「制約条件の理論」を活用して、ワンオペ家事の課題と向き合う:唯一のレパートリーは「コーラ豚」(2/3 ページ)
ある日突然、4人家族の家事育児をワンオペで担うことになったエンジニアリングマネジャー。山積する困り事のどこからどうやって手を付けていいのか分からず不安に苛(さいな)まれたが、「仕事で取り組んできたエンジニアリングスキルを活用すればいいのではないか」と気付いてから、着々とカイゼンを進めていく。
思考プロセスとしての制約条件の理論
制約条件の理論は、生まれが『ザ・ゴール』でも記述されていた通り、「物理的な制約」を扱っていましたが、その後対象を「思考プロセス」まで広げます。
それはゴールドラット自身が「制約条件は生産工程の外へと移動する。制約条件がもはや物理的な条件ではなく、不適切なポリシーだとしたらどうなるのか。その場合、どうやって制約条件を認識することができるのか。どう向上させればいいのか。必要な変化をどう起こせばいいのか。私たちには答えは用意できていなかった(中略)それまでの考えが、制約条件が物理的なものである場合だけを対象としていたことは明白だった。私に課せられたのは、もっと包括的なニーズに応えられる思考プロセスを開発することだった」語っており(※4)、その課題への解として、『ザ・ゴール2』(エリヤフ・ゴールドラット、ダイヤモンド社)が生まれています。
これらの「物理的な制約からポリシー、つまり思考やルールといった制約に制約が移行していく」という事象は、DevOpsやアジャイルソフトウェア開発に携わっている人にはなじみがあるものだと思います。開発全体のバリューチェーンの改善に取り組んだ際に、開発プロセスを改善していくと、企画や意思決定の速度、質、社内ルールなどがボトルネックとなっていく、といった経験がある方も多いでしょう。
ボトルネック事例:事業が対峙する現実からエンジニアリングを俯瞰する
ちなみに、制約条件のほとんどはこれらの方針上の制約条件、つまり方針制約だとゴールドラットは強調しています。そのため、『ゴールドラット博士のコストに縛られるな!』では、前述のステップ5を拡大定義しています。
ステップ5:制約条件が解消されたら、最初のステップに戻る。しかし、惰性が次の制約条件にならないように注意する
話を戻します。思考プロセスでは下記の手順で、課題を分析し、明るい未来をどう想像するかを考えます。
- 思考プロセスでは、問題だと考えられるものを「好ましくない現象(UDE:Undesirable Effects、ウーディーと読む)」と呼ぶ。それらをリストアップする
- リストアップしたUDEの因果関係を基にして、「現状ツリー(Current Reality Tree)」を構築する。そうすると、全てのUDEの原因がわずか1つか2つの「根本(コア)」となる問題にあると明らかになる。問題の全体像が分かり、「何を変えるのかがはっきりする」
- UDEを逆手に取り、「望ましい現象(DE:Desirable Effects)」を考え図式化した「未来実現ツリー」を作り、明るい未来をどう創造するか、「何に変えるか」を考える
次ページではここまでの知識を利用して、私が家庭で直面した課題を分析し、解決案の提示を試みます。
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極論すれば、あらゆる事象はすべて前回紹介したような構造図に整理できます。しかし、あまりに細かい情報を厳密に整理しようとすることは、本来の目的を考えるとむしろ逆効果になります。