのGo Global!〜Mileidy Giraldo編(後)(1/3 ページ)
三重苦を背負ってキャリアを歩んできたというジラルド博士。見た目や母国語が違い、偏見に満ちた目で見られがちだった彼女が「その認識は間違っている」と証明するために行ってきたこととは――。
国境を越えて活躍するエンジニアにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。米国を拠点とするLenovoのHPC/AIグループで、COVID-19を始めとする感染症の遺伝子解析研究者をサポートするMileidy Giraldo(ミレイディ・ジラルド)博士のインタビュー、後編は「三重苦」と戦ってきた博士が考える「女性のキャリア」、そしてエンジニアへのエールをお届けする。
イノベーションを生む“橋”になりたい
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 私はIT業界に携わって早いもので30年になろうとしています。現在では皆が、IoTだ、AIだと話題にしますが、最も大切なことは、第1にデータ、第2にアルゴリズム、そして第3が処理能力の高いコンピュータパワーです。
コンピュータのスピードに対する要求は等比級数的に上がっています。そして2045年にシンギュラリティーがくるといわれています。しかしあるAIエンジニアは、その動向はそれほど簡単には訪れないだろうと予測しています。というのも、風にそよぐ1本の髪の毛の動きをコンピュータにシミュレーションさせると、膨大な容量と時間が必要です。コンピュータには数字やデータが必要ですが、人間はあっという間に、風にそよぐ髪を理解し、詩まで書くことができます。一方で大きな夢がありながらも、もう一方でテクノロジーの限界もまだある。あなたは常にその真ん中で仕事をなさっているように思います。
Mileidy Giraldo(ミレイディ・ジラルド、以降ジラルド博士) おっしゃる通りです。最適医療という考えができるのもそのためです。最適医療を考えるにはAIが必須です。最初のころのAIは、ある人の行動や思考を単にまねする仕組みでしたが、現在はそこから進化しています。それでも私たちが求める機能を持ったAIには至っていません。
しかし、医療とテクノロジーの分野を横断できれば、さまざまなことが可能になります。そこにこそイノベーションがあると思います。「AIを使いこなす」とは、プログラマーがプログラムすることではありません。もちろんそれは必要ですが、それを知った上で、「ではそのAIは何のために役立つのか」を理解することが、よりAIを使いこなすことにつながります。データを理解する、ということは、そのデータがどのような状態の患者のことを表しているデータかが分かっている必要があります。私の役割は、医療とテクノロジーを結ぶ橋だと思っています。私はハードウェアやソフトウェアに関することも、数学や数字のことも分かり、薬学のことも理解しています。
これはキャリアパスについても言えることだと思います。人々はよく、将来はどのようなキャリアが必要になるだろう、未来はどうなるだろう、という疑問を持ちます。では、現在ある分野とそれ以外の分野の、ちょうど真ん中に何が起こっているのか考えてみてください。その2つの真ん中で、2つの分野をつなぐことができないかどうか。
エンジニアと医師は違った視点から考えます。あるハードウェアに対して、エンジニアは容量やスピード、周波数などを見ます、しかし医師は、このハードウェアがあることで患者にどのような影響が出るか考えます。ときとしてこの2人はお互いに話すべき言葉を持ち合わせていません。ですから私や私のチームは、HPCを理解できる人と、医師や医療研究員を結び付ける役割を担っています。
2人の真ん中にいて、どちらの視点も持てれば、より新しいものを生み出せるのです。ある人はこれを「夢の実現」と呼び、ある人は「前提の進化」と呼びます。そしてイノベーションは、ここから起こると思います。
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