やる気がなくても仕事をするにはどうすればいいんでしょう:Go AbekawaのGo Global!〜Umme Habiba Mim(後)(2/2 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。前回に引き続きBFTのUmme Habiba Mim(ウッメ ハビバ ミム)さんにご登場いただく。憧れの日本で働き始めたもののコロナ禍に突入し、仕事を失ったウッメさん。そこで巡り会った天職とは。
やる気がなくても仕事できるのすごくない?
阿部川 日本で何年か働いてみて、独特だな、違うな、面白いなと思うことはありますか。
ウッメさん 違いというと、バングラディシュでは大学で専攻した分野に関する仕事に就くのが普通です。日本では(他の分野を勉強してきた学生が)会社に入ってから勉強しながら仕事をする。今まで勉強してきたものではない、全く新しいものでも勉強しながらやっていくメンタリティがあるのは、すごいと思います。バングラディシュでは採用されるのは基本的に経験者です。未経験者は仕事に就くのも結構厳しい。でも日本では会社が教えてくれるのがすごいと思います。
阿部川 それは“お褒めの言葉”ですね。日本は大学を卒業して会社に入ってから会社が鍛えないといけないんです。これは日本だけですよね、いいのか悪いのかは議論の余地がありますけれど。そういう日本のエンジニアと一緒に仕事をして何か感じることはありますか。
ウッメさん 私はやる気(モチベーション)がないと仕事が全然手に付かなくなるんですけど、日本のエンジニアたちは違いますよね。モチベーションがないときでも仕事はきっちりこなします。「どうやってやってるんだろう」と思います。すごいですよね。
文字にするとちょっと皮肉っぽく見えますが、本当に「すごいです」と感心しておられました。これは意外と重要な観点な気がします。組織の目標を達成するために“やりたくもないことをやる”といった人が日本には多いと思います。それを良しとするのではなく、モチベーション高く仕事をするために何を変えればいいか、考えないといけませんね。
阿部川 日本のエンジンはモチベーションなくても仕事ができるということですね(笑)。では、ウッメさんのモチベーションは何ですか。
ウッメさん 日本で仕事していること自体がモチベーションになります。その上で、いろいろな知らない技術を学ぶこととか、データセンターに行って作業することが楽しいです。4年たったので来日したばかりのような気持ちとはまた違いますけど、やっぱり仕事は楽しいですね。
お休みの日は旅行したりカフェにいったりしています。日本にはおしゃれなカフェがいっぱいあるので、(インターネットなどで調べては)「ここに行きたい」「ここにも行きたい」と保存しています。それから、アニメを見たり、登山やハイキングにもたまに出掛けたりします。
阿部川 最近見たアニメは何ですか。
ウッメさん 『呪術廻戦』です。難しくて全然読めないですけど、かっこいい漢字ですよね。
バングラディシュでは雨が降るとみんなちょっと楽しくなる
編集鈴木 バングラディシュでは「大学で勉強したことが直接仕事につながる」というお話でしたが、バングラディッシュの若者は大学に進学する時点で「自分はこういう職業に就きたい」ということを決めているのでしょうか。日本だと、何を勉強したいではなくて「取りあえず行っとこうか」みたいな感じで行く人も多いのですけれども。
ウッメさん そうですね。大学に行く人はやりたい仕事をするために進学する人がほとんどだ思います。大学に行かない人は大学の勉強がいらない仕事に就いたり、大学では学べないことなので専門学校に行ったりしています。一度仕事に就いた後に「もっと上のランクの仕事をしたい」と勉強し直す人もいます。私の周りにもいました。
編集鈴木 そうなんですね。大学でコンピュータなどを学んでウッメさんみたいにエンジニアを目指す女性は多いんですか。
ウッメさん 女性だとどちらかといえば医者の方が多いです。私の友達もお医者さんが多いですね。私が通っていた女子高では、1番に目指すのはお医者さん、次にエンジニアといった感じでしたね。それ以外だと海外で博士課程(PhD)を学んでいる人もいます。
編集鈴木 では、最後にバングラディシュのオススメ料理を教えていただけますか。
ウッメさん いいですよ(笑)。ビリヤニがオススメです。他の料理はポラオ(ご飯)と、お肉やカレーが分かれていますが、ビリヤニはお肉や野菜が一緒に入っています。あと、khichuri(キチュリー)。豆とご飯を混ぜて作る、黄色いご飯です。カレーや卵と一緒に食べます。バングラディシュでは、雨の日にキチュリーを食べるんですよ。
編集鈴木 日本だと台風のときにコロッケを食べたがる人もいます(笑)。バングラディッシュでは雨が特別なんですね。
ウッメさん はい。バングラディシュは暑いから、雨が降るとみんなちょっと楽しくなるんです。バクラ(野菜のフライ)やお茶を飲むのも雨の日の楽しみです。
インタビューを終えて 〜Go’s thinking aloud〜
中東の女性の目指すステータスのある職業は、医者とエンジニアだと言う。映画には必ずといってよいほど、成功した、地位ある人として、美しい女性医師が登場する。しかしこの二つの職業を選ぶことができる人は裕福な家庭の子息に限る。ウッメさんもおそらく良家のお嬢さまだと思う。
小さいころから一方的な講義よりも、実験や実習が好きだった。頭で理解するだけではなく、手足を使って応用する。実は学ぶことの本質的な部分だと思う。アニメ、空手、居合道と、その興味は尽きない。
ビジャブがとてもよく似合う。お国では、雨の日は外に出られないから、皆、家でキチュリーを食べるらしい。だから雨の日は故郷の味が恋しいと、ほんのその一瞬だけ、寂しげな顔を見せてくれたが、すぐに照れたように、大きな瞳で笑ってみせた。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)
アイティメディア 事業開発局 グローバルビジネス戦略室、情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、インタビュアー、作家、翻訳家
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時から通訳、翻訳も行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在情報経営イノベーション専門職大学教授も兼務。神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行う他、作家、翻訳家としても活躍中。
編集部から
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