Windows 10の次期機能更新プログラムとサポートが終了する「2025年10月」までの道:企業ユーザーに贈るWindows 10への乗り換え案内(131)
MicrosoftはWindows 11の次期バージョン「22H2」についてさまざまな情報を公開していますが、同時期にリリース予定のWindows 10の次期バージョンについては沈黙を続けていました。ようやく、2022年7月末にWindows 10のRelease Previewチャネル向けに次期バージョンの提供が開始されました。Windows 10 バージョン「22H2」のビルド番号は「19045」です。そこから見える、Windows 10の今後とは……。
Windows 10 バージョン22H2も有効化パッケージ形式
Microsoftは2022年5月初め、Windows Insiderの「Betaチャネル」に対して「Windows 11 バージョン22H2」をリリースしました。このビルド「22621」が完成ビルドになり、2022年秋に一般提供されることになります(画面1)。外観は現在のWindows 11(ビルド22000)と大差がないように見えますが、ビルド番号の大きな違いから分かるように、その機能更新プログラムはアップグレードインストールを伴う大型アップデートとなります。
一方、「Windows 10」の次期バージョン「22H2」については、2022年7月末に「(Windows 10の)Release Previewチャネル」に対して「Windows 10 バージョン22H2」をリリースし、最終的なテスト段階に入りました(画面2)。次期バージョンのビルド番号は「19045」です。ビルド番号から想像できる方も多いと思いますが、その機能更新プログラムは現行バージョンに対する「有効化パッケージ(Enablement Package)」(最近ではEnablement Package KB《EKB》という表現も使用されています)を用いた小規模なアップデートとなります。
Windows 10 November 2019 Update(バージョン1909、ビルド18363)以前からWindows 10 May 2020 Update(バージョン20H2、ビルド19041)のアップデートは、通常の機能更新プログラムによる大型アップデートでした。しかし、Windows 10の半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)でその後にリリースされた全てのバージョンは、有効化パッケージ形式の小規模なアップデートでした。有効化パッケージではない、通常の機能更新プログラムも提供されますし、インストールメディアを使用したアップグレード手段も提供されてきました。
以下の全てのバージョンは「VB_RELEASE」とも呼ばれ、OSコンポーネントは共通です(画面3)。従って、毎月の品質更新プログラムは共通であり、同じ更新プログラムパッケージが使用されます。
- Windows 10 May 2020 Update(バージョン2004、ビルド19041)
- Windows 10 October 2020 Update(バージョン20H2、ビルド19042)
- Windows 10 May 2021 Update(バージョン21H1、ビルド19043)
- Windows 10 November 2021 Update(バージョン21H2、ビルド19044)
画面3 Windows 10 バージョン21H2の「Get-ComputerInfo」コマンドレットの実行結果。「WindowsBuildLabEx」を見ると、ビルド「19041」の「VB_RELEASE」がベースになっていることが分かる
毎月の品質更新と同じエクスペリエンスでスムーズな移行が可能
有効化パッケージは、新バージョンがリリースされるまでに品質更新プログラム(累積更新プログラム)で組み込まれた新バージョンの新機能を有効化し、バージョン情報を切り替え、ビルド番号を1つインクリメントするだけの非常にサイズの小さなパッチです(22H2の有効化パッケージの場合、ダウンロード後に一時フォルダに展開されたサイズは30MB程度)。
そのため、毎月の品質更新プログラムをインストールするのと同様のエクスペリエンスで(もっといえば、より短時間に)インストールし、新バージョンに移行することができます。OSコンポーネントが共通なので、ハードウェアやアプリケーションの互換性が問題になることもありませんし、アップグレードインストールではないため、10日間(既定)有効なロールバック用にディスク領域が消費されることもありません(パッチのアンインストールで簡単にロールバックできます)。
ビルド「19045」と決まったWindows 10 バージョン「22H2」は、VB_RELEASEに対する4回目の有効化パッケージ形式による小規模なアップデートということになります(画面4)。
2025年10月のWindows 10ライフサイクル終了までの道
Windows 10はWindows 11のリリース以降、SACではなく、Windows 11と同じ「一般提供チャネル(General Availability Channel)」で1年に1回、秋のリリースに変更されました。Windows 11の各バージョンのサポート期間は24カ月(HomeおよびPro)または36カ月(EnterpriseおよびEducation)と長くなりましたが、現状、Windows 10の各バージョンのサポート期間に変更はなく、18カ月(HomeおよびPro)または30カ月(EnterpriseおよびEducation)のままです。そして、MicrosoftはWindows 10(LTSC《長期サービス チャネル》を除く)のサポートを「2025年10月14日」で終了することを発表しています。
2025年10月14日のサポート終了まで、2023年以降もWindows 10の機能更新プログラムが提供されることになるはずですが、いつまで提供されるのか明確にはなっていません。また、1年ごとの提供が今後も続くのかどうかもはっきりしません。
現行バージョンのサポート期限や、バージョン「22H2」以降のサポート期間を考慮し、1年に1回のリリースサイクルと仮定すると、次のバージョン「23H2」が最後になり、HomeおよびPro向けのサポート期限が半年ほど延長されるのではないかと予想しています(図1)。また、サポート終了が決まっているWindows 10に対して、大規模な変更が行われることは予想しにくいため、次も有効化パッケージによる小規模なアップデートになると予想しています(つまり、バージョン「23H2」はビルド「19046」)。
ハードウェアがWindows 11のシステム要件を満たさない、あるいは使用しているアプリケーションの互換性に問題があるなどの理由でWindows 11にアップグレードできないWindows 10クライアントを抱える企業は多いと思いますが、パッチ管理が楽になり(機能更新プログラムによる大規模アップデートがないため)、2025年10月のサポート終了まではこれまでにない安定運用が見込めるかもしれません。今後3年の期間中に、Windows 11クライアントへのリプレースを計画的に進めていけばよいでしょう。
なお、前々回の記事でお伝えしたように、Windows 10では今後、それも近い将来のどこかのタイミングで、「2022年6月15日」にサポートが終了した「Internet Explorer(IE)」のデスクトップアプリケーションの完全な無効化が行われることを改めて指摘しておきます。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- Windows 11一般提供開始、企業での導入/展開時に注意すべきポイントは?
MicrosoftはWindowsデスクトップOSの最新バージョンである「Windows 11」を正式にリリースし、Windows 11対応ハードウェアを搭載したWindows 10デバイスに対して、無料アップグレードの段階的なロールアウトを開始しました。 - Windows 11登場! 11で変わること、思ったほど変わらないこと
新しいWindows OS「Windows 11」の正式出荷が2021年10月5日に開始された。Windows 10からの無償アップグレードが可能であるため、どのような新機能が実装されたのか気になる人も多いのではないだろうか。そこで、本稿ではWindows 11の新機能、削除された機能などを簡単にまとめてみた。 - 買って、試して分かったWindows 365(契約・セットアップ編)
Microsoftからクラウド上でWindows 10が動く「クラウドPC」の利用可能なサブスクリプションサービス「Windows 365」の提供が開始された。早速、サブスクリプションを契約し、クラウドPCの設定を行ってみた。契約からセットアップまでで見えてきた便利な点、不便な点などをまとめてみた。 - いよいよ完全終了へ。Internet Explorer(IE)サポート終了スケジュール
長らくWindows OSに標準装備されてきたInternet Explorer(IE)。その「寿命」は各種サポートの終了時期に左右される。Windows OSごとにIEのサポート終了時期を分かりやすく図示しつつ、見えてきた「終わり」について解説する。